上 下
62 / 148

60

しおりを挟む
「んんっ あー、あー、あー」
「……何やってるんだ?」
「あ、すぐ起きちゃったか」

 さっき起きた時に、寝起きのせいだけじゃない喉の違和感があったので自己治癒して発声確認してました。
 ソランツェはすごく気持ち良さそうに寝てたからソッとベッドから抜け出して下のソファで小声でやってたのに気付かれちゃったな。

「い~っぱい声出したから掠れてた」

 パッと腕を広げるとそのままやって来て、ソファに押し倒される。

「他は大丈夫だったか?」
「ん?気になる?」
「ああ」
「じゃあ、確かめて」

 なんて、そんな必要無いのはお互いに判ってる。ただの茶番劇。

 昨日眠りに就くまでに休憩を挟みつつ何回もやってる中で気付いたんだよな。俺ってダメージを受ける事のないっぽい負担ゼロな身体になってるって。
 でも、喉は色々別だったり乳首を噛まれたりとかの痛気持ち良いのは残されてて、なおかつ感度倍増疑惑の都合の良い身体だな、なんて笑いながらもバカになっていた頭は有り難く思いとことん耽っていた。
 現在もソランツェ含めて未だに頭はバカのままみたいだ。お互い軽く羽織っただけの意味のないガウンの下は裸で、密着した素肌には既に相手が兆し始めているのは伝わっている。

「どこからにしようか?」
「好きな所からでいいよ」
「悩んでしまうな」
「最終地点は決まってるのにね~」

 あははと笑いながら両手で顔を引き寄せると、深く口付ける。舌を愛撫し合うのが気持ち良い。ソランツェがの為に少し体を動かし体が離れたのが名残惜しくて、もっとと首に手を回そうとして違和感に気付く。

「え?」
「ん?」
「あれ?痣は?」
「は?痣?」
「消えてるよ?!」
「!?」

 首に俺と繋がってるっていう例の痣が消えている。
 ソランツェの首の痣が消えている事態に、淫靡な雰囲気は吹っ飛んで、一体どういう事だと首に触れようと手を差し出してまた気付く。俺の指が一本なんか変!

「俺の指に何かあるー!?!」
「何だ?!」

 確認しようと急いで俺の手を引き寄せたソランツェの手にも俺と同じ様に……

「痣がある、ね?」
「そう……だな?」
「これって……ソランツェの首にあったのと同じ柄だ」

 二人ともぐるりと一周、左手の薬指、に……?ん?左手薬指?……はぁ?どゆ事?


「おいこら、アシュマルナァーーー!!」








++++++








『いちいちうるさい奴だ』
「はいはい、すみませんねぇ!何も判らないものですからぁ!!お聞きしたい事が御座いましてぇぇぇ!!!」
「リ、リヒト……」

 俺の神をも恐れぬ喧嘩腰にソランツェは珍しくオロオロしている。いいんだよ、こいつにはこれで。何故か怒んないし。あ、つーか、ソランツェってアシュマルナの顔見るの初めてじゃん。

「なあ、この指何?あと、ソランツェの痣」
『指のは伴侶紋、つがい紋とも言うか』
「は、伴侶……?!」
『お前が自分で出したんだから、私が繋いでやっていた仮の鎖はもう必要ないだろう』
「え?ええ?はあ?」
『出た場所もお前の意識の内だ』
「はあ???」

 いや、判るんだけどもさっぱり判んないですが?どういう事?いや、判るんだけどね、うん。でもね、判んないんだよ!

「これは俺とリヒトが伴侶となった証。正式な繋がりが出来たので首のは消えたと……」
『そうだな』
「痣が出現した場所はリヒト自身が証を付けるに相応しいと思っていた場所という訳でしょうか」
『そうだ。とにかくこれでいい。じゃあな』
「「え?」」

 アシュマルナのどこかホッとした様な顔を最後に通話が終わり画面が消える。知りたい事は知れたけど、どう考えたって表面的だし何とももやもやの残る結果に二人で顔を見合わせて首を傾げるしか出来ない。
 
「いや、何なの結局これ」
「うーん……」

 とりあえず、俺とソランツェが繋がってるって事には変わりないみたいだからいいんだけど、そもそも繋がるって何……?あと、左手薬指っつーのは結婚指輪の位置だから、俺にもそう刷り込まれてたって事は判った。……ちょっと恥ずかしいけど。

「……色々気にしたら負けか」

 
 ステータス確認したら「伴侶:ソランツェ・ルーダル」って追加されてて、ソランツェの方も伴侶として俺の名前が追加されていた。マジかよ。

「なんか色々すっ飛ばしてるけど……あの、大丈夫?」
「何も問題は無いぞ」

 少しの躊躇いもなく俺の左手を取って新しく出来た痣の所にキスしてから抱き締めてくれた。嬉しいな。








++++++








 さて、すっかり興が削がれたみたいになったので、二人とも服を着ましたよ。何もしてないみたいな顔に戻ります。

「どうする?ファンディオ戻る?」
「そうだな、そうするか」
「ご飯食べてからにしようか」
「ああ」

 オニオンスープは教えただけって感じだし、久し振りにちゃんと料理しようかな。何がいいかな。動き過ぎたし唐揚げとかトンカツとかガッツリ飯食いたい気分だけど……。揚げ物って存在してる?食べた事あるかな?悩むなあ……あ、餃子食べたい。ハンバーグも食べたいかも。どうしよう。

「ソランツェは……」
「俺は肉を焼いただけでいいぞ?」
「……聞こうとした俺がバカだった!」

 そうだなってクスクス笑いながら、いつもの日課に向かって行った。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔女の呪いで男を手懐けられるようになってしまった俺

ウミガメ
BL
魔女の呪いで余命が"1年"になってしまった俺。 その代わりに『触れた男を例外なく全員"好き"にさせてしまう』チート能力を得た。 呪いを解くためには男からの"真実の愛"を手に入れなければならない……!? 果たして失った生命を取り戻すことはできるのか……! 男たちとのラブでムフフな冒険が今始まる(?) ~~~~ 主人公総攻めのBLです。 一部に性的な表現を含むことがあります。要素を含む場合「★」をつけておりますが、苦手な方はご注意ください。 ※この小説は他サイトとの重複掲載をしております。ご了承ください。

異世界のオークションで落札された俺は男娼となる

mamaマリナ
BL
 親の借金により俺は、ヤクザから異世界へ売られた。異世界ブルーム王国のオークションにかけられ、男娼婦館の獣人クレイに買われた。  異世界ブルーム王国では、人間は、人気で貴重らしい。そして、特に日本人は人気があり、俺は、日本円にして500億で買われたみたいだった。  俺の異世界での男娼としてのお話。    ※Rは18です

異世界召喚に巻き込まれ転移中に魔法陣から押し出され、ボッチで泣いてたらイケメン幼馴染が追いかけてきた件<改定版>

緒沢 利乃
BL
僕、桜川凛は高校の卒業式の日に、教室に突然現れた魔法陣のせいで同級生の数人と一緒に異世界に転移することになった。しかも、転移の途中に同級生の誰かに魔法陣から押し出されてしまう。 えーっ、そんな、僕どうなっちゃうの? 目覚めると森らしきところに一人ボッチでした。 小柄でやせ型で学校でも地味で目立たない特技なしの僕。 冒険者初心者でも楽勝の小型魔獣でさえ倒すこともできず泣きながら逃げ回り、それでもなんとか異世界で生き延びれるよう四苦八苦しながら頑張っていたら……。 幼稚園のときからの幼馴染、橘悠真が現れた。 あれ? 一緒に異世界転移したけれど、悠真は召喚された場所にみんなといたはずでしょ? なんで、ここにいるの? 小学校高学年から言葉も交わさず、視線も合わさず、完全に避けられていたのに、急に優しくされて、守ってくれて……ちょっとドキドキしちゃう。 えっ、どこ触ってるの? いや、大丈夫だから、撫でないで、ギュッとしないで、チュッてしちゃダメー! ※R18は予告なしで入ります。 この作品は別名義で掲載していましたが、今回「緒沢利乃」名義で改定しました。 どうぞ、よろしくお願いします。 ※更新は不定期です。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

名前のない脇役で異世界召喚~頼む、脇役の僕を巻き込まないでくれ~

沖田さくら
BL
仕事帰り、ラノベでよく見る異世界召喚に遭遇。 巻き込まれない様、召喚される予定?らしき青年とそんな青年の救出を試みる高校生を傍観していた八乙女昌斗だが。 予想だにしない事態が起きてしまう 巻き込まれ召喚に巻き込まれ、ラノベでも登場しないポジションで異世界転移。 ”召喚された美青年リーマン”  ”人助けをしようとして召喚に巻き込まれた高校生”  じゃあ、何もせず巻き込まれた僕は”なに”? 名前のない脇役にも居場所はあるのか。 捻くれ主人公が異世界転移をきっかけに様々な”経験”と”感情”を知っていく物語。 「頼むから脇役の僕を巻き込まないでくれ!」 ーーーーーー・ーーーーーー 小説家になろう!でも更新中! 早めにお話を読みたい方は、是非其方に見に来て下さい!

どうやら生まれる世界を間違えた~異世界で人生やり直し?~

黒飴細工
BL
京 凛太郎は突然異世界に飛ばされたと思ったら、そこで出会った超絶イケメンに「この世界は本来、君が生まれるべき世界だ」と言われ……?どうやら生まれる世界を間違えたらしい。幼い頃よりあまりいい人生を歩んでこれなかった凛太郎は心機一転。人生やり直し、自分探しの旅に出てみることに。しかし、次から次に出会う人々は一癖も二癖もある人物ばかり、それが見た目が良いほど変わった人物が多いのだから困りもの。「でたよ!ファンタジー!」が口癖になってしまう凛太郎がこれまでと違った濃ゆい人生を送っていくことに。 ※こちらの作品第10回BL小説大賞にエントリーしてます。応援していただけましたら幸いです。 ※こちらの作品は小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しております。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

ひとめぼれなので、胃袋から掴みます

木嶋うめ香
BL
佐藤卯月(さとう うづき)は、母親と二人暮らしの高校生だった。 だったというのは、昨日母親がどこかへ逃げてしまい行方知れずになった挙げ句、いつも言い掛かりを付けてくるクラスメイトから猫を守ろうとして歩道橋の階段のてっぺんから突き落とされて、卯月自身が死んでしまったからだった。 『あれ?』 気がつくと俺は白い空間にプカプカ浮いていた。 『僕が管理している世界で暮らしてみない?』 声をかけてきた光の玉に驚いていると、光の玉は自分はある世界の神だと名乗った。 そして、さっき俺がクラスメイトから守った猫だとも。 クラスメイトから守った猫は、偶然地球に遊びに来ていたよその世界の神だったのだ。 『他の世界にいる間は、擬態している動物の能力しか使えないから、僕は君に助けて貰ったんだ。だからこれはお礼とお詫びだよ』 お礼とお詫びと言われたら、拒否するのはなんだか悪い気がして、卯月は有り難く神様の世界に住むことになった。 『赤ん坊からだと大変だから、君の今の年齢こっちに来てもらうよ。体は僕の世界に対応出来るようにするから安心して』 にこにこと笑う神様は、おまけもつけたよと俺を白い空間から送り出したのだった。 18禁展開はウヅキが成人してからです。 だいぶ後半です……。

処理中です...