上 下
24 / 111
第1章

第24話:出立

しおりを挟む
神歴1817年皇歴213年2月26日皇都拝領屋敷:ロジャー皇子視点

 俺は1日でも早く婿養子先の領地を確かめたかった。
 以前皇国がバカン辺境伯家に行った、領民数の少ない領地への強制移封により、辺境伯家の財政は慢性的な赤字になっているからだ。

 ただ、皇都を離れる前に絶対にやっておかなければいけない事があった。
 母と兄弟姉妹の安全を確保しておかないと、とても皇都を離れられない。

 無能で愛情のない皇帝が頼りにならないのも、皇子皇女の実家や支援者が他の皇子皇女を狙っているのも、これまでと変わらないからだ。

 母と兄弟姉妹には、刺客や毒から身を守るためのネックレス、指輪、腕輪などを渡したし、従魔にした鳥や猫を表向きペットとしてつけた。
 実際には鉄壁の守りを誇る守護獣だ。

 拝領屋敷の守りは護衛侍女と陪臣徒士とその家族に任せる。
 俺について領地入りするのは護衛騎士とその家臣、改めて家臣にしたバニングス家出身者の男たちだ。

 孤児院を卒院した孤児たちの管理はスレッガー叔父上の家臣に任せる。
 地下砦の牢屋に閉じ込めてある罪人たちも同じだ。

 拝領屋敷には厳重な守りの呪文をかけてあるし、従魔にした犬や狼を番犬として飼っているから、中に籠っていれば女子供でも敵に殺される事はない。

「用意は良いか、出発!」

 以前から十分に準備はしていたが、皇国から許可が出てから出立までの10日間は、手違いや忘れ物がないか確かめるのに忙しかった。

 わずかでもレベルを上げる為、必要になるかもしれない食料を確保する為、何よりダンジョンの謎を解明する為、わずかでも時間があれば肉ダンジョンに潜った。

 それと領地入りのために用意した8頭立ての馬車4台にも時間を使った。
 元々あった馬車を含めれば、5台を使って俺がどの馬車に乗っているのか分からなくする、影武者ならぬ影馬車の役割をする事になる。

 普通なら皇都詰めの家臣を多数従えて領地入りするのだが、多くの家臣を処刑したので辺境伯家の家臣が激減しているし、俺が信用している家臣など1人もいない。

 だから付き従う家臣は護衛騎士8騎とその家臣が3騎76兵だ。
 その大半が准男爵位を持つ守役、アントニオの家臣だ。
 それと、俺個人の家臣となったバニングス家の4騎だ。

 5台の8頭立て馬車には、前の御者台に御者と護衛が2人ずつ乗る。
 後ろの護衛台に3人ずつの護衛が乗る。

 これで合計30人が必要になるのだが、他の46人を歩かせると進みが遅くなる。
 1日中馬に合わせて走らせていると、いざという時に役に立たない。
 そこで1頭立て12人乗りの馬車を8台用意して、全員乗せた。

 乗員数に余裕があるのは、何かあった場合に馬車を捨てる事も考えてだ。
 最悪の場合は皇子仕様の馬車に兵卒を乗せる覚悟をしているが、できることなら選帝侯たちに突っ込まれる可能性がある事は避けたい。

 選帝侯たちなど、その気になればいつでも殺せるが、人殺しが好きな訳ではない。
 穏やかに暮らせるならそれが1番なのだ。

 パカパカ、ゴロゴロと小気味の良い音を立てて馬車が進む。
 普通なら振動が激し過ぎて身体に負担がかかるのだが、自分に防御魔術をかけておけば、クッションの悪い馬車でも悪路でも何の問題もない。

 俺が金に糸目をつけずに買い集めた大型馬だから、進む速さは並の貴族や豪商が使う馬車とは比較にならないくらい早い。
 
 ただ、馬には定期的に水を飲ませてやらないといけないし、8頭立てと1頭立てでは馬にかかる負担が段違いだ。

 街道の要所に設けられた宿場、駅家、水場ごとに馬を休ませてやり、8頭立ての馬と1頭立ての馬を交代させてやる。

 俺が回復魔術をかけてやれば簡単なのだが、5歳の皇子が回復魔術まで使えると知られたら、とんでもない大騒ぎになってしまう。

 皇位継承権はなくなっているが、それでも俺を擁立しようとする者が現れるだろうし、フレディと取り巻きたちはなりふり構わず俺を殺そうとする。
 母親は違うとはいえ、兄弟で殺し合うのは嫌だからな。

「殿下、今日の宿泊先は予定通りですが、本当にダンジョンに潜られるのですか?」

「ああ、ようやく王都を離れられたのだ、全力で楽しまないと損だからな」
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

パワハラで人間に絶望したサラリーマン人間を辞め異世界で猫の子に転生【賢者猫無双】(※タイトル変更-旧題「天邪鬼な賢者猫、異世界を掻き回す」)

