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鬼嶋の『隠れ家』は表通りから少し奥まったところにある一軒家で、外観がいい具合に古びた歴史を感じさせる佇まいの店だった。
三角屋根のその店は小さな煙突やクリーム色の外壁、何より入り口の木の扉とその脇にある洒落たランプが、ヨーロッパの田舎のレストランのような雰囲気を醸し出していた。
ドアの横には控えめに"Bistro Star Bear" と店名が書かれたプレートがあるだけで、ドアノブには"open"の木札がかかっている。
「素敵なお店ですね。本当に隠れ家って感じで……」
「昔から通っていてね。味は間違いなく一流なんだけど、片肘張らなくていい店だから、リラックスして」
そう言って鬼嶋がドアを開けると……ドアの隙間からぬうんと、角ばったいかめしい男の顔が現れた。
――ひえッ……! 何、この人!
思わず顔を引きつらせた百合と鬼嶋を交互に眺めた後、男はパッと笑顔を浮かべた。
「鬼嶋ァ~~、待ちかねたぞ! 早く中に入れよ」
扉を大きく開け放つと、男は鬼嶋の背をバンバンと叩いた。
「星熊……落ち着いてくれ、如月さんが怖がるだろ」
鬼嶋が後ろを振り返ると、星熊、と呼ばれたその男は百合の方を見て目を瞬いた。
「お――、この子が新しいお前の秘書? イイ女だねえ……」
鬼嶋と背丈がそう変わらな上、ガッチリとした体格の星熊が身を乗り出すと、目の前に熊が立ちはだかっているような威圧感がある。
「は、はじめまして……如月、です」
消え入りそうな声で名乗った百合に対して星熊はニカっと笑ってから、店の中に入るよう手招きした。
「はじめまして、俺は星熊。この店のオーナーでシェフ……まあ、俺一人でやってる店だから、気兼ねなく寛いでくれ」
「さ、如月さん……」
鬼嶋が百合の肩にそっと手を置き、店に入るように促した。
「は、はい……」
恐る恐る足を踏み入れると、店内は淡いアイボリーの壁と使い込まれた飴色に輝く家具類が落ち着いた印象の、外観を裏切らない内装だった。
星熊に窓際のテーブルに案内され席に着いた百合は店内をしげしげと見回した。
天井から吊り下げられた暖色系の照明が柔らかい光を放っている。厨房の方からは食欲をそそる煮込み料理の豊かな香りが漂ってきていた。
「さ、お二人さん、まずは食前酒を召し上がれ……」
コック帽とタイを身に着け、シャンパングラスとボトルを手にした星熊がテーブルに置いたグラスに金色の液体を注ぎ込むと、たちまち繊細で綺麗な泡がグラスの中で弾けた。
「帰りは、タクシーで送るから心配しないで……今日はゆっくり飲もう」
温かい光に照らされた鬼嶋の瞳が、普段よりもずっと甘やかな視線を送っているように百合には思えた。
――何だか、これって……。まるで……デートみたい。
うっとりと夢見心地に浸りながら、百合は鬼嶋に倣ってシャンパングラスを掲げる。
『……乾杯』
シャリン、と軽く合わせたグラスが魔法のように澄んだ音を奏でた。
三角屋根のその店は小さな煙突やクリーム色の外壁、何より入り口の木の扉とその脇にある洒落たランプが、ヨーロッパの田舎のレストランのような雰囲気を醸し出していた。
ドアの横には控えめに"Bistro Star Bear" と店名が書かれたプレートがあるだけで、ドアノブには"open"の木札がかかっている。
「素敵なお店ですね。本当に隠れ家って感じで……」
「昔から通っていてね。味は間違いなく一流なんだけど、片肘張らなくていい店だから、リラックスして」
そう言って鬼嶋がドアを開けると……ドアの隙間からぬうんと、角ばったいかめしい男の顔が現れた。
――ひえッ……! 何、この人!
思わず顔を引きつらせた百合と鬼嶋を交互に眺めた後、男はパッと笑顔を浮かべた。
「鬼嶋ァ~~、待ちかねたぞ! 早く中に入れよ」
扉を大きく開け放つと、男は鬼嶋の背をバンバンと叩いた。
「星熊……落ち着いてくれ、如月さんが怖がるだろ」
鬼嶋が後ろを振り返ると、星熊、と呼ばれたその男は百合の方を見て目を瞬いた。
「お――、この子が新しいお前の秘書? イイ女だねえ……」
鬼嶋と背丈がそう変わらな上、ガッチリとした体格の星熊が身を乗り出すと、目の前に熊が立ちはだかっているような威圧感がある。
「は、はじめまして……如月、です」
消え入りそうな声で名乗った百合に対して星熊はニカっと笑ってから、店の中に入るよう手招きした。
「はじめまして、俺は星熊。この店のオーナーでシェフ……まあ、俺一人でやってる店だから、気兼ねなく寛いでくれ」
「さ、如月さん……」
鬼嶋が百合の肩にそっと手を置き、店に入るように促した。
「は、はい……」
恐る恐る足を踏み入れると、店内は淡いアイボリーの壁と使い込まれた飴色に輝く家具類が落ち着いた印象の、外観を裏切らない内装だった。
星熊に窓際のテーブルに案内され席に着いた百合は店内をしげしげと見回した。
天井から吊り下げられた暖色系の照明が柔らかい光を放っている。厨房の方からは食欲をそそる煮込み料理の豊かな香りが漂ってきていた。
「さ、お二人さん、まずは食前酒を召し上がれ……」
コック帽とタイを身に着け、シャンパングラスとボトルを手にした星熊がテーブルに置いたグラスに金色の液体を注ぎ込むと、たちまち繊細で綺麗な泡がグラスの中で弾けた。
「帰りは、タクシーで送るから心配しないで……今日はゆっくり飲もう」
温かい光に照らされた鬼嶋の瞳が、普段よりもずっと甘やかな視線を送っているように百合には思えた。
――何だか、これって……。まるで……デートみたい。
うっとりと夢見心地に浸りながら、百合は鬼嶋に倣ってシャンパングラスを掲げる。
『……乾杯』
シャリン、と軽く合わせたグラスが魔法のように澄んだ音を奏でた。
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