92 / 120
第4章 樹聖エルフ王国編
第92話 檻
しおりを挟む
居ないな。
今日の獲物であるアイアンカッターが居ない。
生態などの詳しい事を調べなかったのが裏目に出たか。
常時依頼だから違約金は取られないのだけど、なんとなくしゃくに障る。
これは出直しかなと思い始めていた。
人の悲鳴と駆けて来る足音がする。
それはアイアンカッターの大軍に追いかけられている子供だった。
アイアンカッターは虹色の外殻に身を包んで凶悪な顎をガチガチと鳴らしている。
助けなきゃ。
俺は水魔法で液体窒素を作って飛んでくるアイアンカッターにかけまくった。
これで危険は去ったな。
動かなくなるアイアンカッターに止めを刺し子供から話を聞く事にした。
子供は皮のズボンに上着で防具のたぐいは着けてない。
そして、短めの髪にぶかぶかの鉄兜を被っていた。
「どうしてこんな事になった」
「アイアンカッターで大もうけを狙ったんだ。ちょっと失敗したけどもさ」
「ちょっとじゃない気がするな」
「あいつら甘い物に目が無いから、甘い樹に穴を開けて樹液を出したんだよ。集めるのは上手くいったんだけど」
「どうやって討伐するつもりだったんだ」
「冷却地雷を樹の幹にしかけたんだ。作動したけど数が多くて」
「討伐はやめとけ」
「父ちゃんがゴールドスパークでおかしくなっちゃって。稼がないと弟と妹が」
「今仕留めたアイアンカッターを半分譲ってやるよ」
「うん、それだけ貰えれば三年は暮らせるよ」
「名前は?」
「ニッパ」
「俺はフィルだ。よし樹に集まったアイアンカッターを全て退治するぞ」
ニッパの案内で樹に群がるアイアンカッターを全て退治した。
樹の穴は魔石のくずで固めたからこれで後始末はいいだろう。
こんなモンスターハウスモドキに出くわしたら良い迷惑だからな。
「お礼にとっておきの場所に案内するよ」
ニッパからそんな事を言われた。
無碍にするのもなんなので大人しく後をついて行く。
そこは岩盤が露出したジャングルには珍しい景色だった。
「岩肌は珍しいけど、なんでとっておきなんだ」
「耳を岩盤に押し付けると奇妙な音がするんだ。不思議だろ」
横になって、やってみると何やら音がする。
「あっ」
ニッパの驚く声に立ち上がってみると岩盤が崩れている。
崩れて出来た穴には木材の木組みが見えた。
坑道に似ているな。
穴からはソルジャーアントが出てきた。
誰だ。こんな所に坑道を掘った奴は。
だが、一体ずつしか出てこないなら楽なもんだ。
水魔法で冷やしてゴーレムが止めを刺す。
そして穴の入り口から退かす。
この繰り返しだ。
連続二時間となると流石に大丈夫なのかこれと心配になってきた。
いよいよ終わりが見えた。
ソルジャーアントが途切れ途切れになって仕舞いには出てこなくなった。
千はやっつけたな。
穴に入ると確かに人工物だった。
更に進むと破られたでかい檻があった。
これは坑道ではなくてソルジャーアントを閉じ込めておいたのだな。
きっとアルヴァルあたりが仕掛けを作ったのだろう。
そんな気がする。
「ニッパ。お前ギルドまで一っ走りして知らせてこい」
「うん、分かった」
「お駄賃だ」
俺は金貨を投げた。
ニッパは両手でお手玉してからニカっと笑ってから駆け出した。
この屍骸の数だとソルジャーアントが寄ってくるな。
この数だとアイテム鞄には入りきらない。
俺は冷却地雷をありったけ仕掛けた。
ソルジャーアントが次々に現れる。
俺はこいつらにあの塗料を仕掛ける事を思いついた。
あの塗料とはミリタリーアントの外殻を抽出して作った塗料だ。
冷却地雷に掛かったソルジャーアントに小袋に詰めたそれをゴーレムを使い足にくくり付ける。
