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八話
レッツゴー!ギブソン!
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———ギブソン・ゼットロック視点。
「さーって、行くか!」
学園には北側にある正門と、南側に裏門がある。
北から出て道なりに進むと王都に着く。
なので俺は南の裏門から出ていくことにした。王都に行って勇者の鉢合わせるのはマズイと考えたからだ。
学園の南には魔族がうじゃうじゃいる危険区域に続く道があり、危険区域の前には突入口と呼ばれる危険区域に入るための王国の作戦拠点が存在する。このまま真っ直ぐ進むとその突入口に辿り着くだろう。
「しっかし、良かったのかよ、おまえ」
「今更なんだよ」
やっと準備を整えて、旅に出るぞと門の前に立った俺は隣に立つ友人を見る。
すっかり旅の準備を済ませて、荷物を持ったまま俺と一緒に行く気満々だった。
「そうそう、ついさっきお前を訪ねて女子2人がやってきたぞ」
「お! まさか脈ありの女子がいたのか? 学園長とお前にしか話してなかったのに俺が出ていくって皆んな知ったのかなぁ~」
「呑気な」
「もしかして別れる前に挨拶しに来てくれたのか! 惜しいことしたなぁ~」
「ちなみに片方はリキュアな」
「リキュアちゃん? なんで?」
「んで、もう片方は銀髪で巨乳」
「………もっとわからねぇ。なんでその2人がセットで俺んとこ訪ねてくるんだよ」
「さあ? まあでも多分、銀髪巨乳の気持ちはお前ならわかるんじゃねーか? 似てるし」
「似てるかぁ?」
自分の事は自分でわからないが、そこまで似てる気しない。
けど想像してみると何となくわかった。
「あ、そうか。勝負の後なんも話さなかったからか。確かに思い返すとなんか心残りあるな」
「やっぱ似てんじゃねーか。戻るか?」
「………いや、いい。アイツなら分かってくれんだろ。俺がアイツの立場だったら何も言わず黙って見送るからな」
「ふーん。じゃ、あっちはどうする?」
「あっち?」
ライドウが指をさしたのは俺たちのいる南の門の反対側。つまり王都につながる北の門の方向だ。そこにはリムジンが置かれていて、ちょうど人が乗り込むところだった。
スーツ姿のボディガードに囲まれて乗り込むのは、俺もよく知る勇者だった。
「…………」
「どうすんだよ。見るからに落ち込んでるぞ」
「いやなんで落ち込んでんのか分からねーからどう声かけて良いか……」
乗り込む直前にリキュアちゃんが現れて、落ち込む彼女に声をかけていた。やっぱり優しいなリキュアちゃんは。自分勝手な俺とは大違いだ。
「さよならくらいは言っても良いんじゃねーか」
「あの様子だと、学園長から話を聞いたばっかだろ。出て行ったって聞いたばかりなのに俺が現れたら変な感じに……」
「ふーん。じゃ、あの子は落ち込んだままでいいって事か。後から後悔し出したら叩っ切るぞ。それでも良いんだな」
「お前俺に何して欲しいんだよ……」
「先行くぞ~」
「ちょ!」
ライドウは荷物を持って南の門から出て行った。俺のことなど気にせずにどんどん進んで行ってしまう。
俺は迷った後、後で後悔するよりもマシか、とやはり自分勝手な考えをしてリムジンの方へダッシュした。
車に乗り込んでいた彼女は気づかなかったみたいだが、リキュアちゃんが気づいてくれて、進もうとした車を止めてくれた。
そして停車したリムジンの元まで駆け寄ると、彼女が出てきた。胸に手を当てて不安そうにしながらも、顔を見ればどこか安堵している風だった。さっきまでの落ち込んでいた様子とは違っていた。
「ベニちゃん、一個言い忘れてた」
「ギブソン……」
「えーとえーと……」
頭をフル回転させるが、こんな場面初めてなのでちっとも思いつかない。そして出てきたのは至極単純なものだった。
「元気でな」
他に言うことが見つからなかった。それだけ言って、南門に向かってダッシュした。逃げるように。
もっとカッコいいこと言えたら良かった。
「ありがとー! ぐすっ、ギブソンも元気でねー! また会おうねー!」
そう後悔していたが、涙混じりの彼女の声を聞いて、胸を張って学園から出た。
▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
「しかしマジで良かったのか? お前、俺についてきて」
「どーしても俺の付いてくる理由が欲しいか?」
「いや頼りになる気心知れた奴が来てくれるなら良いに越したことはないんだが」
「俺が【陽舟島】出身だってのは知ってるよな? 海向こうの」
「当たり前だろ。それが?」
「元々俺の家は忠義に生きて忠義に死ぬようなそんな家系だったんだよ。けど、そんなので死ねるかって言って飛び出して、学園に来た」
「学園に来たって……親に言わずに学園に入ったってのか⁉︎」
「いや一応言った。つーかこの王国に来るだけで特に行く当てはなかったんだが、親は学園に俺の入園を頼み込んでたらしくてな。この王国に着いた途端学園の歓迎が待っててそのまま流れのまま~って感じだ」
「で、それとこれと何の関係が?」
「悔しい話だが血は争えないって話だ。逃げ出したはずなのにな」
「は? どーいう意味だよ」
「そのままの意味だ」
「どのままだよ! なんも明確な説明されてねーぞ⁉︎」
「今から行く突入口の名前って確かペテルギウスだったよなー、軍人とかいるんだよな。俺王国の軍事とか詳しくねーから教えてくれよ」
