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愛溢れる世界
249:可愛いけど手放せない【ティスSIDE】
しおりを挟む僕はアキルティアの言葉に
どう反応していいか迷った。
公爵家で大切に守られてきたことは知っている。
けれど。
ここまで閨事に関して
知識がないとは……。
どうする?
どうすればいい?
何も知らないアキルティアに
そうだね、っていつもみたいに
優しく返事をして
一緒に寝る?
でも、今日、それをしたら
今後、僕はもう
アキルティアを抱く機会なんて
一生、得られないかもしれない。
今日、今ここで
アキルティアに知っても貰わないと
公爵家で閨教育なんて
行われるわけがないのだから
僕がここで引いたら
ずっとアキルティアとは
清い関係になってしまう。
そんなのは嫌だ。
僕はアキルティアと
結婚するために、
ずっと頑張って来た。
俗物だと言われても
アキルティアの肌に触れたら
どんなに感動するのだろうと
そんなことまで考えていた。
なのに。
アキルティアは疲れてると思う。
もう眠たいって顔してる。
わかってるけど。
でも。
今日だけは我が儘を言いたい。
明日からアキルティアの
我が儘なら、どんなことだって聞くから。
だから、今日だけは
僕の願いを叶えさせて。
僕はベットに座るアキルティアの
両手を取った。
「あのね、ルティア」
僕が、僕だけが呼べる
名を呼ぶと、アキルティアは
可愛く頬を赤くする。
「赤ちゃんを作るのは
今日じゃなくてもいいんだ」
僕の言葉に嘘はない。
すぐに子どもが欲しいのではなく
アキルティアを感じたい。
僕の物だって、
その感じて、実感したい。
本当にアキルティアが
僕のことを好きなら、
僕と同じように
僕に触れたいって
思ってくれると思う。
それを、見たいんだ。
僕の言葉に、
アキルティアは首を傾げた。
可愛い。
とても。
アキルティアは気がついて
いないようだったけれど、
アキルティアが着ている
寝間着は布地が薄くて、
照明の加減で肌が透けて見えている。
きっと王宮の侍女が
この日のために準備して
くれていたのだと思うけれど。
アキルティアはズボンを
履いていないから
寝間着の裾は長いけれど
ベットに座っていると
白い足は丸見えになっている。
もちろん、寝間着の下にある
赤い胸の突起まで透けて見えているのだ。
これでドキドキしない男なんていないと思う。
乱暴に押し倒したい、
組み敷きたい欲求を僕は必死で押さえ込んだ。
「でも僕は、
ルティアに触れたい。
沢山触れて、
沢山、ルティアに触れられたい」
僕がそう言うと、
アキルティアの顔が
さらに真っ赤になった。
「えっと、えっと?
それって……」
「いい?」
アキルティアの言葉を遮り、
僕は可愛い顔を覗き込む。
僕は長年、アキルティアの
そばにいることで、
アキルティアの思考パターンが
随分と分かったと思う。
例えば、アキルティアは
可愛いものに弱い。
ずっとアキルティアは
僕のことを、可愛い、可愛いと
言ってくるけれど。
そんな時は僕が我が儘を言っても
受け入れてもらえる時なのだ。
僕はいつだって
アキルティアの前では
カッコイイ男でいたいけれど、
アキルティアに触れたいときは
僕はわざと可愛いと
アキルティアが言うような顔をする。
上目使いでアキルティアを
見上げてみたり、
少し幼い顔で笑って見たり。
すると絶対に、
アキルティアは僕を可愛いって
抱きしめてくる。
最近はそれをやりすぎて、
アキルティアが抱きついて来るのを
両手を広げて待っていたら、
アキルティアが不思議そうな
顔をして動きを止めるので
加減が必要だと反省はしているけれど。
でも僕はアキルティアを
騙しているわけでもないし、
嘘を言っているわけでもない。
ただ、アキルティアが
好きそうな顔を僕がしているだけだ。
ほら、だって。
今も僕が少し悲しそうな
顔をしてアキルティアの顔を
見上げたら。
アキルティアは優しいから
いいよ、って意味も分かって無いのに
僕を抱きしめてくる。
可愛い僕のアキルティア。
僕だけの、ルティア。
こんなに可愛くて、
純真で、何も知らなくて。
僕以外の誰かに
騙されるんじゃないかって
僕はいつだって不安になる。
だからこそ、僕は結婚しても
アキルティアとすぐには
一緒に住まなくてもいいと
公爵に言ったのだ。
まだアキルティアには
公爵家で守ってもらう必要がある。
僕はおそらく来年には
立太子の儀式があると思う。
そこで王である父から
王太子として正式に任命されるのだ。
そこまで来てようやく僕は
内外に対して、王太子としての
立場を知らしめることが
できるようになるし、
それなりの権限も増える。
つまり今の僕だけでは
まだアキルティアを
守り切ることができないのだ。
そんな僕がアキルティアを
抱いてもいいのかと言われれば
返事に困る。
でも、僕はアキルティアを
誰よりも愛しているし、
愛し合ってるのなら
肌を重ねたいと思う。
愛し合ってるからこそ
触れたいし、触れられたい。
そう思うのは僕だけなんだろうか。
僕がわざと、少し唇を
尖らせてアキルティアの名を呼ぶと
アキルティアは僕をぎゅっと
抱きしめて「僕もティスに
触れられるのは好き」という。
でも、違うと思う。
アキルティアが言っている意味と
僕の考えている言葉の意味は、
たぶん、違う。
でも、触れたいって言ったら、
いいよ、って言うから。
だから、いいよね?
このままアキルティアに触れても。
僕がそう思って、
少しだけ強引にアキルティアに
口づけたら。
アキルティアは目を見開いたまま
顔を真っ赤にした。
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