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すれ違いクッキー
(1)
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「これ、もらってください」
木曜日。例によって行われた柴村家でのごはん会の後で、芽衣は叶恵から小さな包みを手渡された。
「これは……?」
「お土産です」
「お兄ちゃんの手作りクッキーだよ」
横から、葵が口を挟んだ。
「え? 叶恵くん、クッキーまで作れるの?」
「そんな大変なものじゃないんですよ。基本のシンプルなクッキーですし。もっとこだわると、手間もかかるんでしょうけど」
「すごい、ありがとう。わたし、甘いものって大好き。大事に食べるね」
クッキーを仕舞おうと、芽衣は通学鞄を開ける。
「あ……」
そこで、硬直した。
「芽衣さん? どうしたんですか?」
「今日わたし、鞄の中辞書と参考書でパンパンなんだった。選択授業でグループ発表控えてるから、家でその準備をしようと思って……」
「クッキー入ります?」
「入らないこともないけど、無理やり入れてせっかくのクッキーが割れたら嫌だな」
叶恵が作ってくれたクッキーだ。できれば割ったりなんかしないで持ち帰りたい。
「じゃあクッキーは手で抱えて帰ろうかな」
芽衣がそう言ったとき、葵が何やらピンとひらめいた顔で、奥の部屋へ飛びこんでいった。「芽衣ちゃん、ちょっと待ってて」
戻って来た葵の手には、小さな手提げバッグがあった。バッグにはハリネズミのキャラクターがプリントされている。
「葵のバッグ。芽衣ちゃん、クッキーこれに入れて持って帰りなよ」
ハリネズミは葵が一番好きな動物だ。それがプリントされているバッグということは、きっと大事なものに違いない。
「いいの?」
芽衣は尋ねた。
「うん」
葵がにっこりと笑う。
「じゃあ、借してもらおうかな」
芽衣は葵からバッグを受け取り、そっとクッキーを仕舞った。大事なバッグを貸してもらう。それは、葵から深く信頼されているようで、嬉しかった。
「バッグ、次のごはん会のときに必ず返すね」
翌週、月曜日。
朝のホームルームがはじまろうというとき、芽衣のクラスに征太郎が駆けこんできた。
「芽衣、選択科目って英語とってたよな? 参考書持ってなかったっけ?」
いつもひょうひょうとした態度の征太郎にしては珍しく、ひどく慌てている。
「持ってるけど……どうして?」
「俺、今日の英語でスピーチの順番回ってくるんだよ。なのに原稿の準備し忘れてて……」
「嘘、やばいじゃん」
「だろう? だから参考書から適当に文章盗んで、それっぽく原稿作ろうと思って」
征太郎はそこで、拝むようなポーズを作った。
「頼む、芽衣。参考書貸してくれ」
「そんな大げさにお願いしてなくても……」
芽衣は呆れ顔で言った。
「征太郎の頼みだもん。参考書くらい貸すよ。あ、でもわたしも今日五限で使うから、それまでに必ず返してね」
「わかった。悪いな、芽衣。助かるよ」
参考書を受け取ると、征太郎は来たときと同じく、慌ただしい足取りで自分のクラスへと戻って行った。
そして五限目。芽衣は発表グループのメンバーから、冷ややかな視線を向けられることとなった。
「どういうことなの大原さん。わたしたち、大原さんだから安心して、原稿任せたのに」
グループの中のひとりが、厳しい口調で言った。
「……ごめんなさい」
芽衣は小さく肩を丸め、メンバーに謝った。
本当に、自分はなんてことをしてしまったのだろう。
(みんなが一生懸命書きあげた原稿を、なくしてしまうなんて……)
月曜日の五限目は、選択授業の時間だ。芽衣は英語を選択している。現在、選択英語ではグループごとに分かれ、課題となった小説の英訳にとりかかっていた。英訳した小説を、他グループの前で発表するのが、この授業の最終的な目標だ。
芽衣たちのグループは課題小説を章ごとに分け、それぞれのメンバーで英訳するという方法をとっていた。さらに芽衣には、メンバーが英訳した原稿を見直し、各章をうまく繋げていくという役割があった。そのために、メンバー全員の英訳原稿を預かっていた。
