【完結】「誰よりも尊い」と拝まれたオレ、恋の奴隷になりました?

たたら

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魔法と魔術と婚約者

42:き、キスですが!?

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  ヴィンセントがミゲルとエリオットとの
恋を応援してくれると言ってくれたのが
嬉しすぎて俺はヴィンセントに抱きついた。

までは良かったのだが。

なんか頬に、
ヴィンセントの唇がくっついた気がする。

え?
キスですか?

いや、気のせいなのか?
いや、でも、だがしかし。

頬に柔らかい感触がしたのだ。
絶対にした。

ヴィンセントが俺の耳元で
小さく声を出したから、
偶然、頬に唇が当たったのだろうか。

いやだがしかし。

俺は頭の中がぐるぐるしたが
いやいや、と思い直した。

……狼狽えるな、俺。
たかが頬にキスだ。

前世含めて30歳を越えた俺が
頬キスぐらいで狼狽えるわけがない。

「イクス?」

「ひゃ、い」

俺から離れてヴィンセントは
どこに行こうか、と
自然に話を続けるのだが。

なんだ?
その余裕は。

やっぱりさっきのキスは
偶然だったのか?

いや、それならそれでいいが、
なんだ、このイケメンっぷりは。

イクスオレじゃなくても
恋に落ちるぞ。

この、罪作りなイケメンめ。

俺は赤くなった頬を隠すために
ヴィンセントから体を離して
向かいのイスに座った。

俺とヴィンセントの間には
小さなテーブルがあったが、
あまり大きなものでは
なかったから、
ほんの数歩で俺は元のイスに
戻ることができる。

俺が椅子に座り直すと、
ヴィンセントは改めて
俺を見つめて来た。

なんでそんなに見つめる?

「ヴィー兄様?」

俺、なんかしたか?

「あ、いや。
久しぶりにゆっくりと
顔を見たなと思ってな」

そう言われたらそうだな。
学校で会わなくなってからは
疎遠と言う程ではないが
手紙のやりとりが多くなった。

とはいえ、ヴィンセントは
何も無いのに手紙をやたらと
送ってくるから
俺も返事を書くのに必死だ。

だから久しぶりに会ったとはいえ、
俺はそんなに離れていた気はしない。

なのにヴィンセントは
俺を見つめたまま、
やんわりと笑った。

その顔に心臓がドクン、と鳴る。

イクスが弱い顔だ。

いつも厳しい顔をしているのに、
不意に、こうやって
優しい顔をするから、
俺は無性にわめきたくなる。

だというのに、
大きな手が俺の頭を撫で、
頬に触れた。

指先が俺の頬を
すり、っとなぞって離れていく。

「変わりはなさそうだな」

当たり前だ。
ずっと手紙でやりとりしてただろ?

