10 / 66
過去編
独占欲③
しおりを挟む…どうして、大丈夫だと思った?
だけど、君は僕との閨では、こんなにも乱れ切って、甘える様子なんて見せたこともなかった。
身体を重ねたところで、君が心を全て預けてくれる訳ではなかった。
僕との夜は、…互いの家の血を引く子どもを残すという責務、だったのか?
――それでは今は?
君が自ら望んだ。最も叶えたい願いとして、あの男と逢いたいと。
(…君は初めて、心から望んだ男と夜を共に過ごすのか。)
奪いに行く勇気を亡くした脚は震え、頬を伝うのは何の涙か。
ただ顔を覆って、圧し潰されそうな程どす黒い感情に耐え続けた。
――この夜を境に、僕は君を離せなくなる。
二度と君の希望なんて聞かなかったし、毎晩自分の部屋に無理やり呼びつけた。
二度と屋敷から出すものか。
だからどうか諦めて君の…一番好きな男に。
◇◆◇◆
「ん…ッだん、な、さま…まっ…て」
濡れていない君の奥に、互いの性器へ潤滑油を塗って強引に入り込んだ。
それでも乾ききって引き攣った場所が痛むのだろう、セレスティアの顔が歪む。
(そんな表情すらも美しいのか、君は。)
こんな下衆な男がする様な行為を、止められない。
ここまで、拒絶反応を返されて初めて知った。
君は僕を、あの日まではきちんと迎えてくれていたんだと。
潤滑油など初夜以降は使ったことがなかった。
乱れきることはなくても、君の腕は僕の背に回っていたし、口づけに何度だって応えて、返してくれた。
名前も呼んでもらえて、堪えきれない快感の声を漏らして。
思い出せば、目頭が熱くなるが、彼女に苦痛を強いている自分が涙を流すわけにはいかない。
「は、く…ッ」
君は快感だけでなく、苦痛の声も堪えるのか。
「今日は、いいものを用意させた。さあ、これを飲んでくれ」
自分でビンを煽って、セレスに口づけて飲み込ませる。
「ん…っ!?これ、は…?」
そういったセレスの息は段々と整わなくなっていく。
身体の奥からは、潤滑油とは違うぬめりが溢れてくる。
「…媚薬だよ」
虚ろな目をしたセレスに、暗く笑って告げた。
あの会合を調査した際にあった情報を覚えていた。
会場で男性側にだけ「媚薬」が販売されている。
それを家来に買ってこさせた。
潤滑油、…媚薬、君と交わるために、死に物狂いだ。
異常に滴る愛液に、蠢く中に、響く嬌声に、自身の興奮も高まっていく。
でも何より、君の腕が我武者羅に僕にしがみついてくれる事が、胸のほの暗さを少し晴らしてくれる。
「ああああッデイビッド…!」
例え、絶頂を迎える度に違う男の名前を呼ばれても。
「それでも、セレス、君は僕だけのものだ」
12
あなたにおすすめの小説
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
女王は若き美貌の夫に離婚を申し出る
小西あまね
恋愛
「喜べ!やっと離婚できそうだぞ!」「……は?」
政略結婚して9年目、32歳の女王陛下は22歳の王配陛下に笑顔で告げた。
9年前の約束を叶えるために……。
豪胆果断だがどこか天然な女王と、彼女を敬愛してやまない美貌の若き王配のすれ違い離婚騒動。
「月と雪と温泉と ~幼馴染みの天然王子と最強魔術師~」の王子の姉の話ですが、独立した話で、作風も違います。
本作は小説家になろうにも投稿しています。
探さないでください。旦那様は私がお嫌いでしょう?
雪塚 ゆず
恋愛
結婚してから早一年。
最強の魔術師と呼ばれる旦那様と結婚しましたが、まったく私を愛してくれません。
ある日、女性とのやりとりであろう手紙まで見つけてしまいました。
もう限界です。
探さないでください、と書いて、私は家を飛び出しました。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します
ちより
恋愛
侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。
愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。
頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。
公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
優しすぎる王太子に妃は現れない
七宮叶歌
恋愛
『優しすぎる王太子』リュシアンは国民から慕われる一方、貴族からは優柔不断と見られていた。
没落しかけた伯爵家の令嬢エレナは、家を救うため王太子妃選定会に挑み、彼の心を射止めようと決意する。
だが、選定会の裏には思わぬ陰謀が渦巻いていた。翻弄されながらも、エレナは自分の想いを貫けるのか。
国が繁栄する時、青い鳥が現れる――そんな伝承のあるフェラデル国で、優しすぎる王太子と没落令嬢の行く末を、青い鳥は見守っている。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる