FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の二学期

🐿️

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 信号が青になって渡ろうとした時に春樹の声がして、二人が後ろを振り返ると、手を上げて挨拶する彼がいて、その隣に務もいる。
 春樹が満足げに笑う。
「ほらな。そのツンツン頭、もしやと思ったけど、やっぱり南だったか。それに奈緒まで。なにしてんの、こんなところで」
「杏奈ちゃんのうちに行く」奈緒が答える。
「俺らもこれから行くところ」
「うん、知ってる。でも、高木君まで来るのは知らない」
 春樹がぼやくように言った。
「なんだよ。二人も来るなら俺も誘ってくれればいいのに、傷つくぞ」
 務が笑う。
「いや、僕も知らなかったよ、来るなんて」
 慌てて奈緒が口を開いた。
「ご め ん な さ い。わたしが 杏奈ちゃんに お願いして 来ま した」
 すると、即座に南が付け加える。
「わたしは勝手に来ました。だから奈緒以外は誰も知らなかったと思う」
「そう。かってに来た」
 奈緒が更に付け加えると、南がムスッとした。
「なによ、廣飯んち知らなかったくせに。わたしがいなかったらたどり着かないでしょ」
「つくよ。おまわりさんあったもん。杏奈ちゃんちどこですかって訊いたら分かるからね」
「分かんないよ。どこの杏奈ちゃんですか? って訊き返されるよ」
「そうか」
 奈緒は、すぐさま納得した。でも分からない様子だ。
 点滅していた信号を急いで渡ると、ルンルン気分の奈緒が笑ってみんなを見る。
「晴れて よかったね。雲なんて 一つも ない よ。今日は おしゃべり日和だ。わーい。土屋君と 高木君が 嬉しいな」
 動物病院があるとか、ななまーとがあるとか、たわいもないことを指摘する奈緒が、急にはしゃぎだして、南のTシャツの袖を引っ張る。
「パン屋さんだ。パン屋さんがある。買おう」
 そう騒いだのち、小さな羽の生えたウサギのようにぴょこぴょこ駆けて行って、順番待ちの列に勝手に並ぶ。






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