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第3章 貴族活躍編

第52話 ダリウス再戦

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 道の両側を岩の断崖がそびえ立っているダリウスが待ち構えていたのはそんな所だった。
 俺が飛んで来たので慌てて魔法を撃ち込んできたのだろう。
 俺がここを通るのはどこで知ったのだろう。
 ひょっとしてダリウスは貴族派から情報を得ているのか。
 それなら、ロレットに俺を派遣したのも貴族派だろう。

「待ちくたびれたぞ」
「そうか、じゃさっそくやろうか」
「土魔法、土魔法……土魔法。必殺爆土陣だ」

 さてと、どんな攻撃なんだろうな。
 地面の至る所に魔力の塊がある。
 踏んだら爆発するという落ちじゃないだろうな。
 魔木のゴーレムを一体出して魔力がある所に差し向けると、地面から何本もの杭が出てきた。
 なんだ地雷もどきか。
 俺は魔力視で魔法が仕掛けてある所を確認。
 ライタに火魔法を撃ちこむように指示した。

 炎の玉が地面で爆発、土を抉り取り、土ぼこりが舞いあがった。



「なにっ、もの凄く勘がいいな。いや魔力がある所が分かっているのか。貴様も察知結界スキルを持っているのか」

 こいつ馬鹿だな。
 手の内をあっけなくさらしていやがる。
 なるほど前に魔力ゴーレムを感知したのは察知結界スキルか。
 推測するに察知結界スキルは魔力を張り巡らして、他人の魔力が接触したのを知らせるのだろう。
 魔力視みたいなスキルが存在するんだな。
 でもなんかこいつの持っているスキルって全部俺の劣化版だな。



 うわーと言う声が俺の後方から聞こえてくる。
 何だと視線をやるとゴーレム馬車が五頭のフォレストウルフに追われていた。
 ダリウスがにやりと笑う。

「馬車が爆土陣に突っ込んでくるぞ。さてどうする」

 俺は魔力がある所全てを火魔法で破壊するようライタに指示した。
 そして、銃魔法で馬車を追うフォレストウルフを狙撃する。
 馬車は火魔法で地面が抉られたのを見て急停車。
 銃弾はフォレストウルフを全てしとめた。

「なんなんですか。あなた達は魔法使いの決闘ですか。迷惑です。よそでやって下さい」

 御者が文句を言ってくる。
 ごもっともな意見だが、逃げなくてもいいのか。



「うるさい、黙れ。皆殺しにされたいのか」

 ダリウスが切れた。
 悲鳴を上げながら馬車に乗っている人達が逃げる。
 乗り合い馬車だったんだな。

「妻が、身重の妻がいるんです。何かあったらあなた達を許さない」

 乗り合い馬車に乗っていた若い男がダリウスに詰め寄る。

「なんの喜劇だ。風魔法」

 風の刃が男に迫る。
 土魔法の盾で守ってやった。

「ひっ」

 土魔法に風の斬撃が刻まれたのを見て男が腰を抜かす。



「悪者は青い髪の奴らしいな。助太刀する」

 初老のハンターらしき人が剣を片手に馬車から降りてきた。

「それよりも、腰を抜かした人を避難させてくれ」

 俺の言葉に初老のハンターは頷き、男を馬車の中まで引きずっていった。

「ええい、邪魔だ。風魔法、風魔法、風魔法」

 土魔法で守ろうとしたが、風魔法の一つが初老のハンターを直撃。

「ライレンスさん、しっかりして。僕のせいだ。僕があんな行動を取らなければ」
「これを使え」

 俺はエリクサーを一本念動を使い渡してやった。
 若い男はエリクサーを初老の男に飲ませ、なんとか馬車の中に避難。



 ダリウスはそうとう苛立ったのだろう。
 馬車を魔法で破壊しようとした。
 俺は土魔法で馬車を守ってやった。
 そして、巨大クレイゴーレムを作り、馬車を戦いの圏外に押し出した。



