【完結】「誰よりも尊い」と拝まれたオレ、恋の奴隷になりました?

たたら

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子ども時代を愉しんで

18:気のせいでした

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 アリンガムさんは我に返ったように
俺を見下ろした。

「珍しい。
2属性持ちとは、さすがですな」

うん?
どうみても水晶には
風と水、光と樹、って
書いてあるんだが。

光と樹はスルーか?

「神官長殿、私には
まだ何か文字のようなものが
見えるのですが」

父が戸惑う様に言う。

「そうですな。
ですが、このような文字は
私も初めて見ました。

少し調べさせていただきたい」

なんですと?
どうみても光と樹じゃん!

そう思ったのに、
父もそれに頷き、
ヴィンセントに至っては何も言わない。

あれ?
もしかしてあの文字が読めるの
俺だけってこと?

そう思い、
俺は自分の自動翻訳機を思い出した。

俺にはわからないが
あの文字は俺以外の人には
読めない文字になっているのかもしれない。

そう考えると、
この世界の魔法が火、水、風、土、の
4大魔法と言われているのも
あやしくなるよな?

色んな魔法があるのに
誰も読めないから
なかったことになってるとか、
ありそうだし。

「このことは内密に。
何かわかりましたら
必ずお知らせいたしますゆえ」

アリンガムさんが言うと、
父も頷いた。

「そうですな。
文字に見えるような気も
しますが、気のせいかもしれません」

いや、父上よ。
気のせいではないぞ、きっと。

俺が心の中で盛大に
ツッコミを入れていると
俺を抱き上げていたヴィンセントの
腕の力が強くなった。

「大丈夫。俺が守る」

って何から?!

どうでもいいが、
耳元で囁かないでくれ。

甘い声にイケナイ扉が開きそうだ。

結局俺は、水と風の魔法の
属性を持っているということで
なんとなく話がまとまった。

こうなったら俺は自分で
自分の魔力のことを
調べるしかなさそうだ。

学校に通うようになれば
図書室もあるだろうし、
魔法を学ぶこともできるはずだ。

徐々に知識を付けつつ、
自分の魔力も試していこう。

俺がそう決意して
神殿を出ると、
いつのまにか公爵家の
馬車が神殿まで迎えに来ていた。

そこで父は公爵家の馬車で
帰るので、俺はヴィンセントと
一緒に街で遊んで帰ればいいと
言って一人で馬車に乗る。

「ヴィンセント君、頼んだよ」

「はい。何があってもお守りします」

何故か妙に固い口調で
ヴィンセントは父に頭を下げる。

そして俺はヴィンセントに連れられ
侯爵家の馬車に乗った。

俺、街に出るのは初めてだ。

いきなりの展開だがわくわくする。

「公爵殿は気を利かせてくれたのだろう」

「うん? なんの?」

ぽつりと言うヴィンセントに
俺が聞き返すと、
ヴィンセントは何でもないと首を振る。

「どこか行きたい場所はあるか?」

「えっとね。
街は初めてだからどこでも……
あ、でも。
お店を見てみたい」

できれば街を歩いてみたい。

俺がそう言うと
ヴィンセントは頷いた。

ただ、今の服装は
どうみても貴族の子息が着る
服だから、平民街に入るのは
難しいらしい。

また次の機会のは
必ず行こうと約束をして
俺は貴族街で馬車を下りた。

ヴィンセントに手を繋いでもらい、
おもちゃ屋、文具屋、
本屋と順番に覗いていく。

途中でキャンディーの店があり、
そこでカラフルな飴を
ヴィンセントに買って貰った。

「ヴィー兄様、僕、あれも欲しい」

最初はお金を支払ってもらうことに
遠慮をしていたのだが、
よく考えたら俺の家は
公爵家だし、ヴィンセントだって
侯爵家のしかも一人息子だ。

おこずかいぐらい持ってるだろう。

そう思うと、
急に気持ちが大きくなって、
俺はヴィンセントの腕を引き、
あれこれ強請って見せる。

するとあっというまに、
キャンディーが入った袋と
焼き菓子が入った袋。
ドーナツが入った袋に、
チョコレートが入った袋と
あっというまに手元がいっぱいなった。

「食べ過ぎて腹を壊したら
俺が公爵殿に叱られるんだぞ」

呆れた声で言われるが
俺はへっちゃらだ。

「大丈夫、隠れて
ちょっとづつ食べるから」

俺は本気で言ったのだが、
ヴィンセントは笑う。

「あの侍女……リタ、だったな。
彼女にはバレるんじゃないか?」

確かに!

リタは真面目で、
几帳面なところがある。

観察眼もするどくて
俺が寝不足だったり
微熱があった時も、
自覚症状がない俺の代わりに
気づいてしまうのだ。

そんなリタ相手では、
俺が隠し事なんかしても
あっという間にバレそうだ。

悩む俺の頭をヴィンセントは
ぐしゃぐしゃと撫でて
「俺が口添えしてやるよ」という。

「……優しい、好き」

って、何言ってんだよ、だから俺。

思わず焦るが、
ヴィンセントは俺の髪を
またぐしゃぐしゃして笑う。

「俺も、好きだよ」

って小さな声が聞こえた。

え?
って思ってヴィンセントの顔を見上げると
ヴィンセントの顔は真っ赤になってる。

「だ、だから。
俺はお前を守ってやるし、
世話だって俺がしてやる」

そ、そうか。
弟みたいって話だよな。

びっくりした。

兄も良くそんなことを
俺に言ってくるし、
それと同じか。

当たり前だろうと思う気持ちと
残念だと思う気持ちが
俺の中でせめぎ合う。

「だから、遠慮せずに頼れ」

と、顔を赤くしたまま
ぶっきらぼうに言われて。

俺は、幼いイクスの恋心だけでなく。
前世サラリーマンだった
俺さえも、胸を熱く鳴らしたことは
内緒だ。

……だって、俺が15歳の子どもに。
しかも、男に惚れるなんて、
ありえない、だろ?

そう、ありえない。

のに。

繋いだ指先が熱くて。
胸がバクバク鳴っていて。

荷物を持ってやると言われて、
じゃれたついでに肩を抱き寄せられて。

こんなの。
ドキドキしない方がオカシイに決まってる。

俺は絶対に、恋には落ちてない!
そう何度も心の中で宣言していたが。

そう何度も心で繰り返さなければ
ならないぐらい、
俺は何度もヴィンセントの
仕草や表情に心を惹かれていたのだ。




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