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第1章
第24話:出立
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神歴1817年皇歴213年2月26日皇都拝領屋敷:ロジャー皇子視点
俺は1日でも早く婿養子先の領地を確かめたかった。
以前皇国がバカン辺境伯家に行った、領民数の少ない領地への強制移封により、辺境伯家の財政は慢性的な赤字になっているからだ。
ただ、皇都を離れる前に絶対にやっておかなければいけない事があった。
母と兄弟姉妹の安全を確保しておかないと、とても皇都を離れられない。
無能で愛情のない皇帝が頼りにならないのも、皇子皇女の実家や支援者が他の皇子皇女を狙っているのも、これまでと変わらないからだ。
母と兄弟姉妹には、刺客や毒から身を守るためのネックレス、指輪、腕輪などを渡したし、従魔にした鳥や猫を表向きペットとしてつけた。
実際には鉄壁の守りを誇る守護獣だ。
拝領屋敷の守りは護衛侍女と陪臣徒士とその家族に任せる。
俺について領地入りするのは護衛騎士とその家臣、改めて家臣にしたバニングス家出身者の男たちだ。
孤児院を卒院した孤児たちの管理はスレッガー叔父上の家臣に任せる。
地下砦の牢屋に閉じ込めてある罪人たちも同じだ。
拝領屋敷には厳重な守りの呪文をかけてあるし、従魔にした犬や狼を番犬として飼っているから、中に籠っていれば女子供でも敵に殺される事はない。
「用意は良いか、出発!」
以前から十分に準備はしていたが、皇国から許可が出てから出立までの10日間は、手違いや忘れ物がないか確かめるのに忙しかった。
わずかでもレベルを上げる為、必要になるかもしれない食料を確保する為、何よりダンジョンの謎を解明する為、わずかでも時間があれば肉ダンジョンに潜った。
それと領地入りのために用意した8頭立ての馬車4台にも時間を使った。
元々あった馬車を含めれば、5台を使って俺がどの馬車に乗っているのか分からなくする、影武者ならぬ影馬車の役割をする事になる。
普通なら皇都詰めの家臣を多数従えて領地入りするのだが、多くの家臣を処刑したので辺境伯家の家臣が激減しているし、俺が信用している家臣など1人もいない。
だから付き従う家臣は護衛騎士8騎とその家臣が3騎76兵だ。
その大半が准男爵位を持つ守役、アントニオの家臣だ。
それと、俺個人の家臣となったバニングス家の4騎だ。
5台の8頭立て馬車には、前の御者台に御者と護衛が2人ずつ乗る。
後ろの護衛台に3人ずつの護衛が乗る。
これで合計30人が必要になるのだが、他の46人を歩かせると進みが遅くなる。
1日中馬に合わせて走らせていると、いざという時に役に立たない。
そこで1頭立て12人乗りの馬車を8台用意して、全員乗せた。
乗員数に余裕があるのは、何かあった場合に馬車を捨てる事も考えてだ。
最悪の場合は皇子仕様の馬車に兵卒を乗せる覚悟をしているが、できることなら選帝侯たちに突っ込まれる可能性がある事は避けたい。
選帝侯たちなど、その気になればいつでも殺せるが、人殺しが好きな訳ではない。
穏やかに暮らせるならそれが1番なのだ。
パカパカ、ゴロゴロと小気味の良い音を立てて馬車が進む。
普通なら振動が激し過ぎて身体に負担がかかるのだが、自分に防御魔術をかけておけば、クッションの悪い馬車でも悪路でも何の問題もない。
俺が金に糸目をつけずに買い集めた大型馬だから、進む速さは並の貴族や豪商が使う馬車とは比較にならないくらい早い。
ただ、馬には定期的に水を飲ませてやらないといけないし、8頭立てと1頭立てでは馬にかかる負担が段違いだ。
街道の要所に設けられた宿場、駅家、水場ごとに馬を休ませてやり、8頭立ての馬と1頭立ての馬を交代させてやる。
俺が回復魔術をかけてやれば簡単なのだが、5歳の皇子が回復魔術まで使えると知られたら、とんでもない大騒ぎになってしまう。
皇位継承権はなくなっているが、それでも俺を擁立しようとする者が現れるだろうし、フレディと取り巻きたちはなりふり構わず俺を殺そうとする。
母親は違うとはいえ、兄弟で殺し合うのは嫌だからな。
