めざせ魔獣博士!!~筆は剣より強し~

暇人太一

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第1章 転生からの逃亡

第4話 天才爆誕

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 俺は【観見かんみの魔眼】に決めた。

 補助系魔眼の最大の特徴は、どれを選んでも視力の向上を図れるというところだ。
 それでいて能力系とは違い失明のリスクもない。遠慮せず使い倒せる。

 加えて、【観見の魔眼】には本質を見極めるという固有の能力がある。
 具体的には洞察による悪意や本質の看破。動体視力を向上させることで動きを模倣し、予知じみた行動予測が可能になるらしい。

 どこかで聞いたことがあるような気がしないでもないが、特殊な攻撃ができないおかげで失明はしない。移植も必要ない。
 一つ注意するなら、目が良すぎることだろう。

 某大佐のように「目がっ! 目がーーっ!」と、言わずに済むようにしなければ。

 ちなみに暗視の効果もあるらしい。
 これで三〇ポイントとか……買うしかない!

「――んっ? あれ? 売り切れ?」

 選択したのにポイントが減らない。
 つまり変えないということか?

『おめでとうございます。唯一の上位人族ということで、ポイントが全額還元されました。特に強力な能力がある魔眼でもございませんので。では、引き続き設定をお楽しみ下さい』

「……マジか。ありがとうございますっ!」

 チャットで質問しようとしていたところに先んじて説明をいただいたけど、まさかの内容だった。
 他の人にバレないようにチャット画面以外に表示してくれるという気遣いに、俺がマイノリティ側であることも教えてくれるというありがたい情報も伝えてくれた。
 感謝しかない。

 今日から俺は、生命神信徒だ。

「三〇ポイント分、何に使おうかな」

 取扱説明書のおかげで分かっていることは優先したいから、それ以外で転生後に困らないようにしなければ。

 優先事項は、才能として扱われているスキルに、テイムセット、種族変更特典により安くなったスキルの取得だ。
 エルモアールの人間は五歳になると教会でステータスを獲得し、初級職業を授与されるらしい。

 そのときにステータスに表示されているスキルや、属性魔法が才能として扱われているそうだ。
 特に属性魔法は先天的に持っていないと一生使えないらしい。
 魔力のコントロールで全ての魔法を使えるという絵空事は存在せず、所持している属性に関した魔法のみ使用可能で、生活魔法も同様らしい。

「あなたは火属性魔法を持っていますね? 一番最初の生活魔法取得は無料です。《着火》などはいかかですか?」

 と言われている五歳児の映像が脳内に流れている。
 きっと天界から下界を覗いていたときの映像だろう。とても助かっています。

 剣と魔法の世界に来て魔法が使えないって、中世ヨーロッパにタイムスリップするのと変わらないじゃん。
 一応救済措置は存在するらしいけど、奇跡のようなものらしいから取れるときに取っておこう。

 次は先天的か後天的かで成長速度が変わったり、特殊な病気になったりを防ぐために必須の基礎スキルの取得だ。
 基礎スキルは隠れ才能スキルと一部の人たちに認識されていると、取説様が仰っている。

 全部で四つある内の二つは、魔法に関するスキルで病気を防ぐためには必須だ。
 まずは【魔力感知】。自分や周囲の魔力、大気になどの自然に含まれる魔素を感知し把握する。
 魔法発動はもちろんのこと、各種魔法的知覚の基礎に必須のスキルだ。
 次は【魔力操作】。魔法関連の根幹となるスキルで、属性魔法のレベルにも影響するらしい。

 では、何故病気云々という話になるのか?
 どちらも特殊なスキルではないのに。

 答えは魔力量にある。

 【魔力操作】のレベルと魔力量のバランスにより属性魔法のレベルが決まるらしいのだが、魔力量が魔力操作のレベルを上回った場合、コントロールができずに暴走してしまうことがあるらしい。
 最悪死に至り、生き残っても障害を負って魔法が使用できなくなってしまうらしい。

 上流階級が得意気に行う魔力上げのせいで、絶叫しながら爆死している子どものグロシーンが脳内を駆け抜けていく。
 死んだのは人族以外の奴隷だったから余計に胸糞悪い。

「ふぅ……」

 気持ちを落ち着けた後は、レベルを決めていく。
 というのも、今回上位人族にしたおかげで元気量と魔力量が三〇〇ずつ増えたのだ。嬉しい反面、スキルレベルを上げざるを得なくなってしまったのは正直痛い。

 とりあえずメモ欄に予定のレベルとポイントの残りを書いておいて次に進む。

 あと二つの隠れ才能スキルは、【身体強化】と【闘気操作】だ。
 片方は分かる。
 定番のスキルだもん。
 無属性魔法のスキルが必要だというところ以外は、ラノベに登場する能力とほぼ同じ。
 王城行きを選んだ人は無料で配られ、愚か者たちは強制的に付与された後にポイントを徴収されるそうだ。

