【完結】「誰よりも尊い」と拝まれたオレ、恋の奴隷になりました?

たたら

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子ども時代を愉しんで

12:幼い子どもと恋心【ヴィンセントside】

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 俺と出会ったことで
全てでは無いものの
イクスの記憶が戻ったことで
パットレイ公爵家の空気が変わった。

そして俺はそのまま
長期休暇をパットレイ公爵家で
過ごすことが決まってしまう。

俺は構わないのだが、
俺の両親があっけなく
公爵の要請に応じたのには
拍子抜けした。

なにせ俺は長期休暇が
始まった初日に
公爵家にやってきたのだ。

パットレイ公爵家の領地は
王都のすぐそばなので
レックスは公爵家の
タウンハウスを利用せずとも
学校に通えているが、
さすがに俺は無理だ。

学校に通う期間は
王都のタウンハウスで生活をしていて、
騎士団をまとめる父は
領地とタウンハウスを行き来している。

母は領地で領民を守っているので
俺が母と会うのは
長期休暇の時ぐらいだ。

つまり母とは今回、
文字通り、顔を合わせただけだ。

公爵家の要望に応えるにしろ、
一度は侯爵家に戻ってから、
と思ったのだが、

公爵があっという間に早馬で
俺の両親と手紙のやり取りをして
すぐに俺が公爵家に
滞在することが決まった。

まぁ、俺の両親は、
というか、俺の母は、
ガタイのデカイ俺よりも
イクスを可愛いと気に入っていたので
俺よりもイクスのことを考えて
了承したのかもしれないが。

イクスは10歳とはいえ、
かなり可愛い……というか、
美人だ。

さらさらの銀の髪は
心地よいし、
撫でてやると嬉しそうに
碧い瞳を細くして笑う顔も
ドキリとするほど
美しく見えるときがある。

幼い頃は良く一緒に遊んだが、
俺が学園に通うようになってからは
イクスは屋敷に閉じこもることが
多くなったらしく、
肌も日に焼けることなく
白い肌を保っている。

このまま成長すれば、
男女ともにイクスを望む者は
多くいるだろうことは
想像に難くない。

本来であれば、
今でも婚約を望む声が
挙がってもおかしくは無いが、
イクスはこの国の王子たちとも
仲良くしている。

俺はイクスと王子たちを
実際に見ているので
そこに色恋がないことは
理解しているが、
周囲はそうは思わない。

つまりイクスは王子妃候補として
周囲に認識をされているため、
誰もイクスに求婚できずにいるのだ。

ある意味、王家が
イクスを守っていることになる。

まぁ、本人は何も気が付いていないようだが。

それに、うぬぼれではなく
イクスは俺のことが好きだ。

それは断言できる。

もっともそれが、
恋なのか、憧れなのか、
年上の兄ができた感覚なのかは
さすがにわからないが、
イクスはわかりやすく
俺に好意をしめしてくる。

しかも無自覚のようで
それに気が付いたイクスの
慌てる様子に、
俺は笑いを堪えるのに必死だ。

イクスは大きな怪我を
したばかりなので
俺と一緒にリハビリをしているのだが、

俺が散歩に誘うと
あからさまに笑顔になる。

ついでに手を握ったり
抱きついたり、
かなりスキンシップが激しい。

もちろん嫌ではないが、
時折、俺が恥ずかしくなるぐらいだ。

レックスとの距離も
似たような感じなので
イクス自身の他人との距離感が
近いのかもしれないが、
それでもレックスが嫉妬するぐらい
イクスは俺との距離が近い。

この前は庭でお茶を飲んだのだが
何故か椅子に座った途端、
イクスは俺の手を握った。

イスに座る時に
身体が揺れていたので
まだ傷が痛むのだろうかと
エスコートのつもりでいたのだが、
イクスは目の前のケーキを
食べる時になっても
俺の手を離そうとはしない。

これまた無意識だったらしく、
「両手がふさがってては、
食べることができないぞ」
と揶揄うと、
イクスは顔を真っ赤にする。

俺は笑いを堪えて
イクスにフォークを渡して
大きめのケーキを切り分けてやる。

すると白い肌に映える赤い唇が
吐息のように
「好き」と言う。

これはきっと、
俺のことが好きだってことだよな?

そう思うが、
それを口にしたら
イクスが警戒してもう俺のことを
好きだと言ってくれない気がして
俺はわざと
「本当にイクスはイチゴが好きだな」と
ごまかしてやる。

するとイクスは、
ほっとしたような顔をして
目の前のケーキを口にした。

途端、とろけるような顔をした。

よほどケーキが美味しかったのだろう。

赤く熟れた小さな口に
白いクリームが入っていく様子は
なんとなく背徳感があり、
俺はそれをごまかすように
自分のイチゴをフォークに刺す。

「俺の分もいるか?」

とそれをイクスに差し出すと
イクスはなんのためらいもなく
ぱくり、と俺のフォークを口に入れる。

俺を好きだと言う割には
恋愛対象として意識されてない気もする。

そのままケーキを少しづつ
イクスに食べさせていたら
急に幼い顔が曇った。

どうやら俺のケーキが
無くなったことに
気が付いたらしい。

イクスが悲しそうな顔で
「食べる?」と
俺に自分のケーキを差し出してくるので
俺は笑ってしまった。

どんなに美人でも、
まだ10歳だからな。

色恋よりも、
ケーキの方が大事なのだろう。

まだイクスには恋愛は早い。

それは残念な気もするし、
どこか安心している俺もいる。

まだイクスは誰のものにも
ならないということだからだ。

だが、もしも。

イクスがこのまま成長したら。

このまま俺を慕ってくれているのなら
イクスを俺のものにしてもいいだろうか。

俺のこの感情が
恋愛感情なのか、
慕ってくれる弟ができて
嬉しいだけなのか。

俺はまだその答えを出せずにいる。

答えを出すのが怖いのだ。

だが、そんな状態であっても俺は
イクスを誰にも渡したくないと思う。

わがままだな、と自分でも思うが
レックスも俺と似たような様子で
俺とイクスを取り合うので、
俺は自分の感情と向き合うのはやめた。

まだイクスは10歳だ。

この感情に名を付けるには早すぎる。

ただ、イクスがバカな男に
捕まらないように
気を付けなければ。

俺はそんなことを考えながら
ケーキを食べるイクスの髪をゆっくりと撫でた。


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