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蝦夷地開拓

屯田兵団の現状一

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 天明六年も蝦夷開拓は順調だった。
 予定通りの広さが開拓出来たのは勿論の事だが、雑穀から酒を醸造出来たことが一番大きかった。
 日本酒の方を飲みたい気持ちは間違いないが、自分達の耕作物から酒が醸造出来れば、毎日晩酌する事も夢ではない。
 しかもまだ日本酒の味を覚えていない者は、果物や香草で香りと味を付けた雑穀酒の方が美味しいと言う。
 そんな奴らが増えてくれれば、日本酒党の人間の口に日本酒が入りやすくなる。
 一番うれしい誤算は、アイヌを通してオロシャや清国に雑穀酒が売れた事だ。
 日本酒も売れたのだが、売るくらいなら自分達が飲みたかったし、それに大きな商売につながるほど量が売れなかった。
 アイヌが豊かになったので、アイヌ相手に多くの日本酒を売ることが出来たが、それでは幕府領内で銭が動いているだけだった。
 だが雑穀酒は、作れば作るほど売れた。
 熟成が足らないと言う苦情はあったが「ならば熟成してから売ると」言ったら「申し訳ない、そのままでいいから直ぐに売ってくれ」と言って帰って行った。
 幕府から、銀五十五文以下で売ってはならないと言う御達しがあったが、有難いことにその値段でも大量に買ってくれた。
 その影響もあって、開拓地の等級は予定通り一反八斗に引き上げられた。

「穢多非人蝦夷開拓団」
 初年度に一万人が入植した。
 二年度・三年度・四年度・五年度も一万人が入植した。
 今年度にも一万人が入植している。
 合計六万人の入植が終了。
 幕府六公四民:四十一万石
 幕府四公六民:二十万石

「御先手組同心格・千人同心」
四年前に一町六石分、三年前に二町十二石、二年前に三町十八石分の畑が開拓地に認定されたが、等級が一反八斗に引き上げられたので、六町四十八石換算の取高に変わっていた。
 昨年認定された三町二十四石と今年認定された四町三十二石を加えれば、併せて十三町百四石(二百六十俵)換算の取高となっていた。
 だが御先手組同心格・八王子千人同心は、年貢を納める義務を負っていたので、実際に自分達の手に残る雑穀は、六十二石四斗(百五十六俵)の雑穀だ。
 御公儀に四十一石六斗(百四俵)の年貢を納めなければいけないが、残った百五十六俵の雑穀と十五俵の扶持米を併せれば、百七十一俵となる。
 これだけの収入があれば、家族と家人を十分戦力として活用出来るので、拠点防衛に安心出来る戦力となった。

「徒士格黒鍬衆」
 徒士組格黒鍬衆は、四年前に一町六石分、三年前は二町十二石分、二年は三町十八石分の開拓地が認定されたが、等級が一反八斗に引き上げられたので、六町四十八石換算の取高に変わっていた。
 昨年認定された三町二十四石と今年認定された四町三十二石を加えれば、併せて十三町百四石(二百六十俵)換算の取高となっていた。
 大番格に格上げするという話も出たが、その分軍役負担も厳しくなるので、一年間様子を見ることになった。
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