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第四章

ブランカ・メクレーベルの憂鬱 ~ブランカSide~

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 私は伯爵家のブランカ・メクレーベル。一人娘だったので、両親にはとても可愛がられた記憶しかない。

 美しいゴールドの髪に甘い顔、男性は自然と寄ってくるし、今まで不自由した事はなかったわ。でも私がなりたいのはお姫様であって、他の令息には興味がないの。王子様と結婚するのが子供の頃からの夢だった。

 
 この国のヴィルヘルム王太子殿下は、その点でとても見目麗しく、強く、男らしいし、私にとって理想の王子様だった。


 この方の隣に並びたいと、小さい頃から淑女教育にも熱心に取り組んだし、日夜努力していた。


 でもその私の夢も9歳の時に儚く散る事となる。公爵家のオリビア様に横取りされ、ショックで10日は寝込んだ。


 でも自分の方が美しいとお母さまは言ってくれるし、あんなお堅い女に負けはしない……女の魅力を磨くのよ、と男性と少しのたしなみ程度には遊んでみたわ。


 どの男も王太子殿下には遠く及ばないくて……やっぱりあのお方は特別な方なのね。それでこそ私に相応しいというもの。


 学園では殿下と同じ生徒会に入れて、毎日が嬉しくてたまらなかった。私は一個下だけど、二年は共に生徒会のメンバーとして活動出来る事が嬉しくてたまらなかった。

 時折トマスが仕事をしなさいとうるさい時もあるけど……生徒会の仕事は割と好きだった。


 殿下との時間を喜んでいたのも束の間…………オリビア様は学園にまで通って殿下のそばにいた。

 

 王太子妃教育があるのだし、学園での勉強は免除されているはずよね?ここに通う必要などないのに暇なの?学園での殿下との時間は、私が唯一独り占め出来る時間なのに……何より私の殿下にずっと纏わりついて、殿下と二人になる機会すら出来ない……私と殿下の邪魔をしようと言うのね。

 
 ある日殿下の授業の終わりを待つオリビア様が、伯爵家の令息に言い寄られている場面に出くわす。


 殿下という素晴らしい婚約者がありながら、他の男に現を抜かすなんて許せない…………王妃様とのお茶会で、王妃様からオリビア様が男好きという事を聞いていた。

 でも学園では殿下にべったりだったし……まさか、と私は信じていなかった。

 でもやっぱりそうなのねと確信に変わった私は、オリビア様が色んな男と親密な雰囲気という噂を流した。


 学園のお友達も半信半疑だったけど、オリビア様は見た目だけは美しいから言い寄られる事が多くて、皆がそういう目で見始めた。

 
 その為に学園に通っているのでは、と噂する者も出始める。

 
 そして殿下もその噂が気になるのか、どんどんオリビア様への態度が冷たくなっていく……これは成功ね!


 王妃様も言っていたのだから真実に違いないもの。

 それなのにオリビア様が熱で6日間お休みになられてから、殿下は変わられてしまった。生徒会に来ても心ここにあらずと言った感じで、すぐに王宮に帰られてしまうし、生徒会に顔を出す機会がめっきり減ってしまう…………オリビア様はすっかり学園に来なくなったし、殿下と距離を縮めるチャンスなのに!

 そう思って久しぶりに生徒会に顔を出した殿下との距離を縮めたい私は、王宮に戻る殿下をお送りしようとした。


 「ヴィル様…………ブランカがお送りします。いつもはオリビア様がいらっしゃって出来なかったから…………ダメですか?」


 私は上目遣いでヴィル様の腕に自分の腕を絡め、お願いする。こうすれば私の胸の感触が気になる男たちは、すぐに了承してくれるの。


 「すまないが、今私が見送りをしてほしい人はオリビアだけなんだ。君はトマスの手伝いをしてくれ。…………では、また明日」



 …………私の誘いに乗るどころか、冷たくあしらわれてしまったのだ。トマスもびっくりしていたけど、私もあまりの変わりように驚いて固まってしまう――



 なぜ?あれだけ冷遇していたのに、どうしてそんな事を?

 
 
 しかも殿下がめっきり生徒会に顔を出さなくなったと思ったら、オリビア様の元へ向かったって…………副会長のニコライ様に告げられて、ショックで3日は泣いて暮らしたわ。

 その後、王妃様とお茶会をする機会があり、その事を言ってみたら自分が殿下に掛け合ってみるから元気を出して、と仰ってくださった。
 

 やっぱり王妃様はお優しいお方……何かと目障りな公爵家なんて早く潰れればいいのに。


 私のお父様もあの公爵がいるせいで、陛下は我々貴族の話に耳を貸してくれないと言って嘆いておられたわ……貴族が贅沢に暮らして何が悪いの?


 貴族らしからぬ事ばかり言っている人物が、公爵だなんておかしいのよ。絶対に王太子妃の座を奪って、必ず我が伯爵家が優位に立ってやるんだから。王妃様に可愛がってもらっているのは私の方だし、オリビア様が戻ってきたらご自分の立場を分からせてあげないと。


 
 ヴィル様との事もまた王妃様に泣きついてしまおう。きっと手を貸してくれるはずよ――――



 
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