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『祝・採用』、イコール『強制連行決定!』で困っています

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「きゅ、きゅあぁああ……あ、あ、あ……ああっ!」

 足を大きく開かれていないのに、指を使ったしつこい愛撫あいぶの波に、私の『好き』が消されていく。押し寄せた波には、社長の狂った愛がたっぷりとけ込んでいて、私を呑もうとしてくる。

「はは……あはははっ! アリス姉さん、胸をでてやるのをおろそかにしていてすまなかった! 感じてきて、たえられないと思ったら、腕を激しく動かしていいんだよ。ふふ……」

 社長は、しばらくぶりに口を開いた。だけど、すぐに口を閉じた。私の胸の先を挟み込んで。

「う……うぅ……あ、あ、あああ……や、やめて……社長……む、胸……胸を、くわえないで……あああああ!」

 社長の舌と唇のわずかな動きが、たくさんの惑いを生み出し、私からいろいろなものを奪おうとしてくる。胸を挟まれ、吸われ、められ――でも、腕を動かす事ができない。

「ひ……」

 手のひらでおなかをでられ、胸への刺激とは違った感情から生じたものがみなもとになり、声をあげてしまった。
 社長は、ひもの結び目に指を軽く引っかけたあと、私のおなかの上で円を描くように手のひらを動かした。そして、指を一本ずつゆっくりと揺らすように、足の付け根の上まで移動させてくる。
 何をされているか、しっかり理解できていても、逆らう事ができない。このあと、再び大切な部分をいじられたら、自分はどうなってしまうのだろうと怯えるばかりで何もできない。ひもほどけてしまったらというルールが頭をよぎる。

「……あ……あ……も、ももでないで……社長……太腿ふとももでないで……あは……あっ! く……くんっ! い、いやぁあ……む、胸の先を、めるなんて……きゅ、急にめるなんて……ひきょう……な……あは……くんっ!」

 膝上に置かれた社長の手のひらが、ゆっくりと動いている。胸の谷間に押しあてられた社長の舌が、ゆっくりと動いている。
 上半身への刺激は、敏感な胸の先に移動する事があるのに、下半身の方は、膝とももを代わりばんこにさわられるだけ。そのちぐはぐさに、妙な苛立いらだちをおぼえてしまっているのには気づいていたけど、これは確実に、社長の作戦だ。罠にはまらないよう、頭の中の考えたちを持ち場に戻し整理整頓しようとしたけど、二の腕を指でられた事で、その作業が中断させられる。
 興奮が抑えられず、腕を動かしてしまった。

「……あ……ひもが、ほどけてしまう……」

 ひもは、あっさりとほどけた。

「あ……社長……いきなり、胸をつかんで……まないで……あ……ブ、ブラウス……脱がさないで……お願い……やめて……」

 おなかとの境目の素肌は、片腕を抜かれたブラウスで、ほんの少しだけ護られていた。社長の手の位置によっては、足の付け根あたりがもろに見える事からも護ってくれていたのに、履歴書を持ってここに来る前に袖を通したばかりだったそれが、床に落とされた。身体をつかまれ、私もゆっくりと床に落とされる。

「キュロットパンツでできた足枷がなくても、君は、もう僕の手から逃げられない」

 枷だったキュロットパンツから足が抜かれる。自由を得る事なく、そのまま足を大きく開かれた。
 怯えた感情を表現しようと言葉をつむぐ前に、社長の舌が、私の割れているところに触れていて、女としての叫びをあげさせられる。

「あ、あ、あ、あ、あん! あん! あんっ! く……あんっ!」

 社長の狂った愛に心も身体も巻かれて、激しい力でどこか遠くまで連れ去られそうになる。『好き』なんて、とうに消されていたのかもしれない。
 お尻が床にしっかりとついていない。膝が曲がっているのに、足の裏やつま先が床にしっかりとついていない。身体が、揺れ動く。

「うぁああああ……しゃ、社長……社長っ! 舌っ! 舌を、入れているの! 入れているの!」

 大切な部分の割れ目が、温かく湿った感覚を伴って、グググッと強く押される……返事の代わりなのだろうか……
 私は、それに対してまともな言葉で返事ができず、細かい間隔で喘ぎ声をあげるしかない。
 苦しさを漏らそうとしているはずなのに、声を外に出す瞬間の息が甘く感じられる。社長にもてあそばれている事を嫌がっていないと認めるしかなくなってきて、さらに苦しくなる。
 口の中が甘さで満たされていく。おかしな様子になってくる。脳みそに届く刺激が、壊れていく。