その原稿が今、行方不明になっている。テキストの間に挟んで保管しておいたはずなのに、授業がはじまってから見てみると、すべてなくなっていたのだ。
「だいたいさあ、テキストなんかに原稿挟んでおくからなくすんだよ」
「どう責任取ってくれるの? あんなに苦労して訳し終えたのに、わたしらまた一からやり直さなきゃいけないわけ?」
メンバーから責められ、芽衣はますます肩をすぼめる。
するとメンバーのうちただひとりの男子生徒、横井が憎々しげに言った。
「大原さんは一年のイケメンを追い回すのに夢中だから、他のことに注意が向かないんじゃないですかー? そんなんだからみんなの大事な原稿なくすなんてミスするんじゃないですかー?」
「え……?」
芽衣は唖然として、訊き返した。
「何それ、横井くん。わたしそんなこと全然――」
芽衣の言葉を遮り、横井は続ける。
「俺、先週の木曜、見ちゃったんだよね。大原さんが一年のイケメンと並んで歩いているところ。ラッキーストアの前の道だったから、もしかして二人仲良く、カラオケでも行った帰りだったのかなー?」
ラッキーストアはごはん会の日、芽衣と叶恵が買い物をするスーパーだ。すぐ隣にカラオケ店があるため、横井は芽衣たちがそちらに寄ったものと勘違いしているらしい。
「違う」と芽衣が声を上げるより先に、横井以外のメンバーたちが口を開いた。
「一年のイケメンって、柴村叶恵くんのことだよね?」
「あ、そういえばわたし、大原さんが柴村くんと学食で喋ってるの、見かけたことある」
「えー? 大原さんておとなしそうに見えて、案外肉食系? どういう手使って、柴村くんと仲良くなったの?」
冷めた視線から一転、芽衣は今度、メンバーたちから白けた目で見られた。
「とにかく、原稿なくしたのは大原さんなんだから、大原さんひとりでなんとかしてください」
横井が切り捨てるように言った。
芽衣と叶恵の噂は、帰りのホームルームがはじまろうという頃にはすでに、クラス中に知れ渡っていた。
クラスメイトから棘のある眼差しを向けられる芽衣を、葉子が励ます。
「原稿なくしちゃった件は、これから頑張って巻き返せばいいよ。わたしも英訳手伝うし。ね? 小さなことからコツコツとみんなの信用回復してこ?」
葉子の優しい言葉が心にしみて、芽衣は泣きそうになった。
「それに原稿なくしたことと、柴村くんとのことは、まったく関係ないでしょう。だから芽衣は柴村くんのことで周りから何言われても、気にしなくていいんだからね。堂々としてな」
「うん。ありがとう、葉子」
芽衣が小さくうなずいたとき、廊下から征太郎の声がした。
「芽衣!」
クラスメイトたちの視線が、芽衣から征太郎へと移る。
征太郎は悠然とした足取りで、芽衣の元へやって来た。そしてさっと身を屈めると、芽衣の耳元で囁いた。
「芽衣の噂、俺のクラスのほうにまで流れてきてる。それでこれ……」
征太郎が芽衣の机の上に、重ねた紙を置いた。
――え? どういうこと?
芽衣は驚き、征太郎を見上げた。それは、芽衣がなくしたはずの英訳原稿だった。
「ごめん、芽衣。芽衣に参考書返すとき、間に挟まってたこの原稿も一緒に返そうとして、すっかり忘れてたんだ」
(そうか、わたしテキストじゃなくて参考書のほうに原稿挟んじゃってたんだ……)
「まさかその後の授業で使うものだと思わなくてさ、後で返せばいいやぐらいに考えちゃってたよ。ほんと迷惑かけてごめん。あ、芽衣と選択授業で同じグループだっていう人も、本当にごめんなさい」
征太郎はクラス中に響く声で言った。
「そんなわけで全部俺のせいだから、芽衣のことはあまり責めないでやってください」
征太郎の言葉に、場の空気がゆるんだ。葉子が「やるじゃん」といった目で、征太郎に合図を送る。
だがまだ、芽衣に対するクラスメイトからの風向きは強い。特に女子生徒は、芽衣のことを叶恵に媚びを売る嫌な女だと思いこんでいる。
うつむく芽衣の頭を、征太郎が優しく撫でた。そして――、
「なんか勘違いしてる奴が多いみたいだから言うけど、芽衣と一年の柴村は、何も関係ないよ」
