【完結】「誰よりも尊い」と拝まれたオレ、恋の奴隷になりました?

たたら

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溺愛と結婚と

161:じっくり、ゆっくり

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 俺たちが部屋に戻ると
脱ぎ捨てていた寝間着などが
綺麗に片づけられていた。

水差しの水もグラスも
新しいものになっていたし、
寝室を見たらベットシーツも
取り換えられている。

俺はこれからどうなるのか
心臓がバクバク鳴ってて
部屋に着いたらとにかく
ソファーに座らせて欲しいと
嘆願した。

ヴィンセントは俺の様子を
見て何故か嬉しそうな顔をする。

何故そんな顔をする?

と俺が唇を尖らせると、
ヴィンセントは人差し指と
親指で俺の尖った唇を摘まんだ。

「あまり可愛い顔をするな」

いや、可愛いじゃなくて、
俺は不満を表す顔をしたのだが?

俺がヴィンセントの指を
外そうと体を動かすと
ヴィンセントはすぐに
指を離して俺をソファーに
座らせた。

「イクスが可愛い顔で
俺を意識してるから嬉しい」

そう言いながら
ヴィンセントが俺の隣に座る。

腰を引寄せられ、
そうだろ? と耳元で言われたら
俺の顔がすぐに熱くなる。

「イクスが俺を意識して
顔を真っ赤にして
俺を見つめてくるんだ。

嬉しくならないわけがないだろう?
イクスの顔が、俺を好きだって
そう言ってる」

引寄せられて頬に唇を当てられる。

そうなのだが!
ヴィンセントのことは
確かに大好きなのだが。

なんだ?
ヴィンセントってこんなヤツだったのか?

なんか甘い!
カッコイイ頼れる兄だったのに、
色気駄々洩れの色男になってる気がする。

いつも【兄】の顔をしてた
ヴィンセントの豹変に
俺はついていけそうにない。

しかも、それを俺は
嫌じゃないのだから、
困ったものだ。

ちゅ、ちゅ、と頬にキスを
していたヴィンセントが
さらに俺と密着してきた。

「なぁ、イクス。
昨日の続き……してもいい?」

今!?
やっぱり今から!?

今夜じゃなくて?

いいよ、って言うべきか?
それとも恥ずかしいから
夜がいいって言うべきか。

俺、前世も含めて
恋人とかいたことないから
こんな時、どう返事をしたら
いいのかわからない。

というか、これは
拒否ってもいいものなのだろうか。

俺が返事をしていないのに
ヴィンセントの指は
いつのまにか俺の足に伸び、
膝を撫でられる。

膝を指でくるりと撫でられ、
内股に長い指が触れると
俺は反射的にその指を
両足で挟んでしまった。

するとヴィンセントは
笑いながら「嫌か?」と聞いて来る。

嫌ではない。
嫌ではないが……

答えに貧窮していると
ヴィンセントはまた笑う。

俺が本気で嫌がっていないのが
わかっているのだ。

「嫌じゃないなら
じっとしてろよ」

って指が俺の内股に
潜り込んでいく。

しっかり両足を閉じたのに、
指は難なく俺の内股に伸びて
つーっと指先で下から上へと
俺の肌をなぞった。

俺はその感覚に
思わず体の力が抜ける。

すかさずヴィンセントは
さらに指を進めた。

やんわりと、布地の上から
男根に触れられる。

恥ずかしすぎて、
俺は顔をあげることができない。

しかも自分の手をどこに
置いたら良いのかわからずに
俺は結局、ヴィンセントの
シャツを握りしめた。

「大丈夫、慣らすだけだから」

何を?
って聞きたいが、
聞いたら後悔しそうだ。

ヴィンセントの指は
下半身からゆっくりと
俺の腹へと移動する。

まるで俺が焦るのを
楽しむかのように
ゆっくりと布の上から
俺の肌に触れ、指を滑らせる。

指が動くたびに
俺が息を飲むのでヴィンセントは
笑って俺の頬にキスをした。

「力抜いて。
俺が怖いか?」

そんなわけない。
首を振ると、良い子だ、と呟かれる。

長い、けれども太く、
剣を持つ指が俺のシャツの
中に潜り込んできた。

指が俺の腹を撫でてる。

ヴィンセントの指に
意識を向けていたら
不意に唇が重なった。

あ、って思って。

唇に意識を向けたら、
今度は指が俺の……胸に触れた。

驚いて、胸に意識が向いたら
今度は唇を舐められる。

舐められた!って思ったら、
胸に触れた指が
俺の突起を摘まんだ。

びっくりして口を開けたら
今度はヴィンセントの舌が
俺の舌に絡みついて来る。

もう俺は半分パニック状態で。

「可愛いな、イクスは」

なのにヴィンセントは
そんなことを言って、
俺を残してソファーから下りた。

俺はもう涙目になっていて、
自然と俺を見下ろすヴィンセントを
見上げる形になる。

ヴィンセントの指が
俺の目尻の涙を拭ってくれたが、
俺はヴィンセントを見上げたまま
動けなかった。

だって。
可愛いとか、ヴィンセントは
いつも俺に言うのと
同じ言葉を言っているだけだったのに。

俺を見下ろす瞳は、
いつも俺を見ている瞳ではなかった。

真剣な、熱を孕んだ瞳だった。

情欲、と言えるのかもしれない。

ヴィンセントが俺の見る瞳に、
こんな熱く孕んだ欲が
にじみ出るのを俺は初めてみた。

ずっとヴィンセントは
こんな瞳で俺を見ていたのだろうか。

いくら鈍感な俺でもわかる。

この瞳は、俺を欲しがってる瞳だ。

俺を、求めている……

ゾクっとした。
足のつま先から、俺は震えた。

怖い、ではない。

けれど、これほど明確に
俺は他人から何かを求められたことは無かったから。

前世で俺は妹を大事にしていたし、
与えることができるものは
すべて与えて来た。

でもそれは俺ややりたかったからだ。
妹の面倒をみるという義務も
その中には混ざっていたけれど。

でも妹が、わがままで
俺から奪ったものや、
妹が欲しいからと俺から
持っていったものは何一つない。

俺は妹が欲しがる前に
欲しがりそうなものを先に
与えて来たからだ。

ずっと俺はそんな感じで生きて来た。

この世界でも俺は
【力】のことがあったから
自分にできることはやろうと思ってたし、
誰かから切実に求められて
動いたわけではない。

そりゃ、国が亡びるとか
世界が崩壊するとかになったら
大変だからそう言った意味では
求められたのかもしれないが。

俺を、俺個人を。
俺だけを欲しいと、
そんな瞳だけで俺を求める者など
いままでいなかった。

そのことに、驚きと、
求められる少しの恐怖と。

言いようのない喜び、
と言えばいいのだろうか。

悦び、と言ってもいい。

純粋な、子どもが持つ喜びではなく
俺は間違いなく、愛憎に絡んだレベルの
欲を、求められる悦びを、
俺は自分自身の中に見つけた。

そう、俺は。
ヴィンセントに肉欲に孕んだ瞳で
見つめられて、悦んでいるのだ。

その事実に驚き。
気が付けば俺は目尻に
触れていたヴィンセントの
指を掴んでいた。


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