「話逸らすなよ! おい! 気になるじゃねーか!」
「さーって、行くか!」
学園には北側にある正門と、南側に裏門がある。
北から出て道なりに進むと王都に着く。
なので俺は南の裏門から出ていくことにした。王都に行って勇者の鉢合わせるのはマズイと考えたからだ。
学園の南には魔族がうじゃうじゃいる危険区域に続く道があり、危険区域の前には突入口と呼ばれる危険区域に入るための王国の作戦拠点が存在する。このまま真っ直ぐ進むとその突入口に辿り着くだろう。
「しっかし、良かったのかよ、おまえ」
「今更なんだよ」
やっと準備を整えて、旅に出るぞと門の前に立った俺は隣に立つ友人を見る。
すっかり旅の準備を済ませて、荷物を持ったまま俺と一緒に行く気満々だった。
「そうそう、ついさっきお前を訪ねて女子2人がやってきたぞ」
「お! まさか脈ありの女子がいたのか? 学園長とお前にしか話してなかったのに俺が出ていくって皆んな知ったのかなぁ~」
「呑気な」
「もしかして別れる前に挨拶しに来てくれたのか! 惜しいことしたなぁ~」
「ちなみに片方はリキュアな」
「リキュアちゃん? なんで?」
「んで、もう片方は銀髪で巨乳」
「………もっとわからねぇ。なんでその2人がセットで俺んとこ訪ねてくるんだよ」
「さあ? まあでも多分、銀髪巨乳の気持ちはお前ならわかるんじゃねーか? 似てるし」
「似てるかぁ?」
自分の事は自分でわからないが、そこまで似てる気しない。
けど想像してみると何となくわかった。
「あ、そうか。勝負の後なんも話さなかったからか。確かに思い返すとなんか心残りあるな」
「やっぱ似てんじゃねーか。戻るか?」
「………いや、いい。アイツなら分かってくれんだろ。俺がアイツの立場だったら何も言わず黙って見送るからな」
「ふーん。じゃ、あっちはどうする?」
「あっち?」
ライドウが指をさしたのは俺たちのいる南の門の反対側。つまり王都につながる北の門の方向だ。そこにはリムジンが置かれていて、ちょうど人が乗り込むところだった。
スーツ姿のボディガードに囲まれて乗り込むのは、俺もよく知る勇者だった。
「…………」
「どうすんだよ。見るからに落ち込んでるぞ」
「いやなんで落ち込んでんのか分からねーからどう声かけて良いか……」
乗り込む直前にリキュアちゃんが現れて、落ち込む彼女に声をかけていた。やっぱり優しいなリキュアちゃんは。自分勝手な俺とは大違いだ。
「さよならくらいは言っても良いんじゃねーか」
「あの様子だと、学園長から話を聞いたばっかだろ。出て行ったって聞いたばかりなのに俺が現れたら変な感じに……」
「ふーん。じゃ、あの子は落ち込んだままでいいって事か。後から後悔し出したら叩っ切るぞ。それでも良いんだな」
「お前俺に何して欲しいんだよ……」
「先行くぞ~」
「ちょ!」
ライドウは荷物を持って南の門から出て行った。俺のことなど気にせずにどんどん進んで行ってしまう。
俺は迷った後、後で後悔するよりもマシか、とやはり自分勝手な考えをしてリムジンの方へダッシュした。
車に乗り込んでいた彼女は気づかなかったみたいだが、リキュアちゃんが気づいてくれて、進もうとした車を止めてくれた。
そして停車したリムジンの元まで駆け寄ると、彼女が出てきた。胸に手を当てて不安そうにしながらも、顔を見ればどこか安堵している風だった。さっきまでの落ち込んでいた様子とは違っていた。
「ベニちゃん、一個言い忘れてた」
「ギブソン……」
「えーとえーと……」
頭をフル回転させるが、こんな場面初めてなのでちっとも思いつかない。そして出てきたのは至極単純なものだった。
「元気でな」
他に言うことが見つからなかった。それだけ言って、南門に向かってダッシュした。逃げるように。
もっとカッコいいこと言えたら良かった。
「ありがとー! ぐすっ、ギブソンも元気でねー! また会おうねー!」
そう後悔していたが、涙混じりの彼女の声を聞いて、胸を張って学園から出た。
▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
「しかしマジで良かったのか? お前、俺についてきて」
「どーしても俺の付いてくる理由が欲しいか?」
「いや頼りになる気心知れた奴が来てくれるなら良いに越したことはないんだが」
「俺が【陽舟島】出身だってのは知ってるよな? 海向こうの」
「当たり前だろ。それが?」
「元々俺の家は忠義に生きて忠義に死ぬようなそんな家系だったんだよ。けど、そんなので死ねるかって言って飛び出して、学園に来た」
「学園に来たって……親に言わずに学園に入ったってのか⁉︎」
「いや一応言った。つーかこの王国に来るだけで特に行く当てはなかったんだが、親は学園に俺の入園を頼み込んでたらしくてな。この王国に着いた途端学園の歓迎が待っててそのまま流れのまま~って感じだ」
「で、それとこれと何の関係が?」
「悔しい話だが血は争えないって話だ。逃げ出したはずなのにな」
「は? どーいう意味だよ」
「そのままの意味だ」
「どのままだよ! なんも明確な説明されてねーぞ⁉︎」
「今から行く突入口の名前って確かペテルギウスだったよなー、軍人とかいるんだよな。俺王国の軍事とか詳しくねーから教えてくれよ」
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