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終章
175:穏やかな日々
しおりを挟むエリオットの話を
顔を真っ赤にして話すミゲルは
俺も可愛いと思う。
なんというか、純粋な恋心を
見せられていると言うのか、
前世的に言えば、青春の
ラブストーリーをリアルで
見せられていると言うか。
本当に嬉しそうで、
幸せそうに話をするので
話を聞いている俺でさえ
嬉しくなってしまう。
ただミゲルはちゃんとした
伯爵家の子息だし、
高位貴族でもある。
夜会や社交界にも顔を出しているようだし
俺が知らない情報も
時折持って来てくれる。
俺みたいに、貴族社会のことを
何も知らないわけではないし、
しがらみとか、家柄とか
それこそ、高位貴族の噂とか。
俺に必要だと思われることは
積極的に調べて教えてくれるのだ。
物凄く感謝をしているが、
逆に俺はミゲルのことを
心配もしている。
だって。
この世界では男同士の結婚は
珍しいことでもないが、
それでも子どもが生まれる確率は
男女の婚姻と比べたら
同性同士で婚姻した場合の方が
低くなるらしい。
そう言う意味では、
高位貴族や、貴族の嫡男が
男同士で結婚することは
推奨はされていないらしい。
特に古い考え方の
年配者の中にはやはり
血を残していくと言う意味で
男女の婚姻を推し進める者も
少なくはないという。
でもエリオットもミゲルも
そういう人たちは
相手にしていないようだし
風評被害っぽいことや
社交界に出たら嫌味を言われたり
からかわれるようなことも
あるようだったが、
全く気にしてないようだ。
俺は正直、そういったこととは
全く関係ない。
社交界にはあまり出ないし、
何と言っても俺の父は公爵家だ。
父とヴィンセント、というか
ハーディマン侯爵家に守られて
世間で俺がどのように言われているかなど
俺の耳に入ってくるわけがない。
ヴィンセントに聞いても
「大丈夫だ」しか言わないし、
俺も気にするのはやめることにした。
ただミゲル曰く、
俺とヴィンセントの婚姻がきっかけで
高位貴族の中でも同性同士の
婚姻に関して意見を言う者が
少なくなって来たらしい。
まぁ、公爵家の次男と侯爵家の
長男との婚姻にケチをつけることが
できるような者は、いないだろう。
しかも俺たちの婚姻は
陛下が王命で下したものだし。
文句を言えば、陛下の決定に
異を唱えることになる。
そう、つまり俺は結局、
いまだに多くの大人たちに
守られて生きているってことだ。
俺も18歳になったんだけどな。
そうそう。
俺は18歳になり成人したが、
成人の儀をハーディマン侯爵家と
合同でしてもらうことになった。
ヴィンセントとの婚約披露宴みたいな
ものをする予定なのだ。
もう結婚しているが、
高位貴族たちを中心に
周知はされているものの
お披露目はしていないので
とりあえずそのパーティーになる。
その後、兄の結婚式を待って
俺たちの結婚式をするつもりだ。
ただ兄が結婚式なら一緒にやれば
経済効果も上がるよ、などと
父や陛下に進言しているので
もしかしたら俺と兄の結婚式も
同時期になるかもしれない。
兄の案では、兄の結婚式を
先にして、その一か月後に
俺たちの結婚式をしたら
少なくとも2か月間はこの国で
イベントをしたり、お祭りを開催したり
経済効果を上げることができるし、
それはレオナルドの国も同様になる。
結婚式を毎年行うよりも
絶対にこの方が良いと力説していたから
この勢いでレオナルドの国の
国王陛下に陳情に行きそうだ。
まぁ、俺は結婚式はどっちでもいい。
というか、いつになってもいいと
言うべきか。
だって俺とヴィンセントは
すでに結婚しているし。
それに前世の世界だったら
写真があるので前世妹に
送ってやることもできるが
この世界には肖像画ぐらいしかない。
しかも絵を描いてもらっても
キャンバスはデカイから
あの設定集に挟めない。
そうなると前世妹に
送ることができるかどうかも
わからないから、
結婚式を無理にする必要は
無いかな、って思ってる。
でも盛大に結婚式をすることで
この国のためになるのなら
もちろん協力はする。
この国が栄えることは
俺にとっても嬉しいし、
俺の大事だった前世妹にとっても
嬉しいことだと思うから。
前世妹とのやりとりは
さほど多くはない。
それでも、たまに設定集に
妹の言葉やメモ、写真が挟まっていると
嬉しくなる。
こちら側の世界と向こうの世界では
時間の流れる感覚が違うみたいなので
いつか俺が妹と同じ年齢になる日が
来るかもしれない。
ただそうなると俺が先に
老衰で死んでしまいそうだが、
それまでには前世妹も
兄離れをするだろうし、
俺も妹離れができるだろう。
今はその準備段階だ。
徐々に接触を減らし、
互いの幸せを祈っている。
俺は今、穏やかに
のんびり過ごしている。
空いた時間には、
秘密基地で魔術の本を読んだり
実験をしたり。
もちろん、学校も楽しいし
ヴィンセントとも仲良くしている。
ジュは秘密基地を住処にしたようで
俺のそばにいるよりは
秘密基地に作った寝床で
寝そべっていることが多い。
ヴィンセントはたまに
「勝った」とか言ってるから
ジュと遊んでいるのかもしれないが
ジュが秘密基地にいるときは
俺がヴィンセントと一緒に居る時が
多いので、もしかしたらジュは
俺たちに気をつかっているのかもしれない。
ヴィンセントはジュがいても
すぐに甘い空気で俺を抱き寄せるから。
ゆっくりと穏やかな日々。
ずっとこんな風に過ごせたら
俺は幸せだろうな。
そう思っていた俺の日常が
あっと言う間に崩れたのは、
俺がミゲルののろけ話を聞いた
この日から数えて3日後のことだった。
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