「仕切りなおしだ。土魔法、土魔法……土魔法」

 ダリウスの足元から魔力の塊が生まれ、じわじわと俺の方に寄ってくる。
 ダリウスは作戦を切り替えたみたいだ。
 でも魔力視で見えているから、無駄な努力だ。
 俺は火魔法で対抗して、土魔法を吹き飛ばした。



「やっぱりだな、魔力が分かっているな。貴様その力どうやって得た?」
「言えるわけないだろう」
「貴様も禁忌を犯したのか」

 そうかこいつも禁忌を使ったのか。
 通りで見慣れないスキルを使うと思った。
 ちょっと突いてみたくなった。

「その通りだ」
「良い事を聞いた。お前は実験で何人生贄を使った?」
「俺は自分を実験台にしたよ。誰も犠牲にしていない」
「ふん、正義漢ぶりやがって」
「第一そんな事すれば教会が黙っていないだろう」
「金があればそんなのわけないさ」

 教会にも腐敗があるのだな。
 お金で禁忌を見逃すとは。
 超越者にばれてないのだろうか。
 そんなはずは無いな。
 超越者には分かっているはずだ。
 進化の目がありそうだから放置しているんだろう。
 絶対そうに違いない。

「お前も闇ギルドに入ったらどうだ」
「断る」



「ふんっ、吠え面かくなよ」
「風魔法、風魔法……風魔法。名付けて岩落陣だ」

 風魔法が岩肌を抉り、岩が俺目掛けて落ちてくる。
 俺が土魔法で盾を出すと岩は盾に当たって重低音を響かせた。

「どうした、全然効いてないぜ」
「くそっ、こうなれば魔力結晶ゴーレムで直接決着をつける」
「そうくると思ったよ。対策は用意してあるぜ」

 俺はオリハルコンの弾丸を取り出し、銃魔法にセットした。
 銃が吠え魔力結晶ゴーレムの胴体に穴が開いて、キラキラと破片が宙を舞った。
 ゴーレムは倒れぴくりとも動かない。

「馬鹿な。魔力結晶ゴーレムがやられるとは」
「お前には禁忌の事とか喋ってもらおうか」

 ダリウスが突然、指笛を吹くと、猪が一頭駆け込んで来る。
 ダリウスは猪にまたがり、ゴーレムを残し一目散に逃げ出した。
 あれっ、逃げるのか。
 魔力結晶ゴーレムは俺が貰っちゃうよ。
 いやー儲けたな。
 魔力結晶ゴーレム十体をアイテム鞄にいそいそと仕舞い込んだ。



「ほれ、若いの。冒険者の坊主に礼を言いな」
「ありがとうございました」
「こっちも巻き込んで悪かった」
「あなたっ!」

 緊迫した若い女の声が馬車から聞こえた。

「お前、大丈夫か!」

 どうやら奥さんが産気づいたらしい。

「こりゃ大変だ。坊主、ゴーレム使いだろ。最寄の村までなんとかならんか」
「やってみるよ」

 俺は馬ゴーレムを起こして、馬車を村まで走らせた。
 途中なんと木の橋が落ちている。

「少し揺れるよ」

 俺は土魔法で橋をかけその場をしのいだ。
 細い川を渡ると村は目の前だった。



 村に入るやいなや若い男は産婆を探しに飛び出して行き、俺はやる事がないので魔力結晶の研究を始めた。
 魔力結晶の硬さはミスリルより硬くてオリハルコンより柔らかい。
 ゴーレムに使用すると魔法防御が使える。
 ゴーレム使いに魔力を供給できる。
 分かったのはこんな所か。
 ゴーレム以外の使い道が中々思い浮かばない
 マリリの所に貸し出すぐらいしか考え付かなかった。

 しばらく経つと男が俺の所にやって来て言う、元気な女の子が産まれたと。
 命の恩人に名前をつけて欲しいというのでマリアナと名付けた。

 次の日、王都に戻り王城にロレットの件を報告。
 将軍の公爵からお褒めの言葉を頂いた。
 褒美は後日貰えるらしい。
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