教室中を眺め渡しながら、征太郎は宣言する。
「だって芽衣は今、俺と付き合ってるんだから」
木曜日。例によって行われた柴村家でのごはん会の後で、芽衣は叶恵から小さな包みを手渡された。
「これは……?」
「お土産です」
「お兄ちゃんの手作りクッキーだよ」
横から、葵が口を挟んだ。
「え? 叶恵くん、クッキーまで作れるの?」
「そんな大変なものじゃないんですよ。基本のシンプルなクッキーですし。もっとこだわると、手間もかかるんでしょうけど」
「すごい、ありがとう。わたし、甘いものって大好き。大事に食べるね」
クッキーを仕舞おうと、芽衣は通学鞄を開ける。
「あ……」
そこで、硬直した。
「芽衣さん? どうしたんですか?」
「今日わたし、鞄の中辞書と参考書でパンパンなんだった。選択授業でグループ発表控えてるから、家でその準備をしようと思って……」
「クッキー入ります?」
「入らないこともないけど、無理やり入れてせっかくのクッキーが割れたら嫌だな」
叶恵が作ってくれたクッキーだ。できれば割ったりなんかしないで持ち帰りたい。
「じゃあクッキーは手で抱えて帰ろうかな」
芽衣がそう言ったとき、葵が何やらピンとひらめいた顔で、奥の部屋へ飛びこんでいった。「芽衣ちゃん、ちょっと待ってて」
戻って来た葵の手には、小さな手提げバッグがあった。バッグにはハリネズミのキャラクターがプリントされている。
「葵のバッグ。芽衣ちゃん、クッキーこれに入れて持って帰りなよ」
ハリネズミは葵が一番好きな動物だ。それがプリントされているバッグということは、きっと大事なものに違いない。
「いいの?」
芽衣は尋ねた。
「うん」
葵がにっこりと笑う。
「じゃあ、借してもらおうかな」
芽衣は葵からバッグを受け取り、そっとクッキーを仕舞った。大事なバッグを貸してもらう。それは、葵から深く信頼されているようで、嬉しかった。
「バッグ、次のごはん会のときに必ず返すね」
翌週、月曜日。
朝のホームルームがはじまろうというとき、芽衣のクラスに征太郎が駆けこんできた。
「芽衣、選択科目って英語とってたよな? 参考書持ってなかったっけ?」
いつもひょうひょうとした態度の征太郎にしては珍しく、ひどく慌てている。
「持ってるけど……どうして?」
「俺、今日の英語でスピーチの順番回ってくるんだよ。なのに原稿の準備し忘れてて……」
「嘘、やばいじゃん」
「だろう? だから参考書から適当に文章盗んで、それっぽく原稿作ろうと思って」
征太郎はそこで、拝むようなポーズを作った。
「頼む、芽衣。参考書貸してくれ」
「そんな大げさにお願いしてなくても……」
芽衣は呆れ顔で言った。
「征太郎の頼みだもん。参考書くらい貸すよ。あ、でもわたしも今日五限で使うから、それまでに必ず返してね」
「わかった。悪いな、芽衣。助かるよ」
参考書を受け取ると、征太郎は来たときと同じく、慌ただしい足取りで自分のクラスへと戻って行った。
そして五限目。芽衣は発表グループのメンバーから、冷ややかな視線を向けられることとなった。
「どういうことなの大原さん。わたしたち、大原さんだから安心して、原稿任せたのに」
グループの中のひとりが、厳しい口調で言った。
「……ごめんなさい」
芽衣は小さく肩を丸め、メンバーに謝った。
本当に、自分はなんてことをしてしまったのだろう。
(みんなが一生懸命書きあげた原稿を、なくしてしまうなんて……)
月曜日の五限目は、選択授業の時間だ。芽衣は英語を選択している。現在、選択英語ではグループごとに分かれ、課題となった小説の英訳にとりかかっていた。英訳した小説を、他グループの前で発表するのが、この授業の最終的な目標だ。
芽衣たちのグループは課題小説を章ごとに分け、それぞれのメンバーで英訳するという方法をとっていた。さらに芽衣には、メンバーが英訳した原稿を見直し、各章をうまく繋げていくという役割があった。そのために、メンバー全員の英訳原稿を預かっていた。
その原稿が今、行方不明になっている。テキストの間に挟んで保管しておいたはずなのに、授業がはじまってから見てみると、すべてなくなっていたのだ。
