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第一章

第9話:宴会

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 少々残念だが、今回の件に参加した冒険者が全員集まって宴会になった。
 俺としては、ロイドと二人きりでしっぽりと飲みたかったのだが……
 まあ、今はこれでいい、この状態なら、勢いで肩を抱いても許される。
 冒険者の団結を推奨する歌を歌えば、隣のロイドの肩を抱いても許される。
 すぐ隣でロイドの男らしい快活な笑い声を聞けるのは、極上の肴だ。
 ロイドがフォークを使った大皿料理を、後から俺が食べれば、間接的にキスしたことになるから、ありふれたステーキもから揚げも、極上の料理になる。

「おお、そう言えばあの話を聞いたか?」

 何か思い出したロイドが、思いっきり顔を近づけて話しかけてきた。
 甘いロイドの体臭や口臭が、脳を直撃してクラクラしてしまう。
 気力を総動員して踏ん張らないと、無意識にロイドに抱きついてしまう。
 ロイドを抱きしめ、胸に唇を這わすことができたら、どれほど幸せだろうか?
 ロイドの汗の味は、どれほど甘いのだろうか?
 本能に逆らうには、会話に集中するしかない。

「あの話とは何なんだい?」

 俺が聞き返すと、直ぐにロイドが少し聞かせてくれた。

「レントン王国の件、レントン王国の王太子が婚約を解消したって話だよ」

 ロイドの話に、ロイドの体臭に甘く酔っていた気持ちが、冷水を浴びせられたように醒めてしまったが、それも当然だろう。
 レントン王国の王太子とは、俺を振って弟を選んだゲセルトの事だ。
 そしてロイドが面白そうに話そうとしている、婚約解消された男というのが、俺の事なのだからな。

「いや、全然知らない、教えてくれ」

 俺は覚悟を決めてロイドから話を聞くことにした。
 ロイドの口から、婚約破棄された俺を嘲笑う言葉が聞ければ、ゲセルトとジャンに対する恨みがさらに高まり、復讐の決意が強固になると考えたからだ。
 好ましいと思っている、ロイドの口から馬鹿にされる言葉を聞くのは辛く哀しい事だが、それが事実なのだから、受け止めて自分の力にする方がいい。

「知っているとは思うが、レントン王国は男同士の結婚が認められている。
 認められているのは、秘術で男同士でも子供が作れるからだが、知っていたか?」

 ロイドが聞いてきたが、俺には当たり前の事だ。
 だがそれを口にすると、俺の正体に近づくことになるかもしれない。
 ロイドに知られても、別に何の害もないのだが、ジャンが俺に刺客を放っている可能性があるから、油断するわけにはいかない。
 まあ、ジャンが放つ刺客くらい、簡単に返り討ちにしてやるがな。

「いや、初耳だ、凄い秘術があるのだな」

「それがな、莫大な魔力が必要で、王太子の二度目の婚約者が低能過ぎて、婚約破棄されることになったらしい」
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