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【ミキちゃんちのインキュバス2!(第46話)】「プロゴルファーミキちゃん!? ナイス・ホールインワン!!」
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「ミキさん、今日はコレやってみませんか?」
都内S区某所にあるマンション、平日夜の508号室。
ここに住まう会社員女性、守屋美希・通称ミキちゃんとの夕食と片付けを終えた淫魔族のアランは茶摘から借りたジョイステーション5の洋物スポーツゲーム『Hall in One!!』を見せる。
「はあ……面倒だわぁ」
海外の有名なプロゴルファーが巨大なトロフィーを持って笑うパッケージを見た瞬間ミキちゃんの表情はどんよりと曇り、はああああと深く長いため息が口から出て来る。
「あっ、ごめんなさい!! お気に召さなかったみたいで……」
「ううん、違うの!! 急にネガティブな事を言ってしまってごめんね!!
実は会社でソレに関する嫌な事がこれからあるの。だからつい……愚痴になっちゃうけど聞いてくれる?」
冷たい麦茶をくいっと飲み干したミキちゃんはアランに聞いて欲しそうにじっと見る。
「僕でよければ……何があるんですか?」
アランは台所から冷たい麦茶のピッチャーを取りに行きつつ問う。
「ありがとうね、アラン君。変な話だけど……接待ゴルフって知ってる?」
「ええ、かつて昭和の日本企業文化において取引先と親睦を深めるための重要なコミュニケーションイベントであり、飲み会と同等かそれ以上の存在であったと聞いています」
「そうよね、それで株式会社サウザンドのとある取引先の超エライ人でそう言うのが大好きな人がいて……この前その人が私を指名で招待してきたのよ」
「指名ですか? それは奇遇な」
「ええ、そうなのよ……日焼けとか云々もあるけど。色々嫌な話しか無いし、はあ……」
心の内を吐き出したミキちゃんは空の麦茶コップを指に挟んで振りつつ嘆く。
「……あの、でしたら僕とキアラで行ってもいいでしょうか?」
「えっ?」
珍しく興奮を隠そうともしないアランのキラキラした目にミキちゃんは思わず聞き返す。
「実はゴルフ場と言う閉鎖的な文化施設は人間界の文化調査活動でも中々潜入できず…… とても情報が少ないんです!!
こんな千載一遇の大チャンス、逃す理由が無いので代わってもらえないでしょうか?」
真剣な表情で平身低頭頼み込むアラン。
「でも茶摘君も同行するし……私じゃないとダメなんだけど?」
「その件は大丈夫です!! 今、茶摘さんとキアラに連絡しますね!!」
守屋家のFAX子機を手に取ったアランはピポパとボタンを押してコールする。
……次の週末、関東近郊県にあるゴルフ場、快晴。
「今日は絶好のゴルフ日和だなあ!! 株式会社サウザンドさん、今日は楽しもう!!」
「はいっ! !」
青い空を見上げつつ上機嫌に笑う鳥打帽にチェックベスト姿の正和商社(株)の偉い人だと言う白髪のお爺さん。
その後ろに控える若い先方社員お三方が引きつった笑顔で笑う様を見る茶摘は株式会社サウザンド社員として色々な事情を察する。
「初めまして、株式会社サウザンド人事部新卒採用担当の守屋美希と申します!! 今日はよろしくお願いしますわっ!!」
(キアラ、やりすぎ!! もっと守屋さんみたいに落ち着いた女性を演じて!!)
アランも魔界暗器でステルス化して隠れ見ているとは言え守屋さんに化けて代理参加したキアラのきゃぴきゃぴぶりっ子っぷりに心の中で冷や汗をかく茶摘。
(人事部採用担当者だって!? とんでもない人が来てしまった!!)
名前しか知らされず自分達から参加して欲しいと泣きついたものの、まさかの想定以上の人を招待してしまった事に冷や汗をかく正和商社三人衆。
「そうですか、はじめましてですな!! ゴルフは初めてですかな、守屋さん?」
「はいテレビゲームとかでやった事はありますけど…… こんな立派な本物のゴルフ場で本当の道具を使うは初めてなのでお手柔らかにお願いしますわっ!!」
(ファーァァァック!!)
