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第四章

お茶会閉幕

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 私はイザベル嬢に促され、ヴィルが領地に来てどういう風に動いていたのかを皆に事細かに説明した。きっと王妃殿下にとっては聞きたくもないお話でしょうね……わざと不興を買うような事をしてみる。


 ブランカ嬢はとても分かりやすい方で、ヴィルの話だとうっとりしながら聞き入っていた。


 この方は本当にヴィルを王子様のように慕っているのね。本来ならこういう令嬢と婚約して結婚した方がいいと思う。でもちょっと精神的に子供なところがあって、少しつつくと直ぐに顔に出てしまうところがあるわね……ヴィルの話を聞くのは好きだけど、私が登場するともの凄く嫌な顔をする。

 分かりやす過ぎて、ある意味見ていて面白い人かもしれない……


 そしてレジーナ嬢は正直どういう人物なのか……表情を見るだけでは何を考えているのか量り兼ねていた。常にニコニコしていて表情を崩さない。


 貴族の令嬢は皆そうやって仮面を着けているかのように表情をいちいち変えないものだけど、あまりにもずっとニコニコしているからちょっと不気味な感じ…………でも害があるというわけではない。


 イザベル嬢は表情は無表情なのだけど、私の話を聞きながら時折手をパチパチと叩いてくれたり、反応してくれる。


 本当に無表情なんだけど……反応が面白くて…………手の叩き方も指先だけパチパチしている。

 

 「…………殿下はニコライ卿に連絡をしてくれていて、港で捕まえる事が出来たのです。連れて行かれそうだった子供たちも解放してくださって、本当に素晴らしい活躍でしたわ。私の父も大層喜んでいて……領地まで来て感謝を述べておりました」

 「クラレンス公爵が?王都を離れる事などまずなかった公爵が……」


 ブランカ嬢が驚いている。そうよね、お父様自身も全く王都を離れられなかったって言っていたし、領地にいたのも1日だから誰も知らないわよね。


 「すぐに帰りましたので、知らないのは無理もありませんわ。父は陛下の側近ですから、王都を離れるのも異例中の異例……それほど今回の事件は見過ごす事の出来ない事件だったという事でしょう。まさか教会が…………」

 「…………まだ刑は決まっておらぬゆえ、決めつけた発言はせぬ方がよいぞ、オリビア」


 王妃殿下が扇の向こうで悪い笑みをしている。教会にダメージを与えた事が相当気に入らないのね。


 「……もちろん決めつけてはおりませんわ。私は事実をこの目で見てきましたので、その事実を元にお話をさせていただいているだけ、でございます。特に他意はございません」

 
 扇を広げ、ニッコリ笑って見せる。何が決めつけよ、実際に港で見たんだから言い逃れ出来ない状況なのに……


 「ふん、教会は下賤な者を掃除しようとしてくれていたのかもしれぬのに……ここまで騒ぎを大きくするとは。それによって議会で審議するべき問題も遅れている。そなた達は何がしたかったのだ?」

 「下賤な者とは…………この国にそのような者はおりませんわ、王妃殿下。皆大切な民であると、陛下も殿下も仰っております。私は陛下の大切な民をお守りするのがお役目だと思っておりますし、無論父もそのような気持ちで公務にあたっていると存じ上げておりますが……」

 「そのような戯言など詭弁だ……それで国が救えれば苦労はしない」

 「では陛下のお心を蔑ろになさるおつもりでしょうか……?」


 私と王妃殿下の仁義なき戦いに皆、口を挟めずにいる。…………これ以上ここにいても意味はないわね。私は一息ついて、お茶会を後にしようと思った。


 「王太子殿下も陛下のお志を継ぎ、とても立派な活躍をなさっております。それも一重に王妃殿下の育て方の賜物でございますわ。」

 「そ、そうですわ!王妃殿下のお力があってこそですわ!」


 ブランカ嬢が咄嗟に王妃殿下を褒め称える。毒親を褒めるなんて絶対にしたくないけど、一応上司だから褒めておかなきゃね。


 「……………………ふん……そのように言ったからとて、何も出ぬぞ」



 ……………………ん?ちょっと照れていらっしゃる?………………この人、ヴィルにそっくりかもしれない…………………………私は王妃殿下のちょっと赤らんだ顔を見なかった事にして、お茶会を退席する事にした。


 「申し訳ございません、王妃殿下、皆さま。まだ領地から帰って日も浅く、体調が万全ではございませんので……今日はこの辺で失礼させていただきます」


 少し険悪なムードになりそうだったので、皆が私の退席にホッとしている感じがした。気のせい……ではないわね。でもイザベル嬢だけは最初から最後まで無表情だったわ……

 そしてレジーナ嬢もほとんど表情を崩さず――



 でも色々と収穫はあったし、王妃殿下とお話する事も出来て充実感もあったし、実際に出席して良かったと思えた。そしてお茶会で出されたお茶は、口をつけただけで飲み込む事はしなかった。


 お父様のお話を聞いていたし、飲む気にはならないわね……



 色々な思惑が交錯したお茶会は幕を閉じ、私は公爵邸に帰って疲れがドッと出てしまったのか、その夜は寝落ちるように眠ってしまったのだった。


 
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