記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第8章 気付き始めた思い

第94話 会えば喧嘩する二人

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「こ~んなところで出くわすとは奇遇だな~、アホ公爵」
「貴様が外を出歩くなどいつ以来だ、バカ学者」

 ルクガイア王国内のとある街で出会って早々に喧嘩腰になるバクト公爵とドクター・フロスト。
 たまたま二人して同じ街に来てしまったようだ。

「いつも鉱山の研究所に引きこもってるものと思ってたんだがな」
「俺だって研究所から出てくることぐらいある」
「確かにな。この間はフォーレスの森で弟まで連れて暴れてたと聞いたが?」

 フォーレスの森でのマカロン救出騒動はバクト公爵の耳にも入っていた。

「ラルフルのことは実力を信じているからある程度は放置できるが、マカロンは長い間魔王軍に囚われていたから心配だったか?」
「……今度余計なことを言えばその口に"グレネード"ぶち込んでやる」
「あの爆弾のことか? 粗暴な科学者には似合いの語り口だな」

 バクト公爵はドクター・フロストの内心をえぐるように嫌味を吐く。

「そういえば最近ラルフルとミリアが付き合い始めたんだっけな~? それはどー思うよ~? 公爵様~?」
「……貴様、口を縫い合わせて二度と開かないようにされたいか?」
「医学をかじってる人間が言うと怖いね~」

 ドクター・フロストも仕返しとばかりにバクト公爵の痛いところを突く。

「お前がこの街に来たのも新しい医療器具でも買いに来たってところか?」
「ああ、そうだ。この国じゃここぐらいでしかまともな医療器具が買えん」

 二人が訪れている街は治安はあまりよくない。しかしだからこそ法の目をかいくぐり、普通の手段では手に入らないものを手に入れることもできる。
 ルクガイア王国では"回復魔法"は発展しているが、"医療技術"はあまり進んでいない。バクト公爵は医学にも精通しており、そのための医療器具を買いにやってきたようだ。

「そういう貴様は兵器でも売りに来たか?」
「まーな。この街以外の連中には俺の兵器の崇高さが理解できねーからよ~」

 ドクター・フロストの目的は自らが作成した武器の販売だった。作成したものの中ではかなりレベルの低い物ばかりだが、それでも単純な剣や槍よりも強力な武器の数々をドクター・フロストは市場に流していた。

「そういうことなら丁度いい。貴様にいくつか注文したいものがある」

 そう言ってバクト公爵は素早く書いたメモをドクター・フロストに渡した。

「なになに~? "自動拳銃"に"グレネード"に"チェーンソー"に……って結構あるな。黒陽帝国からの密輸だけじゃ物足りないか?」
「あそこの品は質が悪い。貴様から買う方がまだマシだ」

 バクト公爵の注文を見てドクター・フロストは少し驚いたが、バクト公爵の"個人の目的"を思い出して、それ以上は言及しなかった。

「なら取引だ。お前が持ってる軟膏とかの薬をいくつかこっちによこせ。そしたら安くしてやるよ」
「フン、フレイム用か。いいだろう。それで勘定をまけてくれるならな」

 ドクター・フロストもバクト公爵に取引を持ち掛けて、お互いそれに応じる。

「取引成立だな。お前が俺の兵器をどう使うかなんてお前の勝手だが、アシがつくような真似だけはするな?」
「貴様こそ、派手に暴れてこの国を滅ぼすような真似だけはするなよ?」

 お互いにお互いの動きがバレないように釘を刺しあう。

「そういえば今王都の方は何やら騒がしいみたいだな」
「ガルペラ侯爵がスタアラ魔法聖堂と協定を結んだせいで、腐れ貴族共が浮足立ってるんだろ」
「いや、それだけじゃねーだろ。噂じゃ大物の凱旋だとかよ~?」

 ドクター・フロストはバクト公爵に軽く尋ねた。

「……ロギウス殿下が王宮に来るそうだ」
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