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溺愛と結婚と
158:前戯後【ヴィンセントSIDE】
しおりを挟むベットの上でぐったりとした
様子で眠ったイクスを見て
俺は愛しい気持ちを抑えきれなかった。
とうとう、この白い肌に触れてしまった。
俺が欲望に満ちた手で触れたら
壊れてしまうのではないかと
ずっと思っていたイクスに。
俺はとうとう触れ、
しかも俺の欲にまみれた
精液まで綺麗な肌にぶちまけた。
だがイクスは笑ったのだ。
「洗ったら大丈夫。
ヴィー兄様、大好き」と、
俺が思っていたよりも
イクスは強いのかもしれない。
イクスは俺ごときの欲では
穢すことなどできやしないのだ。
この世界を、そして王都を
イクスは守るぐらい
稀有で強い存在だった。
そしてその稀有な存在の
イクスが、俺を求めてくれた。
俺は叫び出したいぐらいだ。
本当は初夜まで済ましたい
気持ちはあった。
だが、イクスの身体の幼さを
考えると、それは無理そうだ。
あの狭い体内を考えると
じっくり、ゆっくり
慣らした方がいい。
だが、それすらも
俺の采配だと思うと
嬉しくなってしまう。
イクスの身体を。
誰も触れることのない
あの綺麗な肌を、
俺が蹂躙するのだ。
俺だけの、
俺を受け入れる為の身体に、
俺が慣らしていく。
そう思っただけで
先ほど吐き出した欲棒が
また熱を持ち始める。
落ち着け。
俺は深呼吸する。
イクスを俺は守りたい。
と、同時に、
この肌を穢したいという衝動に
駆られることもある。
愛するイクスを
自分だけのものにしたいと言う
醜い独占欲だ。
俺は自分の欲棒に触れる。
ダメだと思いながらも
俺はイクスの可愛い顔を
見ながら、夢中で欲望を扱く。
いつかイクスの中で
精液を吐き出す日が来る。
その瞬間を、思い描く。
「イクス、好きだ」
アイシテル。
そんな言葉では
この感情を言い表せそうにない。
俺は昂るままに、
手の動きを早めた。
呼吸が荒くなる。
イクスの肌に触れて
出来れば達したい。
だか、それはダメだと
頭の片隅にある理性が拒絶する。
意識のないイクスを
俺の身勝手な欲で
穢してはならないのだ。
だが、イクスの肌を前に
俺が欲望を吐き出すのは
許して欲しい。
触れたくて。
ずっと求めた肌に触れた手で
俺は自分の欲棒を夢中で擦る。
「ふ」と殺していた息が漏れ、
俺は精液を手に吐き出した。
長く息を吐き、
男くさい匂いのまま
俺はイクスの顔を見る。
あどけない顔のイクスが
目を覚ます気配がない。
俺は安堵して、
少し躊躇ってから
俺はイクスに口づけた。
この可愛い唇で、
俺を求めて欲しいが、
今はただの妄想でしかない。
幼いイクスには、
もっと快感を教えないと
自ら求めるなどできないだろう。
俺はもう一度、浴室に戻った。
冷たい水で汗と精液を洗い流す。
まずは落ち着け、と
俺は自分自身に言う。
そうでないと、また俺の
欲棒が暴走しそうだ。
俺は無造作に頭を洗い、
何度も呼吸をする。
そして心を落ち着けるべく
今朝のことを思い浮かべた。
侍従から手紙が来ていると言われ
受取ると、俺の父からだったのだ。
手紙には王都は現在
平穏無事だということと
何が起こったのかは
結局は官僚たちには
知らせていないことが書かれていた。
そして官僚たちが集められた日、
イクスが王宮に来ていた理由は
陛下によって誤魔化されたままらしい。
ただし、オーリー魔法師団長が
イクスの才能や魔力を知り、
王家が出資して魔術研究所を
作って欲しいと嘆願しているのだとか。
その責任者として
オーリー魔法師団長が名を挙げて
第一号の研究員にイクスの名を
挙げているという。
官僚たちは、イクスが王宮に
呼ばれ、なおかつ自分たちが
呼ばれた理由は、
この魔術研究所設立に関してだろうと