そして、袋に鉄串で穴を開けた。
再び動き出しそうになるソルジャーアントはスライムゴーレムで落ち着かせる。
十匹ほど仕掛けを施したところでソルジャーアントの知覚圏外まで逃げた。
後は塗料の後を追っていくだけだ。
ニッパの通報で領軍が出動してきた。
「ソルジャーアントが地下に千ぐらい檻に閉じ込められていたんだよ。まだ他にも同じ様な場所があるかもしれないな」
「それは大変だ。おい付近を捜索するぞ」
領軍の兵士はソルジャーアントの檻を探し始める。
しばらくして兵士が報告に来た。
「ありました。檻にぎっしりソルジャーアントが詰まっています」
やっぱり他にもあったか。
千じゃ都市を一つ落とすには足りないと思ったよ。
「じゃあ、俺はギルドに戻っている。何かあれば伝言してくれ」
「情報提供、ご苦労」
俺はニッパにアイアンカッターの半分を渡さないといけないと約束を思い出した。
ギルドに着くとニッパが駆け寄って来た。
「逃げたかと思ったぜ」
「俺は約束は守る」
俺は買取カウンターでアイアンカッターを出し始めた。
十を越えると称賛の目で周りが俺を見る。
まだまだ、こんなもんじゃないぜ。
二十を越えると口をあんぐりと開け。
三十を越えると呆れた顔になった。
ニッパに約束の半金を渡した。
「おい、顔役は居ないか」
俺は声を張り上げる。
「なんだ、俺は顔役ってほどじゃないが顔が利く」
「この十枚の金貨で皆に奢ってやれ」
「おお、あんた太っ腹だな」
「そうでもない気まぐれさ。ニッパ、このおっちゃんに採取の仕方とか教えてもらえ」
「なんだそういう事か。良いぜ。この坊主にレクチャーしてやるよ」
「ありがとう。フィルの兄ちゃん」
さてと、塗料の袋は上手くいったかな。
明日が楽しみだ。
今日の獲物であるアイアンカッターが居ない。
生態などの詳しい事を調べなかったのが裏目に出たか。
常時依頼だから違約金は取られないのだけど、なんとなくしゃくに障る。
これは出直しかなと思い始めていた。
人の悲鳴と駆けて来る足音がする。
それはアイアンカッターの大軍に追いかけられている子供だった。
アイアンカッターは虹色の外殻に身を包んで凶悪な顎をガチガチと鳴らしている。
助けなきゃ。
俺は水魔法で液体窒素を作って飛んでくるアイアンカッターにかけまくった。
これで危険は去ったな。
動かなくなるアイアンカッターに止めを刺し子供から話を聞く事にした。
子供は皮のズボンに上着で防具のたぐいは着けてない。
そして、短めの髪にぶかぶかの鉄兜を被っていた。
「どうしてこんな事になった」
「アイアンカッターで大もうけを狙ったんだ。ちょっと失敗したけどもさ」
「ちょっとじゃない気がするな」
「あいつら甘い物に目が無いから、甘い樹に穴を開けて樹液を出したんだよ。集めるのは上手くいったんだけど」
「どうやって討伐するつもりだったんだ」
「冷却地雷を樹の幹にしかけたんだ。作動したけど数が多くて」
「討伐はやめとけ」
「父ちゃんがゴールドスパークでおかしくなっちゃって。稼がないと弟と妹が」
「今仕留めたアイアンカッターを半分譲ってやるよ」
「うん、それだけ貰えれば三年は暮らせるよ」
「名前は?」
「ニッパ」
「俺はフィルだ。よし樹に集まったアイアンカッターを全て退治するぞ」
ニッパの案内で樹に群がるアイアンカッターを全て退治した。
樹の穴は魔石のくずで固めたからこれで後始末はいいだろう。
こんなモンスターハウスモドキに出くわしたら良い迷惑だからな。
「お礼にとっておきの場所に案内するよ」
ニッパからそんな事を言われた。
無碍にするのもなんなので大人しく後をついて行く。
そこは岩盤が露出したジャングルには珍しい景色だった。
「岩肌は珍しいけど、なんでとっておきなんだ」
「耳を岩盤に押し付けると奇妙な音がするんだ。不思議だろ」
横になって、やってみると何やら音がする。
「あっ」
ニッパの驚く声に立ち上がってみると岩盤が崩れている。
崩れて出来た穴には木材の木組みが見えた。
坑道に似ているな。
穴からはソルジャーアントが出てきた。
誰だ。こんな所に坑道を掘った奴は。
だが、一体ずつしか出てこないなら楽なもんだ。
水魔法で冷やしてゴーレムが止めを刺す。
そして穴の入り口から退かす。
この繰り返しだ。
連続二時間となると流石に大丈夫なのかこれと心配になってきた。
いよいよ終わりが見えた。
ソルジャーアントが途切れ途切れになって仕舞いには出てこなくなった。
千はやっつけたな。
穴に入ると確かに人工物だった。
更に進むと破られたでかい檻があった。
これは坑道ではなくてソルジャーアントを閉じ込めておいたのだな。
きっとアルヴァルあたりが仕掛けを作ったのだろう。
そんな気がする。
「ニッパ。お前ギルドまで一っ走りして知らせてこい」
「うん、分かった」
「お駄賃だ」
俺は金貨を投げた。
ニッパは両手でお手玉してからニカっと笑ってから駆け出した。
この屍骸の数だとソルジャーアントが寄ってくるな。
この数だとアイテム鞄には入りきらない。
俺は冷却地雷をありったけ仕掛けた。
ソルジャーアントが次々に現れる。
俺はこいつらにあの塗料を仕掛ける事を思いついた。
あの塗料とはミリタリーアントの外殻を抽出して作った塗料だ。
冷却地雷に掛かったソルジャーアントに小袋に詰めたそれをゴーレムを使い足にくくり付ける。
そして、袋に鉄串で穴を開けた。
再び動き出しそうになるソルジャーアントはスライムゴーレムで落ち着かせる。
十匹ほど仕掛けを施したところでソルジャーアントの知覚圏外まで逃げた。
後は塗料の後を追っていくだけだ。
ニッパの通報で領軍が出動してきた。
「ソルジャーアントが地下に千ぐらい檻に閉じ込められていたんだよ。まだ他にも同じ様な場所があるかもしれないな」
「それは大変だ。おい付近を捜索するぞ」
領軍の兵士はソルジャーアントの檻を探し始める。
しばらくして兵士が報告に来た。
「ありました。檻にぎっしりソルジャーアントが詰まっています」
やっぱり他にもあったか。
千じゃ都市を一つ落とすには足りないと思ったよ。
「じゃあ、俺はギルドに戻っている。何かあれば伝言してくれ」
「情報提供、ご苦労」
俺はニッパにアイアンカッターの半分を渡さないといけないと約束を思い出した。
ギルドに着くとニッパが駆け寄って来た。
「逃げたかと思ったぜ」
「俺は約束は守る」
俺は買取カウンターでアイアンカッターを出し始めた。
十を越えると称賛の目で周りが俺を見る。
まだまだ、こんなもんじゃないぜ。
二十を越えると口をあんぐりと開け。
三十を越えると呆れた顔になった。
ニッパに約束の半金を渡した。
「おい、顔役は居ないか」
俺は声を張り上げる。
「なんだ、俺は顔役ってほどじゃないが顔が利く」
「この十枚の金貨で皆に奢ってやれ」
「おお、あんた太っ腹だな」
「そうでもない気まぐれさ。ニッパ、このおっちゃんに採取の仕方とか教えてもらえ」
「なんだそういう事か。良いぜ。この坊主にレクチャーしてやるよ」
「ありがとう。フィルの兄ちゃん」
さてと、塗料の袋は上手くいったかな。
明日が楽しみだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
230
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる