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愛とエロはゆっくりはぐくみましょう
64:女神の祝福と呪い【バーナードSIDE】
しおりを挟む……やってしまった。
俺はぐったりと気を失った…
血の気が無く、真っ白い肌の
ユウを見て、我に返った。
手首にも、太ももにも、
俺が付けた指の跡がくっきりついている。
ユウを抱き上げ、
俺の膝上に座らせて、
俺はユウが逃げないように
腰を掴んで一気にユウを貫いた。
そして、夢中でユウの体を突き上げ、果てた。
ユウの中に精液を吐き出したのだ。
それでも、俺は満足できなかった。
一晩に…こんな何度も
精を出したことなど無い。
なのに、なぜか、何度ユウの中に
吐精しても、俺の欲は収まらなかった。
ユウはぐったりしていたが、
俺はまた、ユウをベットに戻し、
今度は後ろから繋がった。
最初はあったハズの
ユウへの気遣いなど拭き飛び、
ただ、ユウに欲棒を押し込み、
腰を振り、そこに射精する。
理性もなく…ただ、
ユウを犯すためだけに
存在しているような…錯覚に陥った。
すでにユウの意識が飛んでいることに
気が付いていたが、関係なかった。
深くつながりたい。
俺の欲を、注ぎ込みたい。
それしか、頭に無かったのだ。
……こんなに情欲に侵されたのは初めてだった。
何度出しても、また勃ってしまう。
ユウを求めてしまう。
これが…【愛】というのか?
俺が知っている【愛】は
優しく育む愛だった。
こんな…自分勝手に