 無職はいるらしいけど無属性魔法を持ってない人はいないから、迫害防止のための措置らしい。
 なお、無職の者は刑罰の一種らしい。
 神前裁判なるものがあり、神様の勘気に触れると何もかも没収されて余生を過ごすことになるという。……怖っ。

 話を戻そう。
 もう一つのスキルはよく分からないのだけど、元気量に関係しているということは分かる。
 元気量と魔力量はHPとMPの関係ではなく、それぞれエネルギー残量になっている。さらに、量自体が抵抗力や回復力の高さを表しているらしい。

 語尾が「らしい」ばかりになってしまうが、知らないはずのことがまるで知っていることかのように思い出せるという不思議な現象は、脳内で誰かが説明しているように感じてしまって落ち着かない。
 それも映像付きという夢でも見ている気分になる。

 ただこの思い出すという行為はなかなか厄介だ。

 思い出せないときに言いがちな「あれって何だっけ?」とか、関連していることを思い出しているけど、その先が思い出せない。そしてあるとき急に思い出す。
 その関連していることが思い出すことに必要らしく、全く知らないことだと触りの部分しか思い出せない。

 結果、ほとんど分からない。

 【気功】は別であったから違うことは分かっている。
 だから、取るだけ取って放置することに決めた。時間も少なくなってきているから、さっさと次に行こう。

 続いて、テイムセットという神様の悪戯を取得しよう。
 この悪戯は取説様がなかったら気づかなかった。それほど憎たらしい罠だった。

 【テイム】、モフモフ好きには必須のスキル。
 もちろん、他の生物にも使用できる夢のすきるだ。……契約できれば。

 そう、契約をする必要がある。

 【テイム】は契約用のスキル。
 知らない人は異世界系の作品とは無縁の人かもしれないほど有名なスキルだ。

「じゃあ大丈夫じゃん」

 と思ったそこの君っ!
 君はテイムできないっ!
 何故なら契約交渉の場に魔獣が来ないから!

 【魔獣親和】という意思疎通に補正がつくスキルを持つことで、基本的に全て敵認定してくる魔獣の本能に割り込めるようになるらしい。
 精霊も同様で、【精霊親和】スキルなるものが必要になるらしい。

 このスキルが同じカテゴリに置いてあれば気づく人も多いかもしれないけど、わざわざ別のカテゴリに置いているのだ。

 絶対はめるつもりだったろっ!

 取説様ありがとうございます。
 そして取説様を用意してくれた女神様にも感謝をっ。

「さすがにポイントが減ってきたなー」

 あとは種族変更特典の割引スキルかな。
 内、光属性魔法と闇属性魔法は属性魔法を取得したときに選択済みだから、あと一つだけだ。
 こちらも定番のスキル。
 その名も【鑑定】。

 特に言うことはないだろう。
 半額になっていたのは助かったけど。
 最後は【魔力感知】と【魔力操作】のレベルを考慮しつつ、残り全てを【偽装】に注ぎ込んだ。

 だってアバターの魔眼が光っているんだもん。
 水色というか、宝石のインディゴライトトルマリンのように深みがある水色の虹彩で、能力発動時は発光するという目立ち具合。

 ――ヤバいだろぉっ!

 もうノックアウト寸前です。
 奴隷街道を逸れるように一生懸命考えて来たのに、「其方の瞳が欲しいですわ」とか言われそうな魔眼とか……。

 頭を捻り取説様とともに導き出した答えが【偽装】だった。
 女神様からの御礼で【鑑定妨害】をもらっていたから、それを組み合わせて鑑定を阻止するというチキンレースで奴隷回避をすることに。

 結果、こうなった。


【名 前】ソウマ・ハヤシダ
【年 齢】15歳
【性 別】男性
【種 族】上位人族
【職 業】魔獣学者
【レベル】15
【状 態】健康
【従 魔】不可

【元気量】400
【魔力量】400
【ギフト】
【スキル】
〈固 有〉観見の魔眼
     魔獣図鑑
〈常 時〉頑強:1
     精神耐性:4
     苦痛耐性:5
     魅了耐性:5
     鑑定妨害:5
〈任 意〉魔力感知:4
     魔力操作:5
     闘気操作:1
     身体強化:1
     気配察知:3
     気配遮断:3
     索敵:1  隠形:1
     解析:1  筆術:1
     呼吸:4  歩法:3
     速読:4  暗記:3
     観察:3  料理:3
     鑑定:1  偽装:4
     テイム:1 魔獣親和:1
     火属性魔法:1
     風属性魔法:1
     水属性魔法:1
     土属性魔法:1
     光属性魔法:1
     闇属性魔法:1
     無属性魔法:1
 魔 法:選択不可
 称 号:異世界人  (隠蔽)
     生命神の加護(隠蔽)

 ……ヤバいかも。
 残り時間は偽装箇所を考えよう。

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