「しゃ、社長っ! し、舌で……あっ! あ、あ、あはっ! あはんっ! く……りと……りす……なめない……で……あは、あは……あは、あはっ!」

 社長の返事代わりは、私の足をさらに大きく開くというものだった。しかも、私の大切な部分をめながら。

「はぁん、あん……あは……やめて……社長……これ以上、大きな波がきたら……私、消されてしま……う……あ、あんっ! あんっ! ひ、膝をでないで……は、はぁん……指先で、膝を刺激しないで……うぁ! くんっ! くんっ! い、いやぁ……割れているところに、舌を入れない……で……くんっ!」

「……僕と結婚してください」

 刺激が突然止まり、社長の声が耳に入り、あまりに唐突で内容は理解できてもしっかりと意図をめず、「え?」と言ってしまった。すぐに、指を使った大切な部分への刺激が始まり、逆らう事が許されない状態に戻されてしまう。

「浜でデートをした時、砂に書いた言葉。ガイドブックの案内通り、あの場では、互いに伝えず内緒にしたが言いたかった。アリス姉さん、僕と結婚してください。婚姻届ではないが、永久就職のあかしとして、直筆サイン入りの履歴書をもらったので、入れるよ」

 社長の言わんとする事を理解した瞬間、今からすべてを奪われると気づきぞっとした。仲間のところに戻る自由はもちろん、現代日本がある世界に社長と一緒に帰りたいという願いも、そして、純潔も、すべて奪われる。
 身体をよじる程度の抵抗をこころみる前に、右足に引っかかったままだったショーツを押さえつけられる。社長の膝が、無理な角度で割り込んできた形になった。
 マントを羽織っているので、社長の様子をすべて知る事ができないけど、明らかに腕を動かしている。
 カシャ、とベルトが外れるような音が聞こえ、続いてファスナーを動かすような音がした。
 マントにくるまれた社長が、腰を斜めにするような動きをした時、ショーツの押さえつけ拘束から解放されたけど、逃げるもなく、両腕をつかまれた。

「……あ……あ……ああっ!」

 社長が羽織るマントに、身体がおおわれた。やわらかで上品な触れ心地という言葉が相応しそうな織物が、さらされたままの素肌にあたる。リストラ候補の事務用品棚係の身分では、高価過ぎて手が出ない寝具の生地につつまれたような気がして……今起こっている現実がより恐ろしくなってきた。

 もう逃げられないという意味を分からせてやろうと思ったのか、社長の舌が、不意に私の頬に触れてきた。刺激は、そのままあごに渡って、首を通過し、胸の谷間まで移動する。
 声をあげずたえるつもりだったけど、胸の膨らみをぺろぺろと細かい動きでめられ、結局、「あ……」と言ってしまった。それを合図と受け取ったみたいに、社長は、膝を使って私の足をさらに開いてきた。

 いつのにか足首から外されたぐしょぐしょのショーツが、視界に飛び込んでくる。
 私の身体からあふれたものを吸ったショーツが、社長に握られている。

 拘束の力が弱まっていると理解できていても、動けない……

「アリス姉さんが感じている様子をたくさん楽しませてもらったから、僕のものは、もう準備ができている。僕の手の中のこれ、君の大切な部分も、しっかり濡れているんだろ――」

 あ、あてがわれている! あてがわれている! しゃ、社長の大切なものの先が、あてがわれている!
 緊張が、脳みその中で、快楽の極みとして誤変換された。
 心の底から悦ぶような笑顔を浮かべながら、社長は、足の付け根に指を走らせてきた。
 指先で、軽く肌に触れられただけなのに、社長に貫かれる直前だと悟らされ、温かいものが割れ目からあふれてくる。

「……あ……や、やめて……だ、だめ……入れられたら、私……すべてが、おかしくなってしまう……狂ってしまうかもしれない……好き……社長の事は好き……だけど、狂ってしまうのは……怖い……だから、だめ……やめて……社長の愛に呑まれてしまったら……狂ってしまうかもしれない……だから、やめて……」

「ふ。僕の狂った愛に呑み込まれてほしい。アリス姉さん、何も心配する事はない。僕も、君の事が好き。僕の――ジェネの総帥の妻になってくれ。生涯、君をでる事を誓う。共に、世界の破滅を望もう。さあ、僕と心を合わせて。二人は最高のパートナーになるんだ」

