R18)社長室のキスで異世界転移パイロットになった私は、敵方・イケメン僕キャラ総帥に狂愛されて困っています【連載版】

K.A.

文字の大きさ
15 / 32
『生贄』同然? 異世界で総帥の妻にされて困っています?!?

(6)-(1)

しおりを挟む
 セレブ。それが、自身に与えられた称号なら、ほとんどの人が喜ぶと思う。
 テレビとかネット記事とかで見る、セレブな人々の華やかな生活にはもちろん憧れるし、漫画やアニメに描かれた素敵過ぎる高貴なお方が、自身だったらよいと妄想した事は何度もある。

 ゲームのステータス画面が現実で表示できるとして、目の前に『セレブ』という文字があったら、すっごく偉い人の印籠いんろうを見せられた時みたいに、こうべを垂れて、平身低頭して許しをこうぐらいになってしまう展開だってあり得る。
 リストラ候補の事務用品棚係、天王寺有栖は、自分のハンカチを取り出して、お靴をいきなり磨かせていただくような露骨な行動はした事がないが、セレブな称号らしき人に会うと、いつも緊張していた。
 そんな私が、セレブに――

 お金持ちな上に、社会的地位もあって、さらに熱い熱い熱い愛をくれる男性とのラブストーリー。現代日本で好んで読んでいた、恋愛小説の様々な文章が、頭の中に浮かんでは消え、また浮かんでくる。

「ふう……社長、先にソファに座ってもいいですか? 旦那さまである社長に、お茶の支度をしていただいているのに、妻の私が先に休ませてもらうのは、申し訳ないと思うのですが……このままでは、物語の中の貴族さまの女性のようにフラフラとして、アレ~と叫びながら倒れてしまいそうです」

「構わないよ。天王寺先輩を休ませる為に、仕事を切りあげて帰宅したんだ。薬湯茶やくとうちゃの用意ができるまで、ソファで休んでいて。お茶菓子の選択は、夫である僕に任せてもらってよいかな?」

 旦那さまの許しを得られたので、ソファへと足を向けた。
 腰をおろして膝に手を置く。
 豪奢なドレスをにつけている事が不相応と思われないよう、上流階級のしゅくさまを見せる。
 青色が美しい、今日のドレスに似合うと言われながら、装いの一つのように加えられた香水の匂いが、まだほのかに漂っている。

 本当は今頃、晩餐会に出席予定だったので、社長も正装のまま。着替えるわずかな時間よりも、私の身体の事を大切にしてくれている。とても愛されているという実感は、もちろんあるのだけど――

「お願いします。社長がいいなと思うお菓子、楽しみにしています。だって、私のいとしの旦那さまが選んでくれたお菓子ですから。ふう……今日は、朝から忙しかったです。次から次へと主要都市の市長がやって来るんですから。早めのランチ、普通の時間のランチ、遅めのランチ、それぞれ軽くずつしか食べられないなんて。お茶の時間も、今後の公務のお話ばかり。リストラ候補の事務用品棚係だった頃は、職場で干されていたぐらいだったのに、ジェネの総帥の妻となると、毎日がお仕事でいっぱいです」

 ソファ前の白いテーブルに、薬湯茶やくとうちゃの入ったポットと受け皿の上で裏返されたカップが置かれる。旦那さまである社長が一つ一つ丁寧に並べてくれた。ティースプーンを扱う時まで優しい手つきなので、思わずその手に私自身が触れてほしくなったけど我慢した。
 私は、この世界ファウンテで、ジェネの総帥エリオット・ジールゲンの妻になったのだから、トップなセレブと名乗っても問題ない。もう、事務用品棚係の気分ではいられない。控え目な女性の態度を貫く。

「疲労回復にとても効果がある薬湯茶やくとうちゃを選んでみた。僕の仕事に付き合わせてばかりですまない。しかし、天王寺先輩と一時いっときでも離れると考えるだけで苦しいと感じてしまって……そして、僕の支配するこのファウンテのすべての人間に、美しい妻の姿を見せつけたくて、君を連れ回している事を許してほしい」

 私、天王寺有栖の婚姻劇は、世界を恐怖におとしいれる大魔王さまの生贄いけにえになるようなものだった。
 現代日本から、このファウンテの地に召喚されたところから物語は始まる。
 アリストと融合できる存在であった私は、彼女の肉体と一つになった。髪の色が赤い事を除けば、私そっくりの女性であるアリストは女英雄。聖戦後、生体休眠の刑に処されてしまったアリストの肉体を、社長の一族が代々管理してきた。

