【完結】「誰よりも尊い」と拝まれたオレ、恋の奴隷になりました?

たたら

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終章

176:新しい試練?

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それはもう少しで学校も
長期休暇に入る頃だった。

正直、現時点で卒業後の
進路が決まってない者など
俺のクラスにはいなくて。

授業はあるが誰もが
のんびりムードな学生生活を
送っている。

今の俺には悩みも不安もないし
むしろ未来は希望に満ちている……
はずだった。

だがそんな俺が学校から
公爵家に戻り、夕食を食べた後。

寝支度をしていたら
ジュが突然、俺の前に
降って来た。

ちょうど風呂から上がって
リタに入れて貰った
冷たい果実水を飲もうと
グラスに手を伸ばしたところだった。

俺の伸ばした手の上に
手のひらサイズになった
小さなジュがぽとり、と
落ちて来たのだ。

「ジュ!?
どうしたの?」

こんなに小さくなって!

大丈夫か、とジュを抱き上げると
ジュは小さく、にゃ、と鳴く。

助けを求めるような声に
俺は慌ててジュを抱き上げる。

小さな顔を覗き込むと
頭の中に【ハヤク】と言う
ジュの声が聞こえた。

早く?

何かあったのか。

俺は寝間着の上に
カーディガンを羽織る。

そして足を動かしかけて、
落ち着け、と首を振った。

ジュを助けるとしても、
どこに行けばいいんだ?

いや、そもそも時刻はもう夜だ。

俺が今いなくなったら
リタも、父も兄も母も……
ヴィンセントだって心配する。

俺は一瞬迷って、
机に置手紙を書いた。

『カミサマに用事を頼まれたので
お使いに行ってきます。
しばらく戻らなくても
大丈夫なので
心配しないでください』

幼稚園児か!って言われそうな
文面だが、ジュがこんな状態なのだ。

きっとカミサマが関わってるだろうし、
もしかしたら2年前の王都の時と同じで
過去の魔術が関わっていることで
大変な問題が起こってるのかもしれない。

俺はこの国のことしか
今まで関わってこなかったが
ジュがカミサマに頼まれて
この世界を助けていることは
知っている。

「ジュ、とにかく
秘密基地に行こう」

俺は筆記用具やノートを入れた
鞄を手に取った。

そして魔力を指に込めて
部屋のクローゼットを開ける。

もちろん、扉の先は
あの秘密基地だ。

秘密基地は世界のどことも
繋がっていない場所なんだと思う。

つまり、どこからでも
行くことができるし、
逆に言えば、俺が全く
知らない場所でも
秘密基地を起点にすれば
どこにでも行けるのだ。

秘密基地にある
ジュの寝床に俺は
小さくなったジュの身体を
そっと下ろした。

秘密基地は俺の身体から
勝手に放出された魔力が
空気中に漂っているらしく
ジュは寝床のクッションに
身体を置いた途端、
少し元気そうな声で鳴く。

「話せるか?
何があった?
俺はどこに行けばいい?」

いや、違うな。

「カミサマに会うには
どうすればいい?」

ジュに聞くのではなく
カミサマに聞くのが手っ取り早い。

もう何年も会っていなかったし、
会わなくても構わないと
思っていたが、こうなると
話をしないわけにはいかないだろう。

俺の今後の平穏のためにも
この世界の状態を知っておきたい。

また卒業してもなお、
こんな風に駆り出されるのなら
それもまた知っておきたいし、
なんなら、この世界の不安要素を
全て教えておいて欲しい。

前もって対策を取ることが
できるのであればそうしたいし、
事件が起こる前に、前倒しで
俺が手を出せるところが
あるのなら、手を加えたい。

と言うか、スケジュールの管理は
俺がしたい!

だからノートを持って来たのだ。

とにかく色々教えてくれ!