噂しているという。
陛下はその案に乗る気らしく、
いずれ、正式な打診がイクスに
あるだろうと書いてあった。
あとパットレイ公爵家が
イクス不在でかなり落ち込んでいるらしい。
公爵殿も兄のレックスも、
王宮ですっかり気落ちしているようなので
早めに休暇を終えて帰ってくるように、
とも書いてあった。
だが陛下直筆のカードも
同封してあり、
褒賞休暇は2週間、と書いてあった。
つまり俺とイクスはまだまだ
ここでのんびりできるのだ。
2週間ずっとイクスとイチャイチャできる。
そう思うと嬉しくて仕方がない。
イクスの身体を2週間かけて
ゆっくり慣らしていこう。
すぐに子どもが欲しいとは思っていない。
イクスは結婚したことで
成人とみなされているとはいえ、
まだ学生だ。
身体を繋げるまで
時間を掛けても構わないし、
イクスが精通するまでは
抱かれることで快楽を得るのだと
身体に教え込んでもいい。
そこまで考え、俺は首を振る。
イクスと触れあえたことで
急に気が大きくなったのか、
あり得ない妄想までしてしまった。
イクスを快楽で支配するなど……
あってはならない。
あってはならない、のだ。
俺は最後に水をかぶって
浴室を出た。
イクスはすぐに俺を狂わせる。
だが。
イクスは俺をアイシテルと言ったし、
俺を欲しいとも言ってくれた。
なら、いいのでは?
そろそろもっと関係を深めても。
そう思い、俺は眠るイクスの前に立つ。
タオルで髪を拭きながら
水滴が落ちないように
イクスの顔を覗き込むと
イクスは幸せそうな顔をして眠っていた。
「そろそろ……兄様は卒業してもらわねばな」
閨の時間まで、ヴィー兄様と
呼ばれては、背徳感が半端ない。
年の差があろうと、
イクスには俺の名を愛称で呼んで欲しい。
俺を愛称で呼ぶ者は
実は家では誰もいなかった。
父は騎士団を率いているからか
常に自分を厳しく律しているのだろう。
子どもに対しても
甘やかすことなく、
俺を愛称で呼ぶこともなかった。
母は可愛らしい女性だが
父の目を気にしてか、
母もまた俺を愛称で呼ぶことは無い。
別にそれが嫌だと言うわけでもないし、
愛称で呼んで欲しい等思っていない。
ただ。
俺が愛する人には、
特別な名で呼んで欲しいと
思っているだけだ。
明日イクスの目が覚めたら
言ってみようか。
愛する者からは
愛称で呼んで欲しい、と。
つい先日まで、
兄でも構わないなどと
言っていたのに
イクスの肌に触れた途端、
それでは我慢できなくなった。
自分でも現金な奴だと思う。
だが、もう駄目だ。
一度触れてしまったのだ。
無かったことにはできない。
過保護と言われようが
独占欲が強いと言われようが
関係ない。
俺はイクスだけを見て
生きて行ければいいのだ。
俺の想いがこんなに重たいと
イクスが知ったらどう思うだろうか。
そう思うと不安になる。
だが、きっと。
イクスは笑って受け止めてくれるような気がする。
「僕もヴィー兄様のこと好きー」と
笑ってくれると思う。
イクスは俺が何をしても
どんな失態をしても
笑って受け入れる存在だから。
俺はシャツを羽織り、
イクスの隣に潜り込む。
初夜ではないが、
一緒に眠るぐらいはいいだろう。
今までだってそうしていたのだし。
俺は都合よく兄に戻ると
イクスを抱きしめ、目を閉じる。
ずっと伴侶で、たまに兄。
こういうのもいいかもしれないな。
つまり、伴侶で無理な時は
兄になればいいし、
兄では無理なら恋人か
伴侶になればいい。
俺はそんな都合の良いことを
考えながらイクスのぬくもりを感じる。
この先、幸せしかないような気がする。
俺はそんなことを思いつつ
ゆっくりと眠りへと落ちた。
イクス。
アイシテル。
そう何度もつぶやきながら。
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