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6章 恋の行方と愛が辿り着く場所 (後編)
27話 歴史と血が許さない2人の恋
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「ヒートヘイズの夜は星が少し見えるくらいです。その代わり月がとてもはっきりと見えます。いつか雪女様にも見てもらいたいです」
「それはたぶん無理ですね。私は雪の女神なので」
「……確か、気温が高い場所には行けないのでしたっけ」
「ええ」
「ならば僕がその風景を描いてきましょう!楽しみにしていてください!」
「貴方の絵はもう散々です!要りません!」
確かにこれまで神獣や風景画、自画像を送っていた。ならばもう仕舞う所がないのかもしれない。あまり女性の部屋をジロジロ見れないから贈り物がどこあるのかもわからないけど。
それにしても本当に綺麗だ。オーロラも雪女様も。
もしかしたら夢なのかと思ってしまう。けれど掴むての感触は確かにあった。僕は少しだけ手に力を入れる。そうすれば雪女様が動揺したように肩が微動した。
「こっちを見ないでください。貴方はオーロラを見に来たんでしょう?」
「オーロラと雪女様を見に来たんです」
「私を見たって何も起こりません。オーロラだけを見なさい」
照れ隠しなのは耳を見ればわかった。そんな反応をしてくれるなんて期待しても良いのだろうか。確かめたい思いが悪戯心になってしまい僕は口角を上げて目を細めた。
「雪女様を見ていると、これ以上無いほどにドキドキします」
「心臓病じゃないですか?」
「偽りのない恋の病です」
「……恋なんてバカみたいです」
雪女様が呟いた言葉は小さくても僕には届いた。それと同時に雪女様の想いが半分理解できる。きっと寿命や雪の女神の体質で恋や愛を諦めているのだろうなと。
「僕の顔を見るのは嫌ですか?」
「嫌です」
「僕と手を繋ぐのは嫌ですか?」
「…嫌です」
「僕と話すのも嫌ですか?」
「……嫌、です」
「それは全部嘘ですよね?」
「………」
僕の問い詰めに黙り込んでしまう雪女様。オーロラはずっと変わらずにぼんやりと光っている。僕はアイシクルの夜空から目を離して雪女様と向かい合った。雪女様の瞳は僕を映さずに氷の床だけを見ている。
「フロス様。僕、イグニは貴方の事が好きです」
「……そう」
「ヒートヘイズの王子としてこんな事を言ってはいけないのは重々承知です。でも僕は…貴方の前では普通の人間でありたい。だから言います。好きです」
いつものように膝も着かず、用意したようなセリフも使わない。それは僕が人間のイグニだからだ。雪女様の前では作らなくても良い。事前に用意しなくても良い。その時に思ったこと感じたこと全てをそのまま言葉にしたい。
…やっと僕はわかった。言葉で1番伝わるのは、思った瞬間に口にすることだと。頭で考えなくても雪女様の側にいれば自然と想いが溢れ出てくる。
それは傷つけるような単語じゃない。この人を笑顔にしたい、愛したいと心の底から信じた瞬間に出てくるもの。それが告白なんだ。雪女様は僕の告白を聞いて震える口をゆっくり動かす。
「…寿命も、違う」
「はい」
「住む場所も、違う」
「そうです」
「立場だって、違います…」
「わかってます」
長くて100年を生きる人間とそれ以上を生きる神。炎の国と氷の国。そしてどこにでも居るような王子と寒さを司る神。全く違う。それは今に始まったことではない。
雪女様は1歩、僕に向かって進む。そしてまた1歩。手を掴んで伸ばしていた僕の腕が曲がるくらいまで近くに来た。
「何で私が、雪の女神なんかになったのか…今でもわかりません」
「僕も何で自分が王子として産まれたのかわかりません」
「イグニ…貴方のせいです」
「……」
「貴方のせいでそう思ってしまうようになってしまった…」
「はい」
「罰です」
僕はこの夜、初めて相手の体温の冷たさを間近で感じた。そんな僕とは逆に雪女様は熱さを感じたと思う。
夜空に浮かぶオーロラが泣くかのように雪が降り始める。天井が開いているのでその雪達は僕と雪女様に落ちて行った。