ウィンクまでしてぶりっ子キャラを貫く株式会社サウザンド人事採用担当者に伏せ字必須なあまりよろしくないスラングを(心の中で)ぶっ放してしまう4人の社会人。
「ふおふおふお、そうかそうか…… じやあワシが手取り足取り大自然の中でゴルフする喜びを教えてあげようぞ!! まずは百戦錬磨のワシ流のスイングフォームからじゃ!!」
「はいっ!!」
偉い人に言われるがままにゴルフクラブを持ってその横に立った守屋さん(キアラ)はうんちくうんちくな話の無限ループをニコニコしながら聞きつつ密着ボディタッチされるがままに応じる。
「以上がワシのショットの極意じや……では最初は上手く行かんでもいいからやってみなされ、守屋さん」
一通りの話を終えた翁はミキちゃんのために自ら地面にゴルフボールをセットし、やってみるように促す。
「はいっ、では!!」
(あんなウダウダの解説で出来るわきゃ……な、い?)
うんざりした表情の取引先若手三人衆と同じことを考えていた茶摘の前で気持ちいい音と共に美しき円弧を描いて蒼空を舞う球。
それは計算ずくで狙いすましたかのように旗の立った穴にスポンッと入ってしまう。
「まっ、まさか……あんた、もしかしてプロなのか? ぐっ、偶然にきまっておる!!」
「えっ、言われたとおりにやってみたら出来たんですけど……何かおかしかったですか?」
ぐぅの音も出ない程に美しいホールインワンを決めた真顔のミキちゃんに面子を丸漬しにされ、恐れをなした翁は蒼白になって地面にへたり込んでしまう。
「会長殿 !!」
3人の部下は慌てて翁に肩を貸して立たせ、ゴルフカートまで運ぶ。
「サウザンドのお2人も早く!! 会長殿がお気分が悪いようなので休憩室まで戻ります!!」
取引先若手二人衆に急かされたミキちゃんに化けたキアラと茶摘も慌てて飛び乗る。
再びそれから数日後、都内S区にあるマンション508号室。
「守屋様、この度は娘が大変な失礼をいたしました……誠に申し訳ございません!!」
「私もやりすぎましたわ、 ミキさん!!」
娘のキアラが人間界の会社ゴルフ大会に変身して出場し、めちゃくちゃにした事を受けて親としてお詫びにきた魔界外務省長官秘書ソフィア・アンジェラ。
立派なのし紙が付けられた超高級洋菓子の詰め合わせをお詫び持参したスーツ姿のソフィアは娘と共に頭を下げる。
「わざわざすみません!! 実はあの後キアラちゃんのスーパーショットを見せつけられた取引先の会長殿は修行と称してテレビゲームのゴルフに着手……それでテレビゲームにドハマリしてしまったらしくゴルフコンペも当分無しとなったそうで部下の御三方が本当に感謝してくださったんです。
ある意味キアラちゃんのおかげで雨降って地固まるな結果になりまして……こちらこそありがとうございます!!
ソフィアさんもせっかくだからいかがですか?」
そう言いつつソフィアさんにジョイステーションエックスのコントローラーとゲームソフト『Hall in One!!』見せるミキちゃん。
「ええ、初めてですのでお手柔らかにお願いしますわ!!」
人間界の娯楽に初めて触れるソフィアさんはミキちゃんと並んでテレビの前に座るのであった。
【FIN】
都内S区某所にあるマンション、平日夜の508号室。
ここに住まう会社員女性、守屋美希・通称ミキちゃんとの夕食と片付けを終えた淫魔族のアランは茶摘から借りたジョイステーション5の洋物スポーツゲーム『Hall in One!!』を見せる。
「はあ……面倒だわぁ」
海外の有名なプロゴルファーが巨大なトロフィーを持って笑うパッケージを見た瞬間ミキちゃんの表情はどんよりと曇り、はああああと深く長いため息が口から出て来る。
「あっ、ごめんなさい!! お気に召さなかったみたいで……」
「ううん、違うの!! 急にネガティブな事を言ってしまってごめんね!!
実は会社でソレに関する嫌な事がこれからあるの。だからつい……愚痴になっちゃうけど聞いてくれる?」
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「僕でよければ……何があるんですか?」
アランは台所から冷たい麦茶のピッチャーを取りに行きつつ問う。
「ありがとうね、アラン君。変な話だけど……接待ゴルフって知ってる?」
「ええ、かつて昭和の日本企業文化において取引先と親睦を深めるための重要なコミュニケーションイベントであり、飲み会と同等かそれ以上の存在であったと聞いています」
「そうよね、それで株式会社サウザンドのとある取引先の超エライ人でそう言うのが大好きな人がいて……この前その人が私を指名で招待してきたのよ」
「指名ですか? それは奇遇な」
「ええ、そうなのよ……日焼けとか云々もあるけど。色々嫌な話しか無いし、はあ……」
心の内を吐き出したミキちゃんは空の麦茶コップを指に挟んで振りつつ嘆く。
「……あの、でしたら僕とキアラで行ってもいいでしょうか?」
「えっ?」
珍しく興奮を隠そうともしないアランのキラキラした目にミキちゃんは思わず聞き返す。
「実はゴルフ場と言う閉鎖的な文化施設は人間界の文化調査活動でも中々潜入できず…… とても情報が少ないんです!!
