ミキちゃんちのインキュバス 2 !!

千両文士

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【ミキちゃんちのインキュバス2!(第44話)】「孤高の女帝ナベシマ・避暑旅行@508号室 前編」

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 都内S区某所にあるマンション508号室、平日の夜。
『さあ今回はスペインのバルセロナに来ております!!』
「わあ、なんとも独特な色合いと造形ですね!!」
「すごいカラフルだわ!!」
 この部屋に住まう会社員女性、守屋 美希・通称ミキちゃんと共に 『金山かおるのヨーロッパ紀行』 を見ていた淫魔族の青年、アランはバルセロナの市内にある公園に感動の声を上げる。
「しかし町が個人のアート作品とは、人間界の文化ってすごいですね!!」
「ええ、そうね……」
 2人がそんな事を話しつつ本格パエリアを作らんとするシェフの画像を見ていたその時だった。
『モリヤミサコサンカラオ電話デス!! モリヤミサコサンカラオ電話デス!!』
 甲高いトーキーで叫びだしたFAX電話にミキちゃんはテレビを消して受話器を取る。
「もしもし、お母さん?」
『久しぶりね、ミキ!! アランちゃん達は元気?』
「あらあん!!」
 白ソックスなオッドアイ黒猫に化けて足元でスタンバイしていたアランはミキちゃんが近付けて来た受話器に元気な声で鳴く。
『あらあら、アランちゃんは元気一杯みたいね!! キアラちゃんとイザベラちゃんは?』
「キアラちゃんとイザベラちゃんは私のベット上でぐっすり寝ていて……今の電話でも起きてこなかったみたい」
『あらそう、それは残念だわ……実は私、再来週あたりに数年ぶりの夫婦で2泊3日小旅行に行こうと思っているの』
「あら、いいじゃないお母さん!! どこに行くの」
『パパと私が昔大好きだったミュージシャンさんの復活ライブのチケットが当選してN県の会場に行くことになったのよ!! それで相談したいのはナベシマの件なんだけど……そっちで預かってもらえないかしら?』
「にゃっ!?(ナベシマさんですか!?)」
 いつもの展開とは違う流れに黒猫アランは驚きの声を上げる。
「それは構わないけど……K県からここだと遠くない? 近くにペットホテルとか無いの?」
『そうしたいのはやまやまなんだけど……私も同行するパパの仕事で数日間の外出の時、最寄りのペットホテルに預けたら荒れ狂う猛獣と化しちゃったの。
 それで職員さんとその他設備にも被害を出すのみならず、他の動物も怖がらせちゃったからって出禁を食らっちゃって……ミキの所ならお友達のアランちゃん達もいるしペットOKなんでしょ? 
 お土産いっぱい買ってきてあげるからお願い!!』
「すごい被害って……何があったのよ?」
 守屋家最強の捕乳類であり、気難しくて狂暴な一面も持つ女帝ナベシマならそれぐらいやりかねん。黒猫アランとミキちゃんは思わず目を見合わせる。
「まあいいわ、とりあえずナベシマ預かり中は可能な限り会社の在宅ワークで調整するからそっちの日程を教えてくれる?」
『ミキありがとう!! とりあえずホテルの予約が……』
 ナベシマを預かったペットホテル関係者と不運な動物達に同情しつつミキちゃんは電話口の向こうの母の話をチラシ裏紙にメモする。

 それから数日後、508号室。
「久しぶりね、ミキ!!」
「お母さん!!」
 旅行の前に老猫ナベシマを預けるべく愛車のロールスロイスで娘の家を訪れた守屋夫妻。
「あらぁん!」
「きぁん!!」
「いにゃあん! いにゃあぁ!」
「うふふ、みんな元気そうで何よりだわ!! 大歓迎してくれるのね!!」
 守屋母娘、合計4本の足間を器用にぶつからないで八の字すりすりしてくる3匹の猫ちゃんに動きを封じられつつも娘と抱き合う美佐子ママは喜びの声を上げる。
「アランちゃん、じいじもいますよ!! ヘイ カモン!!」
 その後ろでナベシマ姐さんの入ったキャリーを安全な場所にそっと置き、大股を開いて直立不動になったミキちゃんパパの意図を察した3匹はすぐにそちらに向かい、八の字すりすりとズボン爪とぎで大歓迎する。
「ふぉぉぉぉ……おぉぉぉ……もふもふ、モフモフ、もふもふぅぅう!! いたうれじぃ!!」
「おっ、お父さん!? 大丈夫!?」
 歓喜のあまりあまり大丈夫ではない謎の奇声をあげだすお父さんに少し引くミキちゃん。
「お父さんなら大丈夫よ、あの程度ならまだ余裕だから!! さあ、ナベシマを出してあげましょ」
 そう言いつつワンルームのリビングに美佐子ママは上がる。

「さあナベシマ、アランちゃん達の所に着きましたよぉ? 出ておいで?」
 長い事キャリーケースに閉じ込められていたナベシマが激おこで襲い掛かってくる事も覚悟でキャリーケースのドアを開ける守屋一家。
「あらぁん!! にゃあん!!」(ナベシマさん!! お久しぶりです!!)
「きあぁぁん!!」(お久しぶりですわ!!)
「いにゃぁん! にゃあん!!」(はじめましてですわ!!)
「ぶにゃああ、ぐにゃおおおおん 」(久しぶりだね、アランにキアラ。そしてあんたがイザベラだね?)
 白ソックスな黒猫アランと白猫キアラ、ふわふわ長毛種のイザベラのにゃんこ3匹の大歓迎にうなるように鳴きつつテレパシーで答えるのは茶毛と白毛の房が入り混じる灰色の大猫・ナベシマ姐さん。
「いにゃあん!!」(そうですわ、ナベシマさん!!)
「ぶにゃおおん 」(はじめましてだね、あたしはナベシマだよ)
 猫の姿でナベシマさんに会ったイザベラ姉さんはその匂いを嘆ぎ、鼻チューに応じる。

「あの様子だと大丈夫そうね……わざわざ在宅ワークにしてもらってありがとね、ミキ」
 気難しい老猫ナベシマが始めて来る娘の家に住まう猫ちゃんズに襲いかかる事無く仲良くにゃんにゃんお喋りし、部屋の物についたミキちゃんの匂いをフスフス喚ぎまわって確かめる様を見ていた美佐子ママは安堵の息を吐く。
「気にしないで、お母さん。たまにはこういうのもナベシマが喜ぶし……コンサート楽しんできてね!!」
「ああもちろんだ、ミキ!! お土産楽しみにしてろよ!!」
 ナベシマが3匹の猫ちゃんズと共にくつろぐ光景をスマホ写真に収めつつミキちゃんパパはサムズアップする。

【前編FIN】
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