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死に戻り編
帰れない夜③
しおりを挟む≪…嫌です…いやです。貴方が他の女性に触れること。それよりも……それを望む貴方が…いやです…≫
セレスティアの悲痛な声が、ずっと響く。
(誤解だ…!僕は君以外に触れたいと思っていない…!!)
”僕”が待っていた時間よりもずっと早く、セレスティアは入場したようだ。
入場した途端、男たちが大勢寄ってくる。
『麗しい御髪ですね…どうか一夜の夢を…』
『いいえ、私と…美しい人』
次々にかけられる声に、セレスティアは嫌悪を募らせる。
だが、漂う香が彼女の思考を曇らせていった。
(セレスティア…こんなに気色の悪いめに合って…)
夜会よりももっと露骨な表現で無遠慮に距離を詰めてくる男達。
『そう急かさず、さあレディ飲み物を…』
そう言った声に聞き覚えがあった。
パッと視線を向けると、そこには僕をこの場所にしつこい程誘った学友が居た。
セレスティアは重い頭でその飲み物を怪しむこともなく飲んでしまう。
そうして暫くすると、身体がカッと熱くなってくる。
≪…いけない…、立っているのも辛い…≫
『ああ、酔われたのですね、そこの部屋で休みましょう…』
男に抱えられそうになって、セレスティアは弱った力ながら必死に抵抗する。
『はな、してください…!はなして!』
≪ああ、いやです…!いやなの…!たすけて、ウィ…≫
『お客様、当会は強制的な行為は禁止されております』
セレスティアの身体は学友から離されて、とても大きな胸板に抱えられた。
上から、物凄い怒気を含んだ迫力のある声が聞こえた。
(…ああ、…――彼だ)
≪この、声…は≫
セレスティアが頭上を見上げると、元侍従のデイビッドがそこに立っていた。
それも、厳めしい顔を更に歪めながら。
それまで囲んでいた男達は、あまりの迫力に後ずさる。
『規約がお守り頂けないなら、ご退会を。それでは失礼致します』
暫く睨んで、デイビッドは足早にセレスティアを抱えるようにして歩き出す。
『デイビッド…』
『お嬢様…一体なぜこんな下世話な会に…、どんな男に嫁いだのですか…!あり得ない…!』
デイビッドの怒りはあの場の男達だけではなく、”僕”にもハッキリと向いていた。
(…本当にそうだ…あり得ない…愚かな夫)
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