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エピローグ

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「ああ、寝坊しちゃった……!」

 芽生がばちんと目を覚まして時計を見ると、とっくにいつもの起床時間は過ぎていた。隣で安らかな寝息を立てている涼音を見ると、芽生はほっと一安心した。この人の隣にずっといられたらいいのに、とそんなことを思いながら伸びをする。

 ベッドから起き上がると、涼音の服を勝手に引っ張り出して着て、そのままリビングへと向かう。

 結局時計の針は九時を過ぎていて、こんなに寝坊をするとは思わなかった自分に驚きつつも、窓を開けてひとまず散らかった部屋を片付けた。

 冷蔵庫を見るとろくなものが入っておらず、それでも小麦粉などが残っていたので、芽生はパンケーキを作ることにした。

 甘い匂いをさせてパンケーキを作り、出来上がる寸前でコーヒーを落としていると、寝室から寝ぼけた涼音が起きてきた。

「あ、涼音さんおはようございます。パンケーキ作ったけど、和食の方がよかったですか? でも材料がなくて………冷蔵庫が食材の墓場みたくなっていて」

 涼音のシャツを勝手に着ている芽生の姿を見ると、涼音は「あー」と言いながら芽生に近寄ってきて、後ろからぎゅっと抱きついた。

「お前朝からそれは反則だ……お前がいい、朝ご飯」

「な、に、を朝から言ってるんですか。放してください!」

 しかし涼音の唇が芽生の首筋を這うと、「ひゃあ!」と芽生は思わず反応してしまって真っ赤になった。

「まんざらでもない反応するなよ」

「もーほんとに勘弁してください。ご飯食べましょ?」

「ああ。お前が作った物が食べたい。なんでもいいから」

 芽生は朝食を机の上に用意した。コーヒーをカップに用意し、焼き立てのパンケーキに、蜂蜜をたっぷりとかける。

「……涼音さん、朝ご飯初めて一緒に食べますね」

 いただきますを言おうとして、芽生がそういえばと思いだした。そうだな、と涼音が笑った顔が、あまりにも美しくて芽生は心がいっぱいに満たされるのを感じる。

「誰かと一緒に食べるのなんて……まあいい、食べよう」

「はい!」

 ——いただきます。

 二人の朝は、始まったばかりだ。



 ―完―
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