田中寿郎
ファンタジー
俺は自由に生きるにゃ!もう誰かの顔色を伺いながら生きるのはやめにゃ! 何者にも縛られず自由に生きたい! パワハラで人間に絶望したサラリーマンが異世界で無敵の猫に転生し、人と関わらないスローライフを目指すが…。 自由を愛し、命令されると逆に反発したくなる天邪鬼な性格の賢者猫が世界を掻き回す。 不定期更新 ※ちょっと特殊なハイブリット型の戯曲風(台本風)の書き方をしています。 視点の切り替えに記号を用いています ■名前で始まる段落:名前の人物の視点。視点の主のセリフには名前が入りません ◆場所または名前:第三者視点表記 ●場所:場所(シーン)の切り替え(視点はそこまでの継続) カクヨムで先行公開 https://kakuyomu.jp/works/16818023212593380057

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

婚約破棄されたので森の奥でカフェを開いてスローライフ

あげは
ファンタジー
「私は、ユミエラとの婚約を破棄する!」 学院卒業記念パーティーで、婚約者である王太子アルフリードに突然婚約破棄された、ユミエラ・フォン・アマリリス公爵令嬢。 家族にも愛されていなかったユミエラは、王太子に婚約破棄されたことで利用価値がなくなったとされ家を勘当されてしまう。 しかし、ユミエラに特に気にした様子はなく、むしろ喜んでいた。 これまでの生活に嫌気が差していたユミエラは、元孤児で転生者の侍女ミシェルだけを連れ、その日のうちに家を出て人のいない森の奥に向かい、森の中でカフェを開くらしい。 「さあ、ミシェル! 念願のスローライフよ! 張り切っていきましょう!」 王都を出るとなぜか国を守護している神獣が待ち構えていた。 どうやら国を捨てユミエラについてくるらしい。 こうしてユミエラは、転生者と神獣という何とも不思議なお供を連れ、優雅なスローライフを楽しむのであった。 一方、ユミエラを追放し、神獣にも見捨てられた王国は、愚かな王太子のせいで混乱に陥るのだった――。 なろう・カクヨムにも投稿

噂の醜女とは私の事です〜蔑まれた令嬢は、その身に秘められた規格外の魔力で呪われた運命を打ち砕く〜

秘密 (秘翠ミツキ)
ファンタジー
*『ねぇ、姉さん。姉さんの心臓を僕に頂戴』 ◆◆◆ *『お姉様って、本当に醜いわ』 幼い頃、妹を庇い代わりに呪いを受けたフィオナだがその妹にすら蔑まれて……。 ◆◆◆ 侯爵令嬢であるフィオナは、幼い頃妹を庇い魔女の呪いなるものをその身に受けた。美しかった顔は、その半分以上を覆う程のアザが出来て醜い顔に変わった。家族や周囲から醜女と呼ばれ、庇った妹にすら「お姉様って、本当に醜いわね」と嘲笑われ、母からはみっともないからと仮面をつける様に言われる。 こんな顔じゃ結婚は望めないと、フィオナは一人で生きれる様にひたすらに勉学に励む。白塗りで赤く塗られた唇が一際目立つ仮面を被り、白い目を向けられながらも学院に通う日々。 そんな中、ある青年と知り合い恋に落ちて婚約まで結ぶが……フィオナの素顔を見た彼は「ごめん、やっぱり無理だ……」そう言って婚約破棄をし去って行った。 それから社交界ではフィオナの素顔で話題は持ちきりになり、仮面の下を見たいが為だけに次から次へと婚約を申し込む者達が後を経たない。そして仮面の下を見た男達は直ぐに婚約破棄をし去って行く。それが今社交界での流行りであり、暇な貴族達の遊びだった……。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

悪徳領主の息子に転生したから家を出る。泥船からは逃げるんだよォ!

葩垣佐久穂
ファンタジー
王国南部にあるベルネット領。領主による重税、圧政で領民、代官の不満はもはや止めようがない状態へとなっていた。大学生亀山亘はそんな悪徳領主の息子ヴィクターに転生してしまう。反乱、内乱、行き着く先は最悪処刑するか、されるか?そんなの嫌だ。 せっかくのファンタジー世界、楽しく仲間と冒険してみたい!! ヴィクターは魔法と剣の師のもとで力をつけて家から逃げることを決意する。 冒険はどこへ向かうのか、ベルネット領の未来は……

夫婦で異世界に召喚されました。夫とすぐに離婚して、私は人生をやり直します

もぐすけ
ファンタジー
 私はサトウエリカ。中学生の息子を持つアラフォーママだ。  子育てがひと段落ついて、結婚生活に嫌気がさしていたところ、夫婦揃って異世界に召喚されてしまった。  私はすぐに夫と離婚し、異世界で第二の人生を楽しむことにした。  

処理中です...