 触れ心地が、舌や指とは違うもの。私の大切な部分が、それに裂かれると覚悟した瞬間――

「な……爆発……くっ! クリプ式の炸裂音……薄汚い連中か……こんな時に……」

 こんな時に……私の仲間たちが助けにきてくれた!
 私の仲間たちが先にこれば勝ち。ジェネの者たちが先にこれば負けという、単純なゲームルールが敷かれた状況――勝利をこの手にできそう!
 戦闘が始まったと強く感じ、アリストの意識が表面化した。おかげで緩んでいた社長の手をのける事ができた。

 私を取り押さえようとしたけど、社長、上手に動けなかったのでは……?
 特に、下半身。
 マントに隠れていてはっきり見えませんでしたけど、ズボンが足に引っかかりましたよね? しかも、威嚇の為に銃を手にしようとしたけど、思った位置になかったのでは? ベルトが揺れる音だけが聞こえましたよ。

「……私、社長が好きです! でも、やっぱり、社長に肩を見られると恥ずかしいんです。プレゼントしてください。そのマントをプレゼントしてください!」

「え? あ……アリス姉さん?」

 私の思わぬ発言と行動に、社長は、面食らってくれた。事務用品棚係でも、社長に、「隙あり! エイっ!」とお仕置きパンチができそうな気がしたぐらい。気がしたぐらいで、実際に事務用品棚係がおバカをするほど余裕はない。だから、アリストの意識に頑張ってもらう。
 留め具を外し、社長からマントを奪い取る事に成功した。高級カーテンみたいなマントを羽織り、その足で窓の方へ走る。

「ま……待っ……あ……」

 社長の「あ……」の意味が何となく分かったけど、考えを具体的に脳みその中に描く前に、窓の外に出られた。傾きが緩い屋根で、どうにか歩いて逃げられる。庭に仲間たちの姿が見えているので、よたよたした足取りでも、たしかな前進になりそうだ。

「アリス姉さん! アリス姉さん!」

 狙撃などを警戒して、角度や位置を気にしているんだろう。さすがの社長も、屋根まで追ってこない……いや……予想外の動きをする事になり、ファスナーが壊れてしまった。それにより、屋根に出てこられない。
 ……事務用品棚係の心、落ち着け!

「私は、大丈夫! 今、そこの茂みに飛び込むから……あっ! 右っ! 気をつけて……この出版社の人だ……狙っている奴がいるわ!」

 マントをしっかりと身体に巻きつけ、茂みに飛び込んだ。

「アリス姉さん……アリス姉さん……」

 社長の声が聞こえるけど小さい。そのまま、社長の姿を見る事なく、出版社の建物をあとにする。
 仲間たちと合流できた私は、ジェネの息がかかったティンテの街を無事に脱出。
 マントは、素材もよく、身体に上手に絡めたら、意外とよい服代わりになったけど、持ち主が持ち主なので、普通にそういう理由で捨てさせてもらった。
 社長、カーディガンは、防虫剤やら湿気取りやらで厳重ガードして、タンスに入れてありますから。マントもプレゼントとしてもらったつもりですが、ごめんなさい。

 あと、ごめんなさい。
 ボクサータイプと思われる灰色のやつ、マントを奪った時に見てしまいました。今日はおぱんつの色がお揃いでしたね。

 ジェネの総帥である社長に、事務用品棚係の『好き』パワーごときで、どうやって人道的になってもらうか――どうにかなるのか不安でしたが、狂った愛に呑み込まれず、波を乗りこなせる気がしてきました。社長だって、時には感情に流されてしまう人間みたいですから。
 というか、社長。
 私と二人きりだと、前しか見えなくなっちゃうのが可愛い。また私を取り逃がしてくれたし。小さな子供が泣いてる時みたいに、よしよししたくなっちゃうようなミスをしてくれる。隙だらけになっちゃう。
 うん。きっと勝てる!
 社長が社長に戻ってくれたら、『社長が遊んでほしそうに、こっちを見ている』に、私の方から手を伸ばしますからね。

 あ……もう一つ、ごめんなさい。
 おぱんつの前穴からぴょこっと出る……社長の大切なもの、見てしまいました。男の人のものがそんな状態になるのを、もちろん、生まれて初めて見ました。
 かたそうで、伸びていた。
 はっ! いけない!
 脱出の際は、思い出さないように脳みそ止まれができたけど、事務用品棚係の心が強い今、あのぴょこっと出た社長の大切なもの、頭から離れない! 大きかったです……ごめんなさい!
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