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溺愛と結婚と
162:性欲
しおりを挟むヴィンセントは俺に手を
取られて驚いた様子だったが
何も言わずに俺のなすがままに
なっている。
なので俺はそのまま
ヴィンセントの指を口に入れた。
見上げた先の目が大きく
見開かれ、さらに瞳の奥に
見え隠れしていた熱が
熱く孕むのがわかる。
「……俺を誘ってんのか?」
かすれた声でヴィンセントが言う。
俺は口に入れた指を
口の中で舐めた。
繋いでいた時には
気が付かなかったけれど。
ヴィンセントの指は
俺が思っていた以上に
太く、ゴツゴツしていて。
この指が昨日、
俺の身体に入ったのだと
思い出すだけで生々しい感覚が
思い出されて体が熱くなる。
俺が指をちゅっと吸って
それから指を開放した。
誘ってるわけではない。
だが。
「僕も、だから」
俺はヴィンセントに手を伸ばす。
うん?とヴィンセントが
一瞬、首を傾げる。
「だから、僕も」
伸ばされた腕を掴んだ。
「僕も、触れたい」
ヴィンセントが俺を求めるように、
俺だって、ヴィンセントを
求めてるんだ。
俺の言葉にヴィンセントは
それこそ大きな仕草で驚いて。
そして身をかがめて俺を
力いっぱい抱きしめて来た。
のに。
俺がその腕の中で
力を抜いたらヴィンセントは
そっと俺から体を離す。
「その、イクス。
イクスが言うその……触れたい、と言うのは」
なんで、急に理性を取り戻すかな。
俺がいつまでもヴィンセントを
兄扱いしてたから、
俺が『可愛い弟』枠から
外れようとすると
俺を守るための『兄センサー』
でも働くのだろうか。
俺は今、自分が理性を無くしてまで
求められていると言うことに
震えるほど。
無性に悦んでいるというのに。
精神が高ぶっていて、
今ならなんだってできそうなのに。
今の俺に必要なのは
『兄枠』で甘える相手ではない。
対等に、求め合える相手なのだ。
そしてそれは目の前にいる
ヴィンセントしかいない。
俺はまだ精通も来てないし、
昨日のことを考えたら
性欲ってのも、無いような気がする。
もともと前世でも淡泊な方だったし。
でも今は違う、気がする。
ヴィンセントが俺を見る瞳が
あんなに熱く、情欲をにじませて
いるのを見て、俺はきっと変わった。
前世では妹もいて
俺は自慰さえする環境も
余裕もあまりなかった。
性欲を感じる必要が無かったし
だいたい、そんな相手もいかなった。
恋愛をしている余裕もなかったし、
むしろ、恋愛とか性欲とか
そんなことは煩わしいものだった。
だって、俺には生活があったから。
妹の面倒を見て、仕事をして。
せめて妹が独り立ちするまでは
俺はそんなことに時間を割く
余裕はなかったのだ。
逆に考えたら、きっと俺は
そう思うことで、自分の欲を
押さえつけていたような気がする。
それらに目を向けてしまったら
妹を一番に考える生活が
できなくなってしまうから。
でもやっぱり俺は生きていて。
愛されたいし、愛したい。
そういう欲があるのが普通で。
この世界に生まれ変わっても
俺は相変わらず恋愛に淡泊で
性欲なんて関係ないって
感じでいたけれど。
でも、違うって思った。
ヴィンセントの熱に孕んだ瞳を見て。
俺は、こういう瞳で求められたかった、
って思ったんだ。
そして自分も。
きっと自分もこんな瞳で
ヴィンセントを見ている。
もうこの世界には妹はいない。
自分を押さえて生きる必要ないんだ。
なら俺は、
俺が欲しいものを手に入れる。
誰にも譲らない。
それはヴィンセント自身にもだ。
「言ったよね?
もう、ヴィー兄様じゃないって。
ヴィンスは僕の伴侶で、
対等なパートナーだって」
俺はヴィンセントを見る。
目を背けるなんて許さない。
だって、ヴィンセントが
先に俺を望んだんだ。
それがなかったら俺だって
自分のこんな気持ちには
気が付かなかった。
「僕だって、ヴィンスに
触れたい。
だってヴィンスのことが好きだから」
わかるか?
もう、兄弟愛じゃないって。
欲情してるかと聞かれたら
まだ幼い身体なので
そこまでではないかもしれない。
でも。
「ヴィンスを僕だけのものに
したいって欲は、
僕にだってあるんだ」
俺が言うと。
ヴィンセントは目元を緩めた。
「まいった。
ほんと、イクスには敵わないな」
ヴィンセントは俺の頬に触れた。
「いつも。
俺はイクスと会う度、
話をする度に恋に落ちてる」
あれ?
今、そんな甘い告白をしあう空気だったか?
喧嘩を売っていたわけではないが、
もう少し険しい空気だったと思うのだが。
「恥ずかしがるイクスも可愛いが、
俺を好きだって、
そうやって全身で主張するイクスは
可愛いだけでなく、綺麗だな」
「は? え?」
「顔も、首も、耳も。
真赤になって、俺をにらみつけて
愛を告白してくるんだ」
頬を包み込むヴィンセントの指が
俺の唇をなぞり、
唇が、俺の首や耳に触れる。
「イクスが俺を求めてくれる日が
来るなんて……」
指が俺の唇をつつき、
口の中に入ってくる。
「その言葉に、後悔はない?」
優しく聞かれて、
俺は舌をつままれる。
返事はできない。
きっと、わざとだ。
俺があとで、やっぱり無理って
そう言えるように
ヴィンセントは俺に逃げ道を
用意してくれている。
そんな逃げ道はいらないと
俺が首を縦に振ろうとしたら
ヴィンセントは先に俺の
舌から手を離して
俺に深く口づけた。
両頬を包み込まれ、
上から押さえ込まれる。
俺はソファーに座っていたから
立っていたヴィンセントに
身をかがんで抱きしめられるだけで
身動きが取れなくなる。
何度も唇が重なり、
舌が絡められる。
どう応えて良いのか
分からずにいたが、
ヴィンセントは気にせずに
俺の舌を吸い、こぼれる唾液さえ
気にしていない様子で
俺の頬の裏側や歯まで舌で触れ、
舐め、俺を蹂躙した。
ようやく口付けから解放された時
俺はすでに疲労困憊で
「愛の告白? なにそれ。
おいしいの?」状態だった。
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