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一年生の二学期
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声を出さずに笑う奈緒の隣で、不貞腐れた南が膨れる。
「余計ひどいよ、チェンジ、思考チェンジ。おまけつきなんて儲けものでしょ。委員長なんだから選り好みしない」
「人間だもの、大目に見て」
男子二人が、声を堪えて笑う。務は苦笑い。
ため息をついて頬に手のひらをあてがう杏奈に、奈緒が申し訳なさそうに言った。
「ごねんね、わたしの せ い で」
「ううん、成瀬さんが悪いんじゃないのよ。どうせ小沢さんが勝手についてきちゃったんでしょ」
「うん。え き に い た」一言一言つっかえながらも粒立てて、この子が答える。
「ひどっ。約束したじゃん」
虚を突かれた南が上半身を奈緒から放すと、この子は、不随の右半身を庇いながら、すがるようにあわあわさせる。
「うん、した。約束した」
「どうせ、なし崩し的に約束させたんでしょ」
杏奈が差し込んだ言葉に、南は声を詰まらせた。
勝ち誇る安奈が、春樹を値踏みする。
「高木君は、今日たまたま来ただけなのに、この格好よ。金曜日に知って今この格好ってないわよね。小沢さんの格好って、出不精っていうか、ジュース買いにそばの自動販売機まで出てきた引きこもりみたいじゃない」
「ひどい形容しないでよ」
南が、笑うみんなの中で一人叫んでから、笑いが納まるのを待って再び口を開く。
「わたしは、ラフなのが好きなの。確かに襟がよれ始めてるし、色も褪せてきてるけどいいじゃん。わたしはこのバンド命だから、それだけこのTシャツを大事にしてるってこと。ライブには行けなかったけど、会場で買ったんだから、これ」
「あ、そうなんだ」杏奈が改まる。
「悪くないでしょ。ダメージ素材」
「そういうの、デニムでしねぇ?」春樹がちゃちゃを入れた。
「裏切り者。スパイは帰れ」
南がこぶしを振り上げると、「ごめん、ごめん」と謝って彼が逃げる。
「それにしても――」と南が杏奈を見た。「廣飯って結構ファッションに厳しいね」
「うーん、お母さんがうるさいの。務君は合格だけど、高木君は分からない。ちょっと軽そうに見えるかも」
🌰小沢南🦋
作画:緒方宗谷&AIイラスト
欄外
作者いわく、これ以上変換すると別人になる、とのこと。
「余計ひどいよ、チェンジ、思考チェンジ。おまけつきなんて儲けものでしょ。委員長なんだから選り好みしない」
「人間だもの、大目に見て」
男子二人が、声を堪えて笑う。務は苦笑い。
ため息をついて頬に手のひらをあてがう杏奈に、奈緒が申し訳なさそうに言った。
「ごねんね、わたしの せ い で」
「ううん、成瀬さんが悪いんじゃないのよ。どうせ小沢さんが勝手についてきちゃったんでしょ」
「うん。え き に い た」一言一言つっかえながらも粒立てて、この子が答える。
「ひどっ。約束したじゃん」
虚を突かれた南が上半身を奈緒から放すと、この子は、不随の右半身を庇いながら、すがるようにあわあわさせる。
「うん、した。約束した」
「どうせ、なし崩し的に約束させたんでしょ」
杏奈が差し込んだ言葉に、南は声を詰まらせた。
勝ち誇る安奈が、春樹を値踏みする。
「高木君は、今日たまたま来ただけなのに、この格好よ。金曜日に知って今この格好ってないわよね。小沢さんの格好って、出不精っていうか、ジュース買いにそばの自動販売機まで出てきた引きこもりみたいじゃない」
「ひどい形容しないでよ」
南が、笑うみんなの中で一人叫んでから、笑いが納まるのを待って再び口を開く。
「わたしは、ラフなのが好きなの。確かに襟がよれ始めてるし、色も褪せてきてるけどいいじゃん。わたしはこのバンド命だから、それだけこのTシャツを大事にしてるってこと。ライブには行けなかったけど、会場で買ったんだから、これ」
「あ、そうなんだ」杏奈が改まる。
「悪くないでしょ。ダメージ素材」
「そういうの、デニムでしねぇ?」春樹がちゃちゃを入れた。
「裏切り者。スパイは帰れ」
南がこぶしを振り上げると、「ごめん、ごめん」と謝って彼が逃げる。
「それにしても――」と南が杏奈を見た。「廣飯って結構ファッションに厳しいね」
「うーん、お母さんがうるさいの。務君は合格だけど、高木君は分からない。ちょっと軽そうに見えるかも」
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