どれだけ過保護なんだよ。

「僕はずっと元気です。
怪我もしてないし、
無茶もしてないです」

俺が唇を尖らせて言うと、
ヴィンセントは言葉を詰まらせる。

「いや、イクスがあぶなっかしいとか
そう言うわけでは無くて、
ただ心配……いや。
その……そうだ。

エリオット先輩のこともそうだが、
今度の長期休み、
俺の領地に遊びに来ないか?」

「行く」

俺は即答した。

だってハーディマン侯爵家の
領地は楽しすぎる。

また川で遊びたい。
以前行った時は、
一度も魚を釣ることが
できなかったのだ

次は絶対に挑戦したい。

俺が即答したせいか、
ヴィンセントの焦ったような顔が
すぐに笑顔に戻った。

「それと、公爵殿にも
確認してからだけど、
来年までに。

俺が18歳になるまでに、
一緒に辺境伯領にも来て欲しいんだ」

「辺境伯領?」

なんだそれ、
めちゃ面白そうな響きだ。

「あぁ、ハーディマン公爵家は
辺境伯領とは縁続きなんだ。

それで俺の成人の儀式を
辺境伯領ですることになってな」

なんで?
と俺が首を傾げたからだろう。

ヴィンセントはハーディマン侯爵家と
辺境伯の繋がりを話してくれた。

それは俺がかつて
ハーディマン侯爵家の図書室で
読んだ過去の当主の
日記と同じ内容だった。

辺境の地を守るために
ハーディマン侯爵家の優秀な者は
辺境伯の当主として
迎え入れられることがある。

国の情勢が安定している
ここ数十年はそのようなことは
一度もないらしいのだが、

ハーディマン侯爵家の人間が
成人をした際は、
その者の優秀さを見極めるために
辺境伯領地で成人の儀をすることが
習わしなんだとか。

この世界では前世みたいに
成人式というのはない。

各領地で成人を迎えたら
儀式のようなものをする領もあれば、
お祝いパーティーだけをして
それで終わりにする家門もある。

もちろん、各家の懐事情もあるので
娯楽に使う余裕がない貴族や
平民は成人したからと言って
わざわざ何かをすることはない。

たまたまヴィンセントのところが
特殊なケースなだけで、
実際、俺の兄は来年には
学校を卒業して成人として
認められるのだが、
本人は学校の卒業パーティーが
成人のパーティーみたいなものだから
何もしなくて構わないとか言っている。

まぁ、そうは言っても、
父や母は何かするとは思うが。

ヴィンセントはすでに成人を
迎えてはいたが、
辺境伯領地は遠く、
成人の儀をするつもりは
なかったらしい。

だがここにきて、
辺境伯からぜひ領地に
来て欲しいと手紙が着たそうだ。

そこでせっかく行くのだから
俺を誘おうと思ったらしい。

「辺境伯領に行くとなると
数日では戻って来れないからな。

学校では全く会えなくなってしまったのに、
長期休みでも会えないのは……」

ヴィンセントはそこまで言って、
急に口を閉ざした。

なんだ?
会えないのは、寂しいとか
言ってくれるのか?

まさかな。

俺が期待をしてヴィンセントを
見つめると、ヴィンセントは
ふい、と耳を赤くして横を向いた。

「俺が離れていると
イクスは何をしでかすか
わからないからな。

心配で、辺境伯領になど
行ってられない」

なんだそりゃ。
そんなに俺は心配かけてるか?

ヴィンセントが過保護なだけだと思うが。

「だから、イクスが望むなら
俺から公爵殿に打診しようと思う。
いいか?」

ヴィンセントの言葉に
俺は、もちろん、と大きく頷いた。

旅行かー。
初めての経験だな。

長旅になるかもしれないから
魔術のことを書いたノートは
持って行っておこう。

時間が空いたらそれで
色々考えることができるし。

そう、俺はノートに日本語で
さまざまな魔術の考察を書き溜めている。

というか、考察にならないメモも
沢山書いている。

何故かと言うと……

俺は自動翻訳機が脳にあるので
文字は読める。

少し前にリカルドから貰った
妙な魔法のハウツー本みたいな本だって
俺は完璧に読めた。

だが、読んだだけでは
何もわからなかった。

何を言っているのかと思うかもしれないが、
本当なのだ。

たとえば
『光と水を重ねたら種になり、
樹であればしずくになる』
なんて書いてある。

はぁ?って思わないか?

文字を読めても言葉の意味が
わからないから、
何を書いてあるのかさっぱりわからない。

この意味がわかれば
本の表紙に書かれていた
『属性を変える』ということが
できるような気がするのだが、
これも、俺が勝手に思っているだけで
確信はない。

だけど、俺は何か
新しいことや気が付いたことなどは
常にノートに書くようにしている。

書いているうちに
気が付くこともあるだろうし、
法則性みたいなものに
気が付くかもしれないからだ。

古書の内容は
誰にも知られないように
気を付けねばならないが、
ノートに書いた日本語を
読める者がいるとは思えないし、
まぁ、持って行っても大丈夫だろう。

俺が色々考えていると
ヴィンセントの大きな手が
俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。

「嬉しそうな顔をしてるな」

「うん、なんか楽しみ」

俺がそう言うと、
ヴィンセントは満足そうに笑った。








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