2 / 53
1章 炎王子と雪女
2話 2人の幼馴染従者
しおりを挟む
炎の国ヒートヘイズは氷の国アイシクルと隣同士だ。しかし仲が良いとは言えない。正反対の能力を授かったが故に、親交は浅かった。
「けれども僕は諦めない!この手が雪女様の手と重なる日は近いだろう!」
「イグニ様っ、急に動かないでください!」
「ヒダカ。僕達は国のために愛し合うのではない。そう、ただ人としての愛なのだ!」
「何を言っておられるのかさっぱりです…」
「降ろすぞ」
「申し訳ございません」
僕はヒダカを背負い直して向こうに見えるヒートヘイズの城下町を目指す。その奥にある建物こそが我が根城だ。
「しかし民達はこの逢瀬を許さないだろう。まだ僕が氷の塔に行っているという真実は広めてはならないぞ」
「承知しています、イグニ様。国王様もそのことは存じ上げていません。ワタクシと妹のヒメナ、そしてイグニ様の秘密です」
「よろしい」
僕には2人の幼馴染がいる。今背負っているヒダカ。そしてヒダカの妹のヒメナだ。
その兄妹は僕の専属従者として現在は動いてくれている。だから頻繁に雪女様のことを相談したり、氷の塔まで着いてきてもらったり世話になっていた。
「そろそろ城下町だ。降ろすぞ」
「はい。ありがとうございました」
「明日も出向くつもりだ。より厚手のコートを…」
「失礼ですが、明日は予定が入っております」
「え?」
「許嫁のフレイヤ様とお茶会です」
「っ…ふーっ、なんか腹が痛くなってきたな」
「では日をずらしますか?その代わり明日は1歩も外に出てはなりません」
「…………」
フレイヤ。ヒートヘイズの女騎士団長。
その強さと美貌、知恵を買った父上は僕の有無も聞かずに勝手に許嫁としてしまったのだ。フレイヤは僕よりも年上で頼りになるお姉さん。
許嫁という肩書きがなければ友として楽に接せたのだが、今は普通に接することが出来ない。
「イグニ様、どうされますか?」
「わかった…。そのままお茶会を予定に入れておけ」
「かしこまりました」
あまり乗り気ではないこの縁談。僕には雪女様が居るというのに、秘密裏で動いている逢瀬だから父上に言えない。
ため息をついた僕の横ではヒダカが複雑そうな顔をしていた。
ーーーーーー
「あっにき~!イっグニっ様~!」
ヒートヘイズの城に戻った僕とヒダカは早速自室にて明日の作戦を立てていた。話題はどうするか。服装は何にするか。
想い合ってない同士のお茶会なんて手を抜いても構わないのに、それをヒダカは許さない。
「王族たる者どんな時でも準備は完璧に」と口を酸っぱくして言うのだ。そんな時自室の扉が勢いよく開いて元気な声が飛んでくる。
「ヒメナ。勢いよく開けてはダメです。それに必ずノックをしろと何度も…」
「大丈夫だって。ノックしないのはイグニ様だけだから」
「ハハッ、それは僕を舐めているのか?」
「勿論!」
「このやろう~」
僕の隣に来たヒメナの頭をグリグリと優しく拳を入れる。短い髪を揺らしながらヒメナは笑っていた。
これも幼馴染の特権というやつだろう。こいつはヒダカとは違う意味で容赦がない。
「今日もフラれてきたんですか?」
「全く、何度も言わせるな。フラれたのではない。引いてきたのだ。想いというのは押してばかりではダメだ。頻繁に引きを見せて……」
「押し倒しそうなくらいに押している人がな~に言ってんだか。兄貴、コートは役に立った?」
「全然役に立ちませんでした。もっと厚めのものにしてほしいです」
「兄貴は貧弱なんだよ。寒さに弱すぎ」
「それは言えるな」
「2人が強すぎるだけです」
いつも交代でヒダカとヒメナと共に氷の塔へ出向いているけど、ヒメナはそこまで震えずに終わるのを待ってくれている。
となるとやはりヒダカが寒さに弱いのだ。今日だって鼻水を垂らし青白く震えていた。
後で特注のコートでも頼んでやろうか。一緒に来る人が居なくなったら雪女様に会えなくなってしまう。
「雪女様はあの氷の塔に居て寒くないのだろうか?」
「フロス様は氷の力持っているからどうってことないでしょ。逆にヒートヘイズに来たら溶けちゃうかもね!」
「それはいけない!ここは僕が寒さに慣れておかなければ。氷の塔で僕が暮らせば雪女様はヒートヘイズに来る理由がなくなる!」
「それ、国王様の前で言ってはいけませんよ」
将来の妄想をしていると横からヒダカの現実言葉が飛んできて僕の胸に刺さる。そうだ。今は向かい風が吹いて前には少ししか進めてない状態だ。
でも……
「向かい風でも進んでみせる!何故なら僕には恋が味方しているからな!」
「まーた始まった。イグニ様の演説」
「まだ明日の準備が終わってませんよ」
何とでも言うといい。この2人はちゃんと僕の味方をしてくれると知っているからな。
だからいつでも自信を持って言えるんだ。かけがえのない幼馴染は雪女様の次に好きな2人だった。
「けれども僕は諦めない!この手が雪女様の手と重なる日は近いだろう!」
「イグニ様っ、急に動かないでください!」
「ヒダカ。僕達は国のために愛し合うのではない。そう、ただ人としての愛なのだ!」
「何を言っておられるのかさっぱりです…」
「降ろすぞ」
「申し訳ございません」
僕はヒダカを背負い直して向こうに見えるヒートヘイズの城下町を目指す。その奥にある建物こそが我が根城だ。
「しかし民達はこの逢瀬を許さないだろう。まだ僕が氷の塔に行っているという真実は広めてはならないぞ」
