上 下
45 / 83

【ミキちゃんちのインキュバス2!(第45話)】「孤高の女帝ナベシマ・避暑旅行@508号室 後編」

しおりを挟む
「はい、その件の資料ですが……いま共有いたします」
 午前中にナベシマをお迎えし、午後出勤と言う形で会社のオンライン会議に参加するミキちゃん。
「ぶにゃ、ぶにゃおん?」(アラン、ミキはいつもあんな感じなのかね?)
 そんなミキちゃんの様子を3匹の淫魔猫と共に見ていた女帝ナベシマは隣でお手てないない香箱座りするアランにテレパシーで聞く。
(はい、在宅勤務時ミキさんはいつもあんな感じです。オンラインテレビ会議か資料作成……あとは電話とかですね)
(茶摘さんも同じ感じですわ!!)
(私の派遣先は在宅無しの仕事だけど……あれはあれで大変そうだわ)
(へえ、ニンゲンは働かざる者死ぬべしとは言うが、ミキも大変なんだねえ)
 時々気まぐれに覗き見する下男と下女がゼイキンやオカネなる何かのために働くのとは違うミキちゃんの様子に興味津々のナベシマ。
 野良の頃を考えれば猫生が気楽かと言えばそうでもないが、今だけは猫で良かった……などと考えていたその時、ある事を思い出す。
(そういえば、アラン達はインマと言う存在で猫に化けているそうだったねえ。その本当の姿ってモノは……今、戻れるのかい?)
(今ですか!? でもミキさんがオンライン会議中ですし……)
(それがどうしたんだい? 早よう見せておくれ?)
 これは孤高の女帝ナベシマ様による命令(オーダー)だと察した3匹の淫魔猫は顔を見合わせてうなずく。
(変身解除!!)

「あっ、アラン君!?」
『守屋さん!?』
『どうなさったんですか?』
『アランくん?』
 ベット上で猫の姿になり、ナベシマと共にくつろいでいたはずの淫魔3人がいきなり元の姿に戻り、驚きの声をあげてしまったミキちゃん。
「えっ、ええと……うちの猫ちゃんが珍しくイタズラしてて。そこは爪とぎしちゃダメよ!! アランちゃん!!」
『猫ちゃんですか!? 見たいですう!!』
『私も見たい!! アランちゃんはどこにいるのかね!?』
 オンラインビデオ会議が背景画像設定済み&ベッドがカメラの死角だったのはさておき、モニターの向こうで大興奮の清井人事部長と経理の女性社員を前に諦めたミキちゃんはマイクオフにして一度立ち上がる。

(しかし驚いた それが本当のインマなんだねえ)
 再び白ソックスな黒猫に化けてミキちゃんの膝上からオンライン会議に参加し、皆の衆を大喜びさせているアランはさておき褐色肌に金髪の若い娘と赤髪ロングヘアの女と言うインマ猫の正体に驚くばかりのナベシマ姐さん。
(改めましてですわ、ナベシマさん)
(昔ミキがぶれざあ服のジョシ高生だった頃キアラみたいな姿で友達といえーいなんてやってるのを見た事があったが……まさにそれそのものじゃないか!!)
 あのお淑やかで母性に溢れるミキさんからは想像もつかない程にヤンチャしていた過去があるとは……ナベシマにより明かされたミキちゃんの過去にキアラは驚く。
(そしてイザベラもミキみたいな肉付きの良い豊満ボボン美人でアランも一瞬しか見えなかったが……テレビでよく見るみたいないい男だったじゃないか!!)
(ナベシマさん、弟を褒めていただきありがとうございます!!)
 女淫魔的に最高の誉め言葉をいただくのみならず、可愛い弟まで褒めて貰えたイザベラさんはナベシマさんに上機嫌なテレパシーで答える。
(弟!? お前さんとアランはそういう関係なのかい!?)
 ナベシマは女淫魔モードのイザベラさんと画面の向こうのミキちゃんの同僚に向けてにゃあにゃあ、あらんあらぁんとサービスさせられている白ソックスな黒猫アランを思わず見比べてしまう。
(言われてみれば何となくだが……同じ何かを感じるねぇ。猫のあたしが言うのもどうだが、お前さんたち何かあったのかね?)
(えっ、ええと……)
(あの、その……ナベシマさん、それは)
 ナベシマさんは純粋に気になったから聞いただけ、それを理解しつつも事情が事情だけに返答に窮してしまうキアラとイザベラさん。
 疑うのはよろしくないが老猫ナベシマの尻尾は既に2つに割れて猫又化しているのではないかと言う疑惑が確信に変わりそうになる。
(ああ、答えられないならいいよ。お詫びに……この私を特別にモフモフさせてやろう)
 空気を読んで話題を切り替えたナベシマさんはごろんとへそ天になって2人にモフモフするように命じて来る。
(いただきますですわ!!)
(ふかふか、もふもふぅ……ぐへへへ)
 唯一心を許した妹にして娘のようなミキちゃん以外の人間には見せない特別なポーズに大興奮のキアラとイザベラさんは2人がかりでお腹のもふもふをわしゃわしゃしてしまう。

 それから3日後……
「ミキ、ただいま!!」
「お父さんにお母さん、お帰りなさい!!」
 N県へのライブ小旅行を終え、ナベシマを引き取りに来た両親に微笑むミキちゃん。
「ただいま、ミキ!!」
「ナベシマはどうだった? 何か無かったか?」
「ぶにゃお!!(よくぞ迎えに戻ったな下男に下女よ)」
 毛並みつやつやなご機嫌な声で出てくるナベシマに驚くミキちゃんご両親。
「あら、すっかり毛並みツヤツヤになっちゃって……すごいわね、ミキ」
「ええ、アラン君達が頑張ってくれましたから!!」
 ミキちゃんが仕事で不在の日中、交代でナベシマの朝餉、昼餉、夕餉の準備とブラッシング、猫ちゃん快感マッサージの練習に勤しんでくれたアラン君とキアラちゃん、イザベラさん。
 守屋夫妻&ミキちゃんの足間をにゃおにゃお鳴きながら八の字くねくねする3匹に感謝しつつ微笑む。
「あら、そうなのね。アランちゃん、ありがとうね!!
 あなた、ナベシマのキャリーケースをお願い。私はミキとアランちゃん達のお土産を渡してくるわ」
「了解!! ほら、ナベシマおいで……」
「ぶにゃん!!」
 自身のお土産はあとで、それを理解していたナベシマは3匹の淫魔猫に見送られつつキャリーケースに入って行くのであった。

【FIN】
しおりを挟む

処理中です...