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第三章
父親の愛情
しおりを挟む「しかし今回の件で、子供たちを売りに出そうとしていた国が王妃殿下の母国だったなんて、妃殿下にとってもダメージは大きいでしょうね~」
まさかの情報はまだまだ出てきた。ドルレアン国が母国なの?さすがにそれは小説でも書かれていなかったので、寝耳に水だった。
「…………ドルレアン国と取引していたとはな。実際に母上が関わっていたかどうかは分からないにせよ、教会と母上が深く繋がっているのを分かっている貴族は多い。これで少し大人しくなってくれるだろうとは思うが…………」
「少しは、ね。そう願いながら今日ここに来たのですよ。お二人で解決してくれて本当に助かりました。オリビアも頑張ったね……」
「………………私は私に出来る事をしただけですわ」
突然お父様に褒められて、思わず照れてしまう…………お父様の苦労に比べたら、どうという事はないわ。
「うん。……殿下にも感謝致します。実はオリビアが領地に行くと言い出した時に殿下も領地に行く事は想定しておりました。王宮で殿下に会った時やゼフをオリビアに付けると聞いた時にオリビアに執着している感じがあったので……ニコライくんからも聞いて、やはり向かいましたかと…………」
「私が向かう事も想定済という事は、領地で何かあった時にそれを解決する事も想定済だったのではないか?」
殿下にそう言われたお父様は、ただニコニコしている………………まさかね……
「…………殿下は可愛い娘の婚約者です。殿下がどこまで出来るのかを見てみたかったのもあったので」
「それでオリビアが危険に晒されるとは思わなかったのか?」
「殿下はオリビアを危険に晒したのですか?」
「…………………………」
凄いわ………………お父様って本当にやり手というか、殿下が全然返す言葉がなくなってしまっている。
「私は殿下が何が何でもオリビアを守るだろうなと思っていましたよ~仕事を放り出してまですっ飛んで行くくらいですから。しかし親としては大切な娘を預けるに値するのかどうか、は見極めさせていただきませんと。どこぞの馬の骨に大切な娘はあげられませんからね~」
「…………………………」
お父様はとてもニコニコして仰っているけど、何やらヴィルへのただならぬ圧を感じるわ…………これは私を冷遇していたヴィルへの静かな怒りね。私って本当に愛されているんだなって感じて、何だか嬉しくなってしまった。
「クラレンス公爵、すまなかった……私が不甲斐ないばかりにオリビアには惨めな思いをさせてしまった。そして彼女が命を狙われてしまったのも私の責任だ。本来なら私が全力で守ってやらねばならなかったのに……」
「それは違います。オリビアを殿下の婚約者にと陛下に勧めたのは私なのですよ。そして二人を会わせたのも……それが私の罪です。あの時の事をどれだけ後悔したか」
お父様もヴィルも自分の事を懺悔して、私を責めようとはしないのね。
「オリビアの幸せをジョセフィーヌにあれほど誓ったのに私の手で危険に晒すような人生にしてしまった…………」
お父様の美しい瞳からハラハラと涙が零れ落ちて…………相変わらず美しい涙だわ……私はたまらなくなって立ち上がり、お父様の美しい顔を抱きしめた。
「ごめんね、オリビア…………」
「お父様、オリビアは大丈夫です。今までも幸せでしたし、これからも必ず幸せになってみせますわ。」
頭をよしよししてあげると涙がおさまったのか、笑顔を見せてくれてホッとする。私はそのままお父様の隣に腰掛けると、ヴィルがお父様に頭を下げ出した。
「これから私は、彼女に精一杯誠意を示していかなければならないと思っている。それによってオリビアがどう思うかは彼女次第なのだが……まずは建国祭でオリビアをエスコートする事を許可してくれないだろうか……頼む」
「………………………………」
え、ヴィルが頭を下げている。王族がそんな簡単に頭を下げちゃいけないんじゃ…………
「………………オリビアは了承したのかい?」
「え?……ええ、婚約者ですし、そうするべきなのかと……」
対外的にはまだ婚約者だから、一緒に行かなければならないものだと思っていたんだけど……何の深い意味もなく了承してしまった事を今更ながら後悔する。
「…………………………仕方ありませんね。オリビアが了承したのなら、私が口を出す必要はないでしょう。しっかりエスコートを頼みますよ」
「……感謝する」
お父様にお礼を言った後、ヴィルがこっちを見て嬉しそうに笑っている……またしてもエフェクトが凄くて無になってしまう。
まぁでもお父様に頭を下げてくれた事で、少しは溜飲が下がった、かな……ちょっとだけ建国祭に対して前向きな気持ちになれたような気がした。
父親の愛情って本当にありがたいものね。お父様が常に私の幸せを考えて行動してくれる事の安心感って、物凄いものがある……私はお父様を悲しませる事は絶対にしてはいけないと、固く心に誓った。
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