「承知しています、イグニ様。国王様もそのことは存じ上げていません。ワタクシと妹のヒメナ、そしてイグニ様の秘密です」
「よろしい」
僕には2人の幼馴染がいる。今背負っているヒダカ。そしてヒダカの妹のヒメナだ。
その兄妹は僕の専属従者として現在は動いてくれている。だから頻繁に雪女様のことを相談したり、氷の塔まで着いてきてもらったり世話になっていた。
「そろそろ城下町だ。降ろすぞ」
「はい。ありがとうございました」
「明日も出向くつもりだ。より厚手のコートを…」
「失礼ですが、明日は予定が入っております」
「え?」
「許嫁のフレイヤ様とお茶会です」
「っ…ふーっ、なんか腹が痛くなってきたな」
「では日をずらしますか?その代わり明日は1歩も外に出てはなりません」
「…………」
フレイヤ。ヒートヘイズの女騎士団長。
その強さと美貌、知恵を買った父上は僕の有無も聞かずに勝手に許嫁としてしまったのだ。フレイヤは僕よりも年上で頼りになるお姉さん。
許嫁という肩書きがなければ友として楽に接せたのだが、今は普通に接することが出来ない。
「イグニ様、どうされますか?」
「わかった…。そのままお茶会を予定に入れておけ」
「かしこまりました」
あまり乗り気ではないこの縁談。僕には雪女様が居るというのに、秘密裏で動いている逢瀬だから父上に言えない。
ため息をついた僕の横ではヒダカが複雑そうな顔をしていた。
ーーーーーー
「あっにき~!イっグニっ様~!」
ヒートヘイズの城に戻った僕とヒダカは早速自室にて明日の作戦を立てていた。話題はどうするか。服装は何にするか。
想い合ってない同士のお茶会なんて手を抜いても構わないのに、それをヒダカは許さない。
「王族たる者どんな時でも準備は完璧に」と口を酸っぱくして言うのだ。そんな時自室の扉が勢いよく開いて元気な声が飛んでくる。
「ヒメナ。勢いよく開けてはダメです。それに必ずノックをしろと何度も…」
「大丈夫だって。ノックしないのはイグニ様だけだから」
「ハハッ、それは僕を舐めているのか?」
「勿論!」
「このやろう~」
僕の隣に来たヒメナの頭をグリグリと優しく拳を入れる。短い髪を揺らしながらヒメナは笑っていた。
これも幼馴染の特権というやつだろう。こいつはヒダカとは違う意味で容赦がない。
「今日もフラれてきたんですか?」
「全く、何度も言わせるな。フラれたのではない。引いてきたのだ。想いというのは押してばかりではダメだ。頻繁に引きを見せて……」
「押し倒しそうなくらいに押している人がな~に言ってんだか。兄貴、コートは役に立った?」
「全然役に立ちませんでした。もっと厚めのものにしてほしいです」
「兄貴は貧弱なんだよ。寒さに弱すぎ」
「それは言えるな」
「2人が強すぎるだけです」
いつも交代でヒダカとヒメナと共に氷の塔へ出向いているけど、ヒメナはそこまで震えずに終わるのを待ってくれている。
となるとやはりヒダカが寒さに弱いのだ。今日だって鼻水を垂らし青白く震えていた。
後で特注のコートでも頼んでやろうか。一緒に来る人が居なくなったら雪女様に会えなくなってしまう。
「雪女様はあの氷の塔に居て寒くないのだろうか?」
「フロス様は氷の力持っているからどうってことないでしょ。逆にヒートヘイズに来たら溶けちゃうかもね!」
「それはいけない!ここは僕が寒さに慣れておかなければ。氷の塔で僕が暮らせば雪女様はヒートヘイズに来る理由がなくなる!」
「それ、国王様の前で言ってはいけませんよ」
将来の妄想をしていると横からヒダカの現実言葉が飛んできて僕の胸に刺さる。そうだ。今は向かい風が吹いて前には少ししか進めてない状態だ。
でも……
「向かい風でも進んでみせる!何故なら僕には恋が味方しているからな!」
「まーた始まった。イグニ様の演説」
「まだ明日の準備が終わってませんよ」
何とでも言うといい。この2人はちゃんと僕の味方をしてくれると知っているからな。
だからいつでも自信を持って言えるんだ。かけがえのない幼馴染は雪女様の次に好きな2人だった。
0
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」
魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。
鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。
(な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?)
実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。
レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。
「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」
冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。
一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。
「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」
これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる