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 その自覚があろうとなかろうと自分が求めていた言葉というのは受け取れた時にこんなにも喜びを自分に齎すのかと驚く。

 気持ちの自覚は無くとも触れ合いを嫌だと思う事も無いしもっと欲しいと思う事あって、このままなし崩しで進んで行く関係でいいかと一人で思っていたけど、次はと願ったあの時以上のものには進む事は無く、自分で気付かない内に身勝手ながら不安に思っていたのかもしれない。

「ソランツェ」

 でも、いざ自覚を持つとソランツェがちゃんと待っていてくれたんだって事が判って嬉しく思う。他人から言わせればあそこまでやっておいて待つも何もみたいな感じかもしれないけど……。


 俺を抱き締めている腕をクイッと引っ張ると気付いたソランツェが体を離してくれた。絡む視線にお互い微笑むと今度は俺からソランツェを抱き締める。

「嬉しい」
「ああ」
「ソランツェが嬉しそうだったあの感じ、俺も判る様になった」
「そうか」
「好き、好きだよ。ソランツェの横は誰にも譲らないって思った」
「同じ事を俺も思っている」

 お互いが同じ位置に立ってるってなんて甘美な事なんだろう。

 そんな事を考えながら目を合わせ目を閉じれば、すぐに触れて来た唇は今までよりももっと気持ち良く感じて堪らない。そのまま、何度も唇を食み合いながら抱き合った。
 本当に通じ合って交わすキスは歯止めが効かないと、口付け合ったまま離れる事も無く体をベッドへ移動させると、自分でもここまでか、なんて笑いがこみあげて来て楽しくなってくる。ソランツェも思う事が判ったのかクスッと笑う。その笑う顔、大好きだよ。











++++++









 乱雑に脱がせ合って散らかった服の存在なんか忘れて、お互いを自分の中に取り込もう相手の中に取り込ませようとする様に、自らを差し出し求め合う。


「あ…っ ぁん、」
「大丈夫か?」
「……も、ぅ早く」

 初めは違和感しか無かった中を撫でる指の存在に段々と快感を覚えるようになると、焦る必要なんて何もないのに早く早くと気持ちが逸ってくる。
 胸を這う舌や俺のものに触れる手、そして、優しく中に触れる指が、全てもどかしくて頭がおかしくなりそうだ。

「もう少しだ」
「やだ、ぁ」
「、俺だって……」

 耳元で囁く声に、我儘を言う子供の様に頭を振ると目尻に溜まっていたらしい涙がポロポロと零れる。『俺だって早く入りたい』って言うんだったら、俺の事なんか考えないでなんて……ソランツェは傷つけない様にしてくれてるってちゃんと判るのに、でも、自分の体はもう熟れきってて我慢が効かない。
 甘く痺れる身体を動かし腕を掴んで中に入り込むソランツェの指を抜くと、切なくヒクつく感覚を余計に感じる。

「リヒト?」
「……もう、お願いだから」

 快感に酔っていない素面だったら絶対俺こんな事出来ないのにって頭のどっか遠い方で考えつつも全てがソランツェに見える様に自ら膝裏を抱えて懇願すると、ソランツェは一瞬目を見開き動きが止まってしまった。が、すぐに取り戻し、

「リヒト、こんなに可愛い姿俺以外に見せるなよ」
「……見せる訳無いっ」
「絶対にだぞ」

 説教をする様に俺に言い聞かせながらも、ガッと俺の腰を掴むソランツェの手の荒さに身体が期待に震える。


「あ、スゴ…熱っ」

 縁にピタリと触れる剥き出しの体温が熱くて気持ち良くて、身体の全てが期待にゾクゾクとざわめく。俺の好きなソランツェがそこにある事が堪らない。

挿入はいるぞ」
「ぅ……ん、来て」

 指よりも大きなもので開かれていく熱さを貪欲に取り込もうとする場所が、もっともっとと疼き、中を進むソランツェを感じて喜びで声が溢れてしまうのも止められない。


「ぁ…っあっ、ん……ああっあっ、ぁあ!」

 ズンッとお腹の奥まで待ちに待った快感で満たされた衝撃は凄まじく、一瞬で全身を駆け巡ったそれは一際大きな嬌声を俺に上げさせ目の前を白くさせた。


「……ぁ、え?」

 見覚えのあるトロッとしたものが自分の上に散らばっているのに意味が判らなかったが、覆い被さってきたソランツェの嬉しそうだけど明らかに余裕のない顔で俺は意味を理解する。

「嘘、……入れ、られただけ……」
「ああ、本当に堪らない」

 ソランツェは俺の顔中にキスすると、奥まで入った所で止めていた腰をゆっくり動かし始める。ズルズルと出ていく感覚が入ってくる時とは違う快感を呼び起こし俺を混乱させる。指の時にはここまでの事は無かったはずなのに、と。

「っあ? や、待って!待って!」
「可愛い……」

 俺の静止を求める声をソランツェはキスで塞ぎ、そして、ギリギリまで引き抜きまた奥まで入る。何回も繰り返す動作の間、ソランツェは可愛いだとか好きだ、愛しているとか絶えず囁いて来て余す所なく俺を甘く溶かしていく。

「あ、あぁ……んんっあっ あっ」

 ああ、もうこんなの離れられる訳ない。絶対に離れたくないって思うよ。俺が腕も足も絡みつかせる様に抱きつけば満足そうな顔を見せてくれ、それに愛しさが込み上げる。

「……ソランツェ」
「ああ」
「俺も、愛してるよ」
「リヒトッ」

 速さを増しガツガツと身体を自分勝手に揺すられても、気持ち良さと愛しさしか感じずそれだけに溺れていく。零れる声は言葉なんか紡げる理性なんて持ってない。

「出すぞっ」

 放出され体内に広がったものの熱さはそれだけで俺に再びの解放を迎えさせた。でも、

「……なあ、ソランツェ」
「リヒト、まだ……」
「うん」

 まだまだ疼く身体の中に、先程と変わらぬ硬度を保つもの。
 時間は沢山あるんだし……

「もっともっといっぱいしよっか?」
「いいのか?」
「いいんじゃない?」
「じゃあ、遠慮なく」

 抱き合ったまま見つめ合うと、笑い合う。


 あー、なんか楽しいな。



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