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子ども時代を愉しんで
17:神殿へ
しおりを挟む誕生日パーティーが終わり、
少し落ち着いた頃、
俺は父と一緒に神殿に
行くことになった。
兄もヴィンセントも
学校が始まっていたし、
神殿に行く日は平日だったので
俺はヴィンセントが神殿には
一緒に行くと言っていたことなど
すっかり忘れていた。
10歳になったら
神殿にはいつ行っても
良いようになっている。
神殿は王都にあるし、
行けば誰でもすぐに
魔力を鑑定してもらえるのだ。
ただし、貴族の子女は
学校に行くまでに
神殿に行くことが
義務付けられている。
学校で魔法の授業があるからだ。
だから俺も誕生日が過ぎて
すぐに神殿に行くことになった。
兄は一緒に行きたかったと
朝から俺の手を握ってから
学校に出かけて行く。
その後、兄を学校まで
送った馬車が戻ってきてすぐ
俺と父は出発することにしたのだが。
馬車が戻ってくるのを
待っている間に、
何故かヴィンセントが
侯爵家の馬車を準備してやってきた。
いや、学校はどうした?
さすがに父も驚いた様子だったが
「学校よりも大事なことなので」
というヴィンセントの言葉に
苦笑一つで終わらせてしまった。
いいのか?
俺と父はヴィンセントの
乗ってきた馬車を
使わせてもらうことにして
神殿に向かう。
俺もとうとう、
魔法が使えるようになるのか。
うう~。
武者震いをしてしまうぜ。
と思っていたら
隣に座っていたヴィンセントが
俺の手を握る。
「緊張してる?」
「う。うん、まぁ」
そういやどうして俺は
ヴィンセントの隣に
座ってるんだ?
こういう時は家族が隣同士になるので
父が隣の筈では?
父は俺とヴィンセントを見て
咳ばらいをする。
「我がパットレイ公爵家は
水魔法や風魔法を
得意とする者が多い。
イクスもおそらく
そのどちらかだろう」
父の声に俺は頷く。
父も兄も風魔法を使えるので
風魔法で声を遠くの人たちに
届けることができるのだとか。
母は水魔法が得意で
小さな傷であれば、
治すこともできる。
ちなみに、
ハーディマン侯爵家は
火魔法が得意なんだそう。
そうだよな。
どう見ても攻撃魔法が得意そうな家系だ。
魔法の属性は、
火、風、水、土魔法がポピュラーで
光魔法と闇魔法は稀有らしい。
そのあたりは前世で読んだ
小説や漫画と似たようなものなので
戸惑いはない。
ただ水魔法を持っていると
体内の水……つまり、
血液などを操作して
止血をしたり、
リンパ液を操作して
免疫力を高めたりできるらしい。
と言っても、
魔法で出来るのは
簡単な傷を治したり
熱を下げるぐらいで、
前世の漫画で見た
聖女クラスの魔法を使う者は
さすがにいないらしい。
俺もきっと風か水魔法なんだろうな。
戦うことはないだろうけど
傷を治せたりするのは
便利そうなので、
水魔法があったらいいな。
俺がそんなことを考えていたら
あっという間に神殿に着いた。
俺はヴィンセントに
エスコートしてもらって
馬車を下りる。
わざわざ手を差し出してくれなくても
一人で馬車ぐらい下りれるのに。
何が原因で、
ヴィンセントがこんなに
過保護になったのか、
理由が知りたい。
神殿に着くと、
父が神官に魔法の鑑定依頼をして
俺たちは裏口から神殿に入った。
一応、個人情報になるし
神官たちには守秘義務があるようだ。
俺たちを対応してくれたのは
年配の神官だった。
どうやら父とは馴染みの様子で
会うなり握手をして
話をする。
どう見ても父よりも年上で
白髪の神官なのだが、
どういう知り合いなのだろうか。
「イクス、ヴィンセント君、
この神殿の神官長殿だ」
え?
そんなに偉い人だったのか。
「は、初めまして。
イクス・バットレイです」
「付き添いの
ヴィンセント・ハーディマンです」
ヴィンセントも丁寧にお辞儀をする。
「良く来られた。
私はアリンガム。
世俗を捨てたので、名だけじゃ」
「神官長殿は、私の父、
イクスの祖父と同級生だったようで
良くしてもらっているのだ」
「おじい様と?」
それはすごい!
俺が目を見開いて驚くと
アリンガムさんは目を細めた。
「昔のことじゃよ。
それよりも、今日は鑑定じゃな」
「ええ、お願いできますか?」
父が言うと、アリンガムさんは
俺たちを別室に促した。
その部屋は小さくて、
目の前に水晶玉みたいな
透明の玉が一つだけ置いてあった。
水晶玉の大きさは、
思っていたよりも大きくて
サッカーボールぐらいはあった。
その水晶が、
彫刻で飾られた大きな
台座の上に置いてある。
子どもを鑑定することが
前提だからか、
台座は俺が手を伸ばせば
届くぐらいの高さだ。
俺は水晶玉の前に立ち、
父とヴィンセントは
ドアのそばに立つ。
アリンガムさんは俺の隣に立ち、
水晶に手を当てるように
俺に言う。
俺はドキドキしながら
水晶に手をかざした。
と、不意に水晶から
眩しいぐらいの光が放たれた。
俺は思わず目を閉じる。
光が収まってから
俺は水晶を見上げた。
アリンガムさんは水晶を
じっと見つめているが
何も言わない。
異変に気が付いたのか、
父もヴィンセントも
俺のそばにやって来た。
「神官長殿、いかがされた?」
父が俺の肩に手を置き、
アリンガムさんを見る。
だがその父の視線が
水晶に移動した途端、
父までもが動きを止めた。
なんだ?
何が起こってる?
俺も水晶を見せてくれ。
と思ったが、
背が低くて見えない。
「イクス」
ヴィンセントが俺の腰に
腕を回して抱き上げてくれた。
わぁい、力持ち。
俺はヴィンセントと一緒に
水晶を覗き込んだ。
水晶には少し変形した
文字が浮かんでいる。
凄いな。
ちゃんと文字で教えてくれるんだ。
なになに?
水と風、だな。
属性が2つあるのは
珍しい筈だ。
だが、まだ文字が見えるぞ。
えーっと。
文字が歪で読みにくいな。
光……と、樹?
なんだ、樹って。
そんな魔法の属性があるなんて、
本には書いてなかったぞ。
いや、光ってのも
なんだ、それ。
俺別にいらないんだけど。
というか4つも?
属性4つもあるのか?
普通は2つでも凄いことだって聞いてたぞ。
俺、大丈夫か?
ややこしいことにならないよな?
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