「殿下、今日の宿泊先は予定通りですが、本当にダンジョンに潜られるのですか?」
「ああ、ようやく王都を離れられたのだ、全力で楽しまないと損だからな」
俺は1日でも早く婿養子先の領地を確かめたかった。
以前皇国がバカン辺境伯家に行った、領民数の少ない領地への強制移封により、辺境伯家の財政は慢性的な赤字になっているからだ。
ただ、皇都を離れる前に絶対にやっておかなければいけない事があった。
母と兄弟姉妹の安全を確保しておかないと、とても皇都を離れられない。
無能で愛情のない皇帝が頼りにならないのも、皇子皇女の実家や支援者が他の皇子皇女を狙っているのも、これまでと変わらないからだ。
母と兄弟姉妹には、刺客や毒から身を守るためのネックレス、指輪、腕輪などを渡したし、従魔にした鳥や猫を表向きペットとしてつけた。
実際には鉄壁の守りを誇る守護獣だ。
拝領屋敷の守りは護衛侍女と陪臣徒士とその家族に任せる。
俺について領地入りするのは護衛騎士とその家臣、改めて家臣にしたバニングス家出身者の男たちだ。
孤児院を卒院した孤児たちの管理はスレッガー叔父上の家臣に任せる。
地下砦の牢屋に閉じ込めてある罪人たちも同じだ。
拝領屋敷には厳重な守りの呪文をかけてあるし、従魔にした犬や狼を番犬として飼っているから、中に籠っていれば女子供でも敵に殺される事はない。
「用意は良いか、出発!」
以前から十分に準備はしていたが、皇国から許可が出てから出立までの10日間は、手違いや忘れ物がないか確かめるのに忙しかった。
わずかでもレベルを上げる為、必要になるかもしれない食料を確保する為、何よりダンジョンの謎を解明する為、わずかでも時間があれば肉ダンジョンに潜った。
それと領地入りのために用意した8頭立ての馬車4台にも時間を使った。
元々あった馬車を含めれば、5台を使って俺がどの馬車に乗っているのか分からなくする、影武者ならぬ影馬車の役割をする事になる。
普通なら皇都詰めの家臣を多数従えて領地入りするのだが、多くの家臣を処刑したので辺境伯家の家臣が激減しているし、俺が信用している家臣など1人もいない。
だから付き従う家臣は護衛騎士8騎とその家臣が3騎76兵だ。
その大半が准男爵位を持つ守役、アントニオの家臣だ。
それと、俺個人の家臣となったバニングス家の4騎だ。
5台の8頭立て馬車には、前の御者台に御者と護衛が2人ずつ乗る。
後ろの護衛台に3人ずつの護衛が乗る。
これで合計30人が必要になるのだが、他の46人を歩かせると進みが遅くなる。
1日中馬に合わせて走らせていると、いざという時に役に立たない。
そこで1頭立て12人乗りの馬車を8台用意して、全員乗せた。
乗員数に余裕があるのは、何かあった場合に馬車を捨てる事も考えてだ。
最悪の場合は皇子仕様の馬車に兵卒を乗せる覚悟をしているが、できることなら選帝侯たちに突っ込まれる可能性がある事は避けたい。
選帝侯たちなど、その気になればいつでも殺せるが、人殺しが好きな訳ではない。
穏やかに暮らせるならそれが1番なのだ。
パカパカ、ゴロゴロと小気味の良い音を立てて馬車が進む。
普通なら振動が激し過ぎて身体に負担がかかるのだが、自分に防御魔術をかけておけば、クッションの悪い馬車でも悪路でも何の問題もない。
俺が金に糸目をつけずに買い集めた大型馬だから、進む速さは並の貴族や豪商が使う馬車とは比較にならないくらい早い。
ただ、馬には定期的に水を飲ませてやらないといけないし、8頭立てと1頭立てでは馬にかかる負担が段違いだ。
街道の要所に設けられた宿場、駅家、水場ごとに馬を休ませてやり、8頭立ての馬と1頭立ての馬を交代させてやる。
俺が回復魔術をかけてやれば簡単なのだが、5歳の皇子が回復魔術まで使えると知られたら、とんでもない大騒ぎになってしまう。
皇位継承権はなくなっているが、それでも俺を擁立しようとする者が現れるだろうし、フレディと取り巻きたちはなりふり構わず俺を殺そうとする。
母親は違うとはいえ、兄弟で殺し合うのは嫌だからな。
「殿下、今日の宿泊先は予定通りですが、本当にダンジョンに潜られるのですか?」
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