切に思ってジュを見たが、
ジュは俺を見て
小さく首を傾げた。

「わかんないの?
じゃあ、ジュはどうやって
カミサマと話をしてるの?」

もしかして一方的に
ジュに声の命令だけ届けているのだろうか。

まじで?
サイテー。
信じらんない。

そんな上司って、
俺だったら絶対嫌だ。

部下の状態も気にせずに
仕事を押し付け残業させ、
自分は先に帰るタイプの最低上司だ。

と思ったら、いきなり
ジュの身体が光り出した。

「ジュ!?」

ビックリしてジュを抱き上げると
眩しいほどの光がどんどん大きくなり
俺の身体を包み込む。

眩しすぎて俺は
ジュを胸にぎゅっと抱いて
目をつぶった。

光は熱く肌を刺すような
感覚がした。

だがそれは一瞬で、
すぐに空気が冷たくなる。

俺がおそるおそる目を開けると
確かに胸に抱いたジュは
いつの間にか消えていて
俺は真っ暗な空間の中にいた。

あ、この場所知ってる。

俺は咄嗟に思った。

カミサマと初めて出会った空間だ。

案の定、暗闇に目が慣れてくると
うっすらと目の前に
玉座が見えた。

だが誰も座っていない。

「カミサマ?
ジュ?
誰かいないの?」

呼び出しておいて
置き去りにする気か?

文句を言ってやろうと
口を開けると、目の前の
玉座がぼんやりと光る。

そちらに意識を向けると、
幼い姿をしたカミサマが
一瞬で玉座に現れた。

最初にあった頃よりは
少しは成長した姿だと思う。

それでも小学生高学年ぐらいに
しか見えないけれど。

ただ、不機嫌そうに見える顔や
ただ座っているだけなのに
威圧されるような空気は、
ただの子どもには見えない。

そりゃそうか、
相手はカミサマだ。

俺は止まっていた息を
何とか吐いた。

にらみつけられて
呼吸を止めてしまっていたのだ。

不遜な態度で足を組み、
カミサマは俺を見下ろす。

玉座は少し宙に浮いていて
ちょうど俺の肩より上に
カミサマは座っている状態だった。

……ものすごく見下ろされている。

挨拶をするべきか?

こんにちは、とか、
お久しぶりです、とか。

それとも神の前なんだから、
跪けとか思ってるのか?

ジュのあの様子を見たら
そんな気にもなれんぞ、
と思ってたらカミサマが
先に口を開いた。

『今すぐに向かってもらう場所だが』

いきなり話を始めるのか。

いやまず、状況を説明しろよ。
幼稚園児でも説明ぐらいはするぞ?

何様だよ、ってカミサマか!?

心の中でノリツッコミをしたら、
カミサマが俺をじっと見た。

『簡単に説明すると
この世界の魔力に変換する
供給源がかなり減ってきている』

うん?
どういう意味だ?

今のこの世界の魔力は、前世妹たちの
腐った妄想で作り上げているんだったよな。

この世界が自然に魔力を生み出す力が
まだ弱いので、それを補うために
カミサマが別世界の腐女子たとちの
妄想力を使ってこの世界の魔力に
変換している、と俺は認識している。

もちろん、その腐女子妄想の筆頭が
俺の前世妹であり、その前世妹の
腐妄想パワーを一心に受けて、
パイプ役になっているのが俺だ。

前世妹の最推しであるイクスと
その体の中に入った
前世妹の兄である俺。

イクスの身体と俺の心が1つになったからこそ
この世界のパイプ役になることが
できていると考えている。

まぁ、おかげで幼少期は
その膨大な腐妄想パワーに
身体がついていけず、
めちゃくちゃ貧弱だったが。

今は成長したし、自分でも
魔法を使って『力』を放出できる
ようにもなった。

病弱認定ではなくなったし、
いいかんじに健康体になったと思う。

でもそれは、俺が健康体になったのではなく
供給される腐妄想が減ったから
俺の体調が良かったのか?

え?
ってことは供給側……前世妹に
なにかあったのだろうか。

俺は自分の考えが恐ろしい結論を出し、
思わず凍り付いてしまった。












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