66 / 378
一年生の二学期
第二十二話 日曜日
しおりを挟む
奈緒が大岡山について改札を出ると、そこは別世界だった。
「成瀬」と呼ぶ声が聞こえて顔を上げると、案内板がついた柱のそばに立っていた南が歩み寄ってくる。
挨拶を交わしたあと、この子が言った。
「すごいね、近未来な感じがする」
「うん。目の前大学だし、なんかあのファッションビルみたいな建物、あれ、スーパーみたい」
「へー」と、感心しながら歩み出た奈緒が、「あっ」と声を上げた。「交番あるじゃん。あそこに 訊いて、杏奈ちゃんち行こう」
「必要ないよ」
「なんで。わたし知らない」
眉をひそめた奈緒に、南が顔をしかめて言った。
「わたし、調べるって言ったじゃん。名簿の住所から地図検索した」
「すごい。さすが小沢さん」
南は、ポケットからスマホを出して、杏奈の家までのルートが示された地図画面を見せる。
「大学、すごく大きいよ。図書館あるし、今度行ってみたら?」
奈緒が瞳を輝かせて、画面をのぞき込む。
南がスマホを軽く揺らした。それにつられて奈緒が右に顔を向けると、そこには商店街の入り口があって、ほのぼのした人情味あふれる洞窟のようになっていた。屋根ないけど、そう見える。
それに気がついた途端、菜緒がハイになった。
「行こう。絶対美味しいのが あるよ」
「言うと思った。でも行かない。約束の時間に間に合わないでしょ」
そう言って、左のほうを顎で指し示す。
奈緒は後ろ髪引かれる思いをあからさまにして商店街を見やりながら、南についていく。
「そうだ。杏奈ちゃんが、土屋君が、うち が…近いって言ってた」
「うん。調べたら、あっちのほう」後ろの商店街を指し示す。
「迎えに行こう」
「いいよ」と否定して、南は横断歩道で立ち止まった。
「成瀬」と呼ぶ声が聞こえて顔を上げると、案内板がついた柱のそばに立っていた南が歩み寄ってくる。
挨拶を交わしたあと、この子が言った。
「すごいね、近未来な感じがする」
「うん。目の前大学だし、なんかあのファッションビルみたいな建物、あれ、スーパーみたい」
「へー」と、感心しながら歩み出た奈緒が、「あっ」と声を上げた。「交番あるじゃん。あそこに 訊いて、杏奈ちゃんち行こう」
「必要ないよ」
「なんで。わたし知らない」
眉をひそめた奈緒に、南が顔をしかめて言った。
「わたし、調べるって言ったじゃん。名簿の住所から地図検索した」
「すごい。さすが小沢さん」
南は、ポケットからスマホを出して、杏奈の家までのルートが示された地図画面を見せる。
「大学、すごく大きいよ。図書館あるし、今度行ってみたら?」
奈緒が瞳を輝かせて、画面をのぞき込む。
南がスマホを軽く揺らした。それにつられて奈緒が右に顔を向けると、そこには商店街の入り口があって、ほのぼのした人情味あふれる洞窟のようになっていた。屋根ないけど、そう見える。
それに気がついた途端、菜緒がハイになった。
「行こう。絶対美味しいのが あるよ」
「言うと思った。でも行かない。約束の時間に間に合わないでしょ」
そう言って、左のほうを顎で指し示す。
奈緒は後ろ髪引かれる思いをあからさまにして商店街を見やりながら、南についていく。
「そうだ。杏奈ちゃんが、土屋君が、うち が…近いって言ってた」
「うん。調べたら、あっちのほう」後ろの商店街を指し示す。
「迎えに行こう」
「いいよ」と否定して、南は横断歩道で立ち止まった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
坊主頭の絆:学校を変えた一歩【シリーズ】
S.H.L
青春
高校生のあかりとユイは、学校を襲う謎の病に立ち向かうため、伝説に基づく古い儀式に従い、坊主頭になる決断をします。この一見小さな行動は、学校全体に大きな影響を与え、生徒や教職員の間で新しい絆と理解を生み出します。
物語は、あかりとユイが学校の秘密を解き明かし、新しい伝統を築く過程を追いながら、彼女たちの内面の成長と変革の旅を描きます。彼女たちの行動は、生徒たちにインスピレーションを与え、更には教師にも影響を及ぼし、伝統的な教育コミュニティに新たな風を吹き込みます。
夏の決意
S.H.L
青春
主人公の遥(はるか)は高校3年生の女子バスケットボール部のキャプテン。部員たちとともに全国大会出場を目指して練習に励んでいたが、ある日、突然のアクシデントによりチームは崩壊の危機に瀕する。そんな中、遥は自らの決意を示すため、坊主頭になることを決意する。この決意はチームを再び一つにまとめるきっかけとなり、仲間たちとの絆を深め、成長していく青春ストーリー。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
男子中学生から女子校生になった僕
葵
大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。
普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。
強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる