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高等部とイケメンハーレム
103:追加パックは不要です
しおりを挟むこの世界のことも、
前世妹のことも、
隠していたことをヴィンセントに
話すことが出来て、
俺はかなりすっきりした。
ヴィンセントにそんな
荒唐無稽な話をしても
俺に対する態度は変わらなかったし、
むしろ、過保護になったと思う。
全面的に俺を信じてくれるヴィンセントに
俺は安心したし、もっと好きになった。
だから、忘れていたのだ。
学校で俺がレオナルドの世話役を
仰せつかっているということを。
王宮の庭でヴィンセントと
話をした後、ジュは疲れたのか
俺の内ポケットの中で
ぐっすりと眠っていた。
起こさないように
俺の部屋のクッションの上で
ずっと寝かせているが、
3日経っても起きようとしない。
俺は心配だったが、
医者に見せることもできず、
リタに言って、
お菓子を入れる篭に
柔らかい布やクッションを
入れたものを準備してもらい
その中にジュを入れた。
父にはジュのことを話しているので、
俺が学校に行っている間は
ジュは篭ごと父に預けている。
精霊の存在は秘密にしているし、
学校に連れて行くわけにもいかない。
眠り続けているジュは心配だが
なにせ相手は精霊だ。
病気とかではなく、
ただ力を使い過ぎただけだとは思う。
なので俺は学校を休むこともできず
しかたなく登校したのだが。
レオナルドを説教して今日で3日目。
とうとうレオナルドが登校してきた。
朝、登校した後、
ミゲルとヴァルターとおしゃべりしてたら
クルトと一緒にレオナルドが
教室にやってきたのだ。
クルトとはいまだに
ちょっと顔を
合わせずらいけれど、
クルトは自然に俺に笑いかけてくれる。
さすが王族だと思う。
どう考えても俺が王族に嫁ぐ日は
来ないと思うけれど
それでも、もしクルトが
今後、困ったことになったら
絶対に俺は手を差し出そう。
そう決意したのだが。
その数秒後、
俺はやっぱり前言撤回したくなった。
だって。
「王命だと思ってもらって大丈夫だ」
とすまなそうに言うクルトに
満面の笑みのレオナルド。
そうだ。
そうだったね。
俺はレオナルドの世話役に
任命されたんだ。
……王命で。
クルトの話では、
レオナルド殿下は留学中は
王宮の中にある離宮に
客人として住むようになったらしい。
数日中には、レオナルドの国から
侍女や侍従たちがこの国に
来るだろうし、
それまでは食事や
登校用の馬車などは
クルトと一緒に行動することで
なんとか賄うらしい。
離宮の手はずが調ったら
移動や食費などの生活費は
すべてレオナルドの国が
負担をすることになっているらしく
王家としても、そこまでして
留学を望むのであれば、と
俺が世話役に着くことを含めて
了承したらしい。
はは、いいけどな。
俺が嫌がったせいで
隣国と戦争になるとか、
兄の縁談が破談になるなんてことは
遠慮したいし。
だが。
この数日で、アキレスは
俺のそばで護衛をしつつ
何かとキラキラした瞳で
俺を見てくるし、
そしてこのレオナルド。
レオナルドまでも
何故か期待に満ちた瞳で
俺を見てくるのだが。
なんなんだ?
俺に何を求めてるんだ?
「その、悪いな。
押し付けるみたいで」
こっそりとクルトが俺に言う。
「ううん。へいき。
それよりクルトこそ、大丈夫?
顔色悪いよ」
レオナルドに振り回されてるんだろうな、きっと。
「あぁ、俺も大丈夫だ。
それよりも、思った以上に
話が通じないぞ。
どうしても無理だと思ったら
我慢せずに言ってくれ」
「うん、ありがとう」
クルトにここまで言われるとは、
いったい何をしたんだ?
とにかく慎重にいこう。
俺はレオナルドをミゲルと
ヴァルターに紹介した。
二人は王族と言うことで
緊張していたようだが、
すぐに打ち解けた。
「俺のことはレオと呼んでくれ」
とレオナルドが開口一番言って、
それから、この国の王宮の噴水が
物凄く綺麗だったとか、
食事の案内をしてくれた侍女が
ものすごく美人だったから
声を掛けたらクルトに叱られたとか。
とにかく、とりとめもなく
どんどん話をしてくる。
もうなんか麻痺してきて
不敬とか考えられなくなっしまった。
ツッコミどころも多いし、
遠慮していたら話は何も進まない。
気が付くと俺たちはレオナルドを
「レオ」「レオ様」と気安く呼ぶように
なってしまった。
ちなみに俺は心の中では、
レオ太、レオ助、と
飼い犬を呼ぶような
気やすさで呼んでいる。
だってさ。
もう、素直で考えなしで
動いてしまう大型犬みたいなんだ。
ほら、レオ、取ってこーい、
何て言って棒を投げたら
本当に取りに行きそうな感じだ。
そして何故か俺に懐いている。
というか、俺を主人として
認めている駄犬のようだ。
俺の反応をいちいち見て
しっぽを大きく振って
褒めて欲しそうな犬のような顔をしているし
俺がレオナルドの行動を聞いて
ちょっといさめると、
きゅーん、と悲しそうな目をして
何が悪かったかを説明する
俺の話を一生懸命に聞く。
あれだな。
一番最初にくどくど説教して
心が折れるまで、繰り返し
権力を持つ者の義務と危険性に
ついて話してやったから、
あれで俺を群れのボスだと
認識したんだな。
そうに違いない。
なにせレオナルドはそれから
授業が始まろうが
休み時間になろうが、
とにかく俺にベッタリだった。
これが恋愛関係っぽい視線だとか
態度だったら俺も警戒するのだが
どう見ても、御主人さまに
褒めてもらいたい駄犬にしかみえないのだ。
それはクルトとヴァルターも
同じ意見のようだ。
だってレオナルドが、クルトに俺に
ひっつきすぎだと叱られている間に
ミゲルが小声で言うのだ。
「なんか、主人から引き離される
犬みたいで、哀れっぽいですね」
ヴァルターも頷く。
「ありゃ、捨て犬が
初めてのご主人様に懐いたって
感じだな」
はは。
俺は駄犬にしかみえないですけどね。
ついでにアキレスと言う名の
忠犬はすでにそばにいる。
俺、追加パックはいらないのだが。
そしてこの二人。
追加された攻略対象というよりは
ペット枠だよな?
俺、イケメンハーレムは拒否するが、
イケメンをペットとして愛でる趣味もないのだが。
バカ妹め。
俺を妙な性癖キャラに改変したりしてないよな?
尊いイクス様の中身が、死んだ兄だと知って
ヤケになってる可能性も
否定はできない。
俺は平穏な生活をしたいだけなのだ。
駄犬も忠犬も必要ないし、
バカ妹の妄想も勘弁して欲しい。
俺は前途多難な学生生活が始まったと、
こっそりとため息をついてしまった。
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