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愛溢れる世界
250:初夜・1
しおりを挟むティスが俺に触れたい、
って言うから。
俺はティスのあまりの可愛さに
ぎゅうと抱きしめた。
このままティスと寝てもいいかも。
ティスは俺と子づくりはしなくていいって言うし。
そう思ったのに。
ティスは俺を下から見上げたかと思うと
ちゅってキスをした。
急にそんなことをされて
俺はうろたえてしまう。
「触れてもいいよね?」
と言われて、うん、と返事をしたが。
これ、返事をしない方が
良かったのかもしれない。
だって。
俺が返事をしたら
ティスが嬉しそうな顔をして
何度も俺と唇を重ねてきた。
驚いて体を硬直させたが
ティスは俺の耳元で
可愛い、とか大好き、とか
愛してるとか囁いて
俺の耳タブに歯を立てたり
舐めたりする。
さすがにここまできたら
俺も、これはもしかして、
と思わざるおえなくなった。
まさか、初夜なのか?
でも俺たち、男同士なのに?
どうやって?
いや、俺はどうすれば?
「大丈夫だから、ルティア」
ティスは俺の頬に手を添えて
また、ちゅっと口づける。
「体の力を抜いて。
大切にするから。
ルティアに触れたい。
ルティアを沢山、感じたいんだ」
それって俺を抱くってことか?
それとも、触れるだけなのか?
いやでも俺を抱くって
だからどうやって?と最初の疑問に
俺は戻ってしまう。
「あの、僕は……ティス?」
シャツの上から指先で
俺の身体をなぞるティスに
俺は待って、と懇願した。
「僕に触れられるのは嫌?」
「い、嫌じゃない」
嫌じゃないから、
そんなに悲しそうな顔をしないでくれ。
「でも、僕。
こう言うの、わからなくて。
僕はどうしたらいい?」
男同士でどうやって
抱き合うと言うのか。
ティスが俺に
触れたいと言うのなら
好きに触れて貰って構わないが、
触れて欲しい、に関して
俺はどうすればいいかわからない。
俺が困り果てて言ったのに、
ティスは俺の言葉を聞いて
嬉しそうな顔をする。
「いいんだよ。
ルティアは何もしなくて。
だって僕が初めてなんだもの。
何も知らなくていいし、
僕が全部教えてあげる。
だから。
じっとしてて。
僕を受け入れて?」
そう言われてしまえば
拒否などできそうもない。
分かった、と頷くと
ティスは俺の上に覆いかぶさって来た。
それからすぐに、
また唇が重なる。
でも今度は、今迄みたいに
ただ唇が重なるだけではなくて。
咬みつくように、
深く口づけられた。
驚いて口を開いたら、
ティスの舌が俺の口内に
潜り込んで来る。
驚いて、ティスの舌を
追い出そうとしたら、
俺の舌にティスの舌が
絡みついてきて、
ちゅう、と吸われた。
唾液が口から溢れて
顎を伝うのが感覚でわかったけれど
俺はどうすることもできない。
じっとしていればいいと
言われていたけれど。
どんどん息苦しくなってきて
俺はティスの腕を
夢中で掴んだ。
すると俺の声なき悲鳴に
気が付いたのか
ティスは口付から俺を
解放した後、
ぺろり、と俺の唇を舐めた。
「可愛いね、ルティア」
そう言うティスの顔は
妖艶にも感じられて
俺はさらに体が熱くなる。
可愛いティスの筈が、
色気駄々洩れになっていて
俺はもういっぱいいっぱいだ。
「ちゃんと気持ちよくなろうね」
ティスが言いながら
シャツの上から俺の肌をなでる。
気持ち良く?
やっぱり俺、このまま
ティスに抱かれるのか?
俺は前世の記憶があるから
理解できていないだけで、
この世界では同性婚は普通にある。
だから俺が知らないだけで
同性同士で抱き合う方法も
通常誰でも知っていることなのかもしれない。
でも、抱く、抱かれるって。
あれだよな。
性欲に絡んだ話だよな?
可愛いティスが性欲なんてあるのか?
と俺は思わず思ってしまう。
それに……。
「あの、て、ティス」
俺はシャツの上から
俺の腹を撫でていたティスの
手を思わず掴んだ。
「どうしたの?」
「ぼ、僕ね」
言うか?
こうなったら白状するしかないか?
性欲と考えて
俺は思い出したのだ。
自分のこの体のことを。
この体は、紫の瞳の『力』のせいで
発育が悪かった。
それで背が伸びなかったり、
沢山食べれなかったりするのだが、
じつは性欲に関しても
未発達なのだ。
つまり……。
俺はまだ精通が来ていない。
自慰だってしたことないし、
そもそも、性的興奮をすることがない。
前世であれば、ネットで
女性の裸の写真なんて
いくらでも見れたのだろうが、
この世界では、靴を脱ぐだけで
女性はハシタナイと言われてしまう。
俺は残念ながら
女性の肌を見ることも
触れることもなく
興奮することはできないし、
想像で興奮できるほど
前世でも女性の肌など
見たことが無い。
俺の男根と言えば聞こえがいいが、
物凄くささやかで
小さな樹幹は、一応は
生理現象として固くなることはあるが
一定期間を置けばすぐに
やわらかくなるし、
吐き出す精液が無いのだから
わざわざ自分で樹幹に触れようとも
思わなかった。
つまり。
今からティスが俺と
性行為をしようと思っていたとしても
俺にはそれが無理ではないかと思うのだ。
こういうデリケートなことは
結婚前に伝えておくべきだったよな?
俺の身体の発育が悪いせいで
子どもができないかもしれないし。
ティスは俺の顔を見て
言葉を待ってくれている。
言うしかない。
今日が初夜なら、
こういうことは
その前に伝えるべきだ。
「僕ね。
赤ちゃん生めないかもしれないんだ」
俺の必死の訴えに、
ティスは目を丸くした。
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