「だいたいさあ、テキストなんかに原稿挟んでおくからなくすんだよ」
「どう責任取ってくれるの? あんなに苦労して訳し終えたのに、わたしらまた一からやり直さなきゃいけないわけ?」
メンバーから責められ、芽衣はますます肩をすぼめる。
するとメンバーのうちただひとりの男子生徒、横井が憎々しげに言った。
「大原さんは一年のイケメンを追い回すのに夢中だから、他のことに注意が向かないんじゃないですかー? そんなんだからみんなの大事な原稿なくすなんてミスするんじゃないですかー?」
「え……?」
芽衣は唖然として、訊き返した。
「何それ、横井くん。わたしそんなこと全然――」
芽衣の言葉を遮り、横井は続ける。
「俺、先週の木曜、見ちゃったんだよね。大原さんが一年のイケメンと並んで歩いているところ。ラッキーストアの前の道だったから、もしかして二人仲良く、カラオケでも行った帰りだったのかなー?」
ラッキーストアはごはん会の日、芽衣と叶恵が買い物をするスーパーだ。すぐ隣にカラオケ店があるため、横井は芽衣たちがそちらに寄ったものと勘違いしているらしい。
「違う」と芽衣が声を上げるより先に、横井以外のメンバーたちが口を開いた。
「一年のイケメンって、柴村叶恵くんのことだよね?」
「あ、そういえばわたし、大原さんが柴村くんと学食で喋ってるの、見かけたことある」
「えー? 大原さんておとなしそうに見えて、案外肉食系? どういう手使って、柴村くんと仲良くなったの?」
冷めた視線から一転、芽衣は今度、メンバーたちから白けた目で見られた。
「とにかく、原稿なくしたのは大原さんなんだから、大原さんひとりでなんとかしてください」
横井が切り捨てるように言った。
芽衣と叶恵の噂は、帰りのホームルームがはじまろうという頃にはすでに、クラス中に知れ渡っていた。
クラスメイトから棘のある眼差しを向けられる芽衣を、葉子が励ます。
「原稿なくしちゃった件は、これから頑張って巻き返せばいいよ。わたしも英訳手伝うし。ね? 小さなことからコツコツとみんなの信用回復してこ?」
葉子の優しい言葉が心にしみて、芽衣は泣きそうになった。
「それに原稿なくしたことと、柴村くんとのことは、まったく関係ないでしょう。だから芽衣は柴村くんのことで周りから何言われても、気にしなくていいんだからね。堂々としてな」
「うん。ありがとう、葉子」
芽衣が小さくうなずいたとき、廊下から征太郎の声がした。
「芽衣!」
クラスメイトたちの視線が、芽衣から征太郎へと移る。
征太郎は悠然とした足取りで、芽衣の元へやって来た。そしてさっと身を屈めると、芽衣の耳元で囁いた。
「芽衣の噂、俺のクラスのほうにまで流れてきてる。それでこれ……」
征太郎が芽衣の机の上に、重ねた紙を置いた。
――え? どういうこと?
芽衣は驚き、征太郎を見上げた。それは、芽衣がなくしたはずの英訳原稿だった。
「ごめん、芽衣。芽衣に参考書返すとき、間に挟まってたこの原稿も一緒に返そうとして、すっかり忘れてたんだ」
(そうか、わたしテキストじゃなくて参考書のほうに原稿挟んじゃってたんだ……)
「まさかその後の授業で使うものだと思わなくてさ、後で返せばいいやぐらいに考えちゃってたよ。ほんと迷惑かけてごめん。あ、芽衣と選択授業で同じグループだっていう人も、本当にごめんなさい」
征太郎はクラス中に響く声で言った。
「そんなわけで全部俺のせいだから、芽衣のことはあまり責めないでやってください」
征太郎の言葉に、場の空気がゆるんだ。葉子が「やるじゃん」といった目で、征太郎に合図を送る。
だがまだ、芽衣に対するクラスメイトからの風向きは強い。特に女子生徒は、芽衣のことを叶恵に媚びを売る嫌な女だと思いこんでいる。
うつむく芽衣の頭を、征太郎が優しく撫でた。そして――、
「なんか勘違いしてる奴が多いみたいだから言うけど、芽衣と一年の柴村は、何も関係ないよ」
教室中を眺め渡しながら、征太郎は宣言する。
「だって芽衣は今、俺と付き合ってるんだから」
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