「そういえば、天王寺先輩をさらい、クラティアのパイロットとして酷使していた薄汚い連中は、辺境で元気にやっているそうだ。僕の妻に近づかないよう、今後も管理を徹底させるつもりだが、君のたってのお願いを無下むげにはしないさ。ふふふ」

 そう言いながら、社長は私の横に腰をおろした。そして、肩にゆっくりと手を回してきた。なかば強引に抱き寄せられ、気づけば唇を奪われていた。
 罪の意識を感じながら、口の中に入ってきた社長の舌に自分の舌を絡めた。
 互いに、厚さと熱さを感じ合うように愛撫あいぶする。
 よだれがはねる、ぺちゃぺちゃという音が響き、私を抱く社長の腕にさらに力が入る。
 社長は、ムキになっているのだと思う。妻のお願い事だったので、ジェネに敵意を見せていた人たちに恩赦を与えてくれたけど、面白くないのだろう。
 胸の上に社長の手が置かれ、そのまままれる。

「ん……んん……んんんっ!」

 このファウンテの地で、大魔王さまも同然のジェネの総帥である社長と二人きりなのだ。どれほどむごい目にあわされたとしても、当然というもの。
 肩に回されていた手が、頭の方に移動し、押さえつけられる。さらに体重をかけられ、ソファの背もたれとクッションの間に挟まれ拘束された。
 まったく抵抗できないほど、社長の舌が、口の奥深くまで入り込んでいる。呼吸をするのに本気で困っている素振そぶりを見せて、やっと、その激しい口づけの時間が終わりを告げた。

「……強引過ぎて、すまなかった。君は、よだれの一滴まで僕のものになったのだと、身体の方に分からせてやろうと思ってね。ふふ。あの時、天王寺先輩がみずかを差し出してくれて嬉しかった。おぼえているよ。薄汚い連中の方を振り返らず、僕の腕の中に飛び込んできてくれた時の事」

「……はい。空中戦艦イレイサを出撃させるようなお手間を取らせてしまい申し訳ありませんでした。残りの人生は、社長とジェネの為にすべてを捧げますので……あの、その……薄汚い……連中を、辺境開拓の労働員として手厚い条件で雇用し続けてください。リストラは、だめです……あ……あ……社長、ドレスの上からでも、胸の先をさわられると、少し、感じてしまうので……その、あの……ああっ!」

「おや。ドレスの上からでは嫌だったのかと思い、中に手を入れさせてもらったが、どうかな? 君の胸の先が、今感じている心地を素直に伝えてほしい。僕は、薄汚い連中にさいなまれていた事を、すべて忘れさせてやりたいと考えている。そう、すべて――」

「あ……社長……胸をまれると……あは……はあ、はあ……い、いえ……わ、私は……薄汚い……連中の事は、ずっと忘れていました……あはっ! そ、そんなに激しく……胸をまないで……はあ、はあ……こんな時に、首をさわられると、おかしな気分になってしまいます……はあ、はあ……社長のお話にお答えしただけで、私は、ジェネの総帥の妻として、いつも……あっ! あ、あ……ド、ドレスを急にめくらないでください! 社長っ! ブラジャーをめくらないで……む、胸が出てしまっています! ああっ! 胸の先を、めないで……あはんっ!」

 みんなは、どうしているのか。ナンナンは、元気なのだろうか。本当に無事なのだろうか。そんな想いを胸の内にかかえていたのが、見透かされたのかもしれない。社長の執拗しつような胸への攻撃はやまず、そのまま快楽の海へと沈められてしまいそうだった。深い底に達し、光も音もなく、入ってくる情報もない。およぼす力が、身体だけでなく、心の方も潰そうとあつをかけてくる。

「あは、あは……え……あ……社長、やめて……それ以上、手を、下の方に動かすと……あの……スカートに……あああ……おなかの上で、手を回さないでください……はあ、はあ……」

 私は、この海にを沈めるしかない。生贄いけにえになったのだから、浮かんできてはいけない。ソファの上に押し倒されても、抵抗する事は許されていない。
 社長は、床に膝をつく格好になっている。
 ソファの上の私は、祭壇の上の捧げもの同然。ドレスのスカートの中に社長の手が入ってきても、逃げる事は許されていない。ただ、仕留しとめられる側として、この遊猟のきょうをより華やかにする為の叫びをあげる事が求められている。
 ファウンテの大魔王さまに捧げられる生贄いけにえは、そういうやくを演じるしかないという事。