こんな千載一遇の大チャンス、逃す理由が無いので代わってもらえないでしょうか?」
真剣な表情で平身低頭頼み込むアラン。
「でも茶摘君も同行するし……私じゃないとダメなんだけど?」
「その件は大丈夫です!! 今、茶摘さんとキアラに連絡しますね!!」
守屋家のFAX子機を手に取ったアランはピポパとボタンを押してコールする。
……次の週末、関東近郊県にあるゴルフ場、快晴。
「今日は絶好のゴルフ日和だなあ!! 株式会社サウザンドさん、今日は楽しもう!!」
「はいっ! !」
青い空を見上げつつ上機嫌に笑う鳥打帽にチェックベスト姿の正和商社(株)の偉い人だと言う白髪のお爺さん。
その後ろに控える若い先方社員お三方が引きつった笑顔で笑う様を見る茶摘は株式会社サウザンド社員として色々な事情を察する。
「初めまして、株式会社サウザンド人事部新卒採用担当の守屋美希と申します!! 今日はよろしくお願いしますわっ!!」
(キアラ、やりすぎ!! もっと守屋さんみたいに落ち着いた女性を演じて!!)
アランも魔界暗器でステルス化して隠れ見ているとは言え守屋さんに化けて代理参加したキアラのきゃぴきゃぴぶりっ子っぷりに心の中で冷や汗をかく茶摘。
(人事部採用担当者だって!? とんでもない人が来てしまった!!)
名前しか知らされず自分達から参加して欲しいと泣きついたものの、まさかの想定以上の人を招待してしまった事に冷や汗をかく正和商社三人衆。
「そうですか、はじめましてですな!! ゴルフは初めてですかな、守屋さん?」
「はいテレビゲームとかでやった事はありますけど…… こんな立派な本物のゴルフ場で本当の道具を使うは初めてなのでお手柔らかにお願いしますわっ!!」
(ファーァァァック!!)
ウィンクまでしてぶりっ子キャラを貫く株式会社サウザンド人事採用担当者に伏せ字必須なあまりよろしくないスラングを(心の中で)ぶっ放してしまう4人の社会人。
「ふおふおふお、そうかそうか…… じやあワシが手取り足取り大自然の中でゴルフする喜びを教えてあげようぞ!! まずは百戦錬磨のワシ流のスイングフォームからじゃ!!」
「はいっ!!」
偉い人に言われるがままにゴルフクラブを持ってその横に立った守屋さん(キアラ)はうんちくうんちくな話の無限ループをニコニコしながら聞きつつ密着ボディタッチされるがままに応じる。
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「はいっ、では!!」
(あんなウダウダの解説で出来るわきゃ……な、い?)
うんざりした表情の取引先若手三人衆と同じことを考えていた茶摘の前で気持ちいい音と共に美しき円弧を描いて蒼空を舞う球。
それは計算ずくで狙いすましたかのように旗の立った穴にスポンッと入ってしまう。
「まっ、まさか……あんた、もしかしてプロなのか? ぐっ、偶然にきまっておる!!」
「えっ、言われたとおりにやってみたら出来たんですけど……何かおかしかったですか?」
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「会長殿 !!」
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「サウザンドのお2人も早く!! 会長殿がお気分が悪いようなので休憩室まで戻ります!!」
取引先若手二人衆に急かされたミキちゃんに化けたキアラと茶摘も慌てて飛び乗る。
再びそれから数日後、都内S区にあるマンション508号室。
「守屋様、この度は娘が大変な失礼をいたしました……誠に申し訳ございません!!」
「私もやりすぎましたわ、 ミキさん!!」
娘のキアラが人間界の会社ゴルフ大会に変身して出場し、めちゃくちゃにした事を受けて親としてお詫びにきた魔界外務省長官秘書ソフィア・アンジェラ。
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