「離れたくない…」
「僕もです」
この場所だけ何もかもが静止してしまえばいいのに。そう思ったのは炎と氷の温度が、初めて1つに重なった時だった。
「それはたぶん無理ですね。私は雪の女神なので」
「……確か、気温が高い場所には行けないのでしたっけ」
「ええ」
「ならば僕がその風景を描いてきましょう!楽しみにしていてください!」
「貴方の絵はもう散々です!要りません!」
確かにこれまで神獣や風景画、自画像を送っていた。ならばもう仕舞う所がないのかもしれない。あまり女性の部屋をジロジロ見れないから贈り物がどこあるのかもわからないけど。
それにしても本当に綺麗だ。オーロラも雪女様も。
もしかしたら夢なのかと思ってしまう。けれど掴むての感触は確かにあった。僕は少しだけ手に力を入れる。そうすれば雪女様が動揺したように肩が微動した。
「こっちを見ないでください。貴方はオーロラを見に来たんでしょう?」
「オーロラと雪女様を見に来たんです」
「私を見たって何も起こりません。オーロラだけを見なさい」
照れ隠しなのは耳を見ればわかった。そんな反応をしてくれるなんて期待しても良いのだろうか。確かめたい思いが悪戯心になってしまい僕は口角を上げて目を細めた。
「雪女様を見ていると、これ以上無いほどにドキドキします」
「心臓病じゃないですか?」
「偽りのない恋の病です」
「……恋なんてバカみたいです」
雪女様が呟いた言葉は小さくても僕には届いた。それと同時に雪女様の想いが半分理解できる。きっと寿命や雪の女神の体質で恋や愛を諦めているのだろうなと。
「僕の顔を見るのは嫌ですか?」
「嫌です」
「僕と手を繋ぐのは嫌ですか?」
「…嫌です」
「僕と話すのも嫌ですか?」
「……嫌、です」
「それは全部嘘ですよね?」
「………」
僕の問い詰めに黙り込んでしまう雪女様。オーロラはずっと変わらずにぼんやりと光っている。僕はアイシクルの夜空から目を離して雪女様と向かい合った。雪女様の瞳は僕を映さずに氷の床だけを見ている。
「フロス様。僕、イグニは貴方の事が好きです」
「……そう」
「ヒートヘイズの王子としてこんな事を言ってはいけないのは重々承知です。でも僕は…貴方の前では普通の人間でありたい。だから言います。好きです」
いつものように膝も着かず、用意したようなセリフも使わない。それは僕が人間のイグニだからだ。雪女様の前では作らなくても良い。事前に用意しなくても良い。その時に思ったこと感じたこと全てをそのまま言葉にしたい。
…やっと僕はわかった。言葉で1番伝わるのは、思った瞬間に口にすることだと。頭で考えなくても雪女様の側にいれば自然と想いが溢れ出てくる。
それは傷つけるような単語じゃない。この人を笑顔にしたい、愛したいと心の底から信じた瞬間に出てくるもの。それが告白なんだ。雪女様は僕の告白を聞いて震える口をゆっくり動かす。
「…寿命も、違う」
「はい」
「住む場所も、違う」
「そうです」
「立場だって、違います…」
「わかってます」
長くて100年を生きる人間とそれ以上を生きる神。炎の国と氷の国。そしてどこにでも居るような王子と寒さを司る神。全く違う。それは今に始まったことではない。
雪女様は1歩、僕に向かって進む。そしてまた1歩。手を掴んで伸ばしていた僕の腕が曲がるくらいまで近くに来た。
「何で私が、雪の女神なんかになったのか…今でもわかりません」
「僕も何で自分が王子として産まれたのかわかりません」
「イグニ…貴方のせいです」
「……」
「貴方のせいでそう思ってしまうようになってしまった…」
「はい」
「罰です」
僕はこの夜、初めて相手の体温の冷たさを間近で感じた。そんな僕とは逆に雪女様は熱さを感じたと思う。
夜空に浮かぶオーロラが泣くかのように雪が降り始める。天井が開いているのでその雪達は僕と雪女様に落ちて行った。
「離れたくない…」
「僕もです」
この場所だけ何もかもが静止してしまえばいいのに。そう思ったのは炎と氷の温度が、初めて1つに重なった時だった。
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