「あ……あ……社長……ブラジャーの上で、指を動かさないでください……あの……そんなに何度も、指を動かされると、変な気持ちに……あっ! あ、あ、あ、あ……ゆ、ゆび……指、ブラジャーの中に入っています……社長……あの……あっ! あ、あ、あ、あっ!」

 頬に触れた指が、静かに移動して、首をってから胸を護る下着のところにやってきたのだ。胸の下側までおおう、ミドリフ丈のブラジャーなので、荒い動きを与えられても簡単には外れない。それが、いかにももてあそばれているという感じで、捧げものとして扱われていると思わされる。
 胸の膨らみをでられただけで、自分が女なのだと実感させられる声を、何度も何度もあげてしまう。敏感な部分をいじられているのだから、何の反応もしない方がどうかしている……そう思いたい。

「用意した薬湯茶やくとうちゃは、少し冷ました方が効果があがるものだ。適温になるまで待っている間、愛する妻である天王寺先輩が暇を持て余すといけないと思ってね。おやおや。下着が濡れてしまったようだ。風邪を引くといけないので脱いでしまった方がいい」

「え……あ……下着……ショーツを脱いでしまうと、寒くて風邪を引いてしまうかもしれないので……ああ……ショーツを外さないで……つ、妻からのお願いです……温かくしていないと、風邪を引い……て……ひぃ……あ、あ……く……くんっ! あ、あ、社長……な、めないでください……はあ、はあ……ショーツがないのに、めないでください……く、くんっ!」

 社長の舌がびている熱が、私の大切な部分に伝わってくる。湯がたぎるように、心の温度がどんどんあがっていく。
 無理な格好をさせて、私がソファから落ちないように、腕を押しあて護りながら責めてくる社長の優しさと激しさに、冷めるという言葉を忘れてしまいたくなる。
 顔をわずかに動かすと、テーブルの上のティーセットが目に入った。
 さっき、社長と何を話していたか思い出せない。適当な心の温度を保つ事がどうにもできない。

「あは……あは……社長……そこ、くりとりすです……はあ、はあ……そこ、やめて……おかしな気持ちになってしま……う……あ、あ、あ、あ、あ! し、舌で……舌で、突かないでください……あは……あ……ああっ! また、そこ、つ……つ、潰すみたいに、め……なめ……そこ、くりとりすです……あ、あはは……ひっ! え……あ……な、何を……あぁああっ! ま、まさか、吸って……そこ、吸っ……て……あは、あは……あはっ!」

「……ふ。我が妻は、そこを吸ってやると、本当に愛らしいさまを見せてくれる。足を揺らす事で、心地よさを表現してくれているようだったが、僕に吸われた時にどのような表情をしていたか見えなくて残念だよ。仕方がない。天王寺先輩の大切な部分をでてやってすぐのこの口、君の顔に近づけさせてもらうか。先ほど甘い声を発していた時の面持おももちを教えて……」

「ふぁああああ……社長、頬を何度もぺろぺろしないでください……私、下をでていただいてすぐで、変な気持ちになりやすいんです……ふぁああ……おでこまでぺろぺろしないでください……み、耳のあたりまでぺろぺろって……あふ……」

 社長の顔が離れ、舌での愛撫あいぶが終わる。
 それを残念に思う自分がいる。
 人質を取られ、その命の保証を条件として妻にされたとはいえ、ファウンテの人々を苦しめるジェネの総帥エリオット・ジールゲンの愛に溺れようとしている事に対して、罪悪感をおぼえてしまう。
 よき奥方さまの姿を見せ続けなければ人質がどうなるか分からないという大義名分があるけど、快楽に絡め取られ、敵にもてあそばれ、欲望をさらけ出している私を見たら、みんなはどう思うのだろう。

「薄汚い連中の事、僕の許可なく思い出すなんてしないでほしい。君が、本当に、奴らの事を忘れられるように仕向けなければいけなくなってしまうから――ね?」

 耳もとに悪魔の吐き出した息がかかる。
 甘酸っぱい香りをまとう妖気が、あたりに漂う。
 みんなの為に生贄いけにえになった私は、この悪魔に喰われて自身は消えてしまう事が望まれている。そうだ。そうしなくては……それが正しいんだ。
 この物語のヒロインを演じるなら、それがさだめ。向かうべき唯一の結末。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

×一夜の過ち→◎毎晩大正解!

名乃坂
恋愛
一夜の過ちを犯した相手が不幸にもたまたまヤンデレストーカー男だったヒロインのお話です。

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...