記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

文字の大きさ
226 / 476
第17章 追憶の番人『公』

第226話 やっぱり出合い頭に喧嘩する二人

しおりを挟む
「お~お~。俺が自らこの辺りまで出てくるのは久しぶりだな~」
「フオオオー!」
「や、やっと着いたか……」
「もうダメ……吐きそう……」

 俺とロギウスは飛行機という乗り物に乗り、フロストとフレイムの兄弟と一緒に宿場村近くの平原に降り立った。
 この辺りならば人もほとんど通らないので、フロスト達がいても大丈夫だろうと判断して決めていた集合場所だ。

「だ、大丈夫か……ロギウス?」
「ぜ、全然大丈夫じゃない……水……」

 猛スピードの飛行機による突風と揺れによって、ロギウスは完全にグロッキー状態だ。
 この国の王子になんてことさせてるんだ……。

「フン! まさか本当にここに来るとはな……バカフロスト」

 そんな俺達を出迎えてくれたのはバクトとその護衛二人。明らかに不機嫌そうな顔をしながら俺達の方を見ている。
 原因は言わずもがな――

「クーカカカ~! 俺もまさかお前と手を組む羽目になるとは思わなかったぜ~? アホバクト~」

 ――フロストである。

「ロギウス殿下。一応戦力が欲しい以上、このバカ学者が仲間になるのは一万歩譲って認めてやる。だが、このバカが問題を起こした時の責任はとってもらうぞ?」
「わ……分かってるよ……」

 今尚グロッキー状態のロギウスに対してバクトの容赦ない警告が入る。
 具合の悪いロギウスは早々にその場を退散していった。

 それにしても、『一万歩』って譲り過ぎだろ……。

「は~!? 人が協力してやるってーのに、随分な言い草だな~!?」
「黙れ。マッドサイエンティストが」

 フロストとバクトはお互いに悪態をつきながら懐に手を入れ――

 チャキ チャキ

 ――お互いに銃を取り出した。

「おい!? なんで出会って早々に銃を向け合ってるんだ!? 喧嘩のレベル超えてるだろ!?」

 この二人……。仲が悪いとは聞いていたが、ここまで悪かったのか……。

「チッ! 戦力は五分五分か」

 戦おうとするんじゃない。バクト。

「五分五分~? 馬鹿言ってんじゃねーよ! 俺が持ってるのは"マシンピストル"だ! 拳銃サイズでありながら、"マシンガン"のような連射性を可能としている! お前が持ってる"自動拳銃"とはわけが違う!」

 煽るんじゃない。フロスト。

「なら……これでどうだ?」

 バクトは横にいた護衛二人に合図を送り、同じく銃を構えさせる。
 だから戦おうとするな。バクト。

「ぐぬぬ~! 人数を増やすのは卑怯だろーが! だったら……フレイム!」
「フオ? オオー」

 フロストの指示でフレイムが困惑しながらも、新しく左腕に装着されたガトリングガンを準備する。
 張り合うんじゃない。フロスト。

「おい! フレイムを使うのは卑怯だろ!」

 バクトの言う通り、これはいくら何でも卑怯だ。
 ……そもそも、人間の領域を超えたフレイムが今ここで戦闘を開始したら大変なことになる。

「おい、二人とも。いい加減その辺にしておけ。こんなところで馬鹿やってても、どうにもならねえぞ?」
「チィ……! もういい。こんなバカの相手などしてられるか」
「クーカカカ~。命拾いしたな~、アホ公爵~」

 俺はなんとか二人に制止を促して事態を収束させた。
 バクトもフロストも不服そうではあるが、お互いに出していた戦力を引っ込めさせる。

「そもそも何でお前ら二人はこんなに仲が悪いんだ?」
「……こいつのバカさが気に食わない」
「……こいつのアホさがうざったい」

 何だその理由……。
 とにかく二人の関係にはあまり踏み込まない方がいいな。
 ……下手に刺激するとまた殺し合いに発展する。

「とにかくだ。俺達の改革に……王国騎士団との戦いに協力してもらう以上は、野蛮な真似はやめるんだな。バカフロスト」
「そっちこそ戦いになった時は俺の邪魔はしないでほしいもんだね~。アホバクト」

 ……とりあえずは協力してくれるみたいだな。本当にとりあえずは。

 だがこれで王国騎士団と戦うための心強い戦力が加わった。
 色々と問題はあるが、来る決戦の時には頑張ってもらおう。



 ……頑張ってくれ、頼むから。


◇◇◇


 ゼロラの元を離れたフロストとバクトは、二人でコソコソと話をしていた。

「な~、バクトよ~? お前、"こっちの事"はマカロンとラルフルには言ってねーよな~?」
「うるさい奴だ。言ってないに決まってるだろ。もし言ってたらゼロラやロギウスがとっくに口にしてる」

 フロストはバクトに何やら確認をとっている。
 それは自らの秘密をバラされたくないような様子で――

「ふーん。それじゃーよ~、"そっちの事"は……ミリアだったっけ? 聖女様には言ってるのか?」
「……そっちも言ってない。貴様も口にするんじゃないぞ? そもそも、今の俺に何か言えた義理でもない」

 フロストはもう一つバクトに確認をとった。
 それはまるで、バクトの秘密を確認するように――

「別にお前の方は話してもいいと思うんだけどな~。むしろ話せよな~」
「ほっとけ……」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。 そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。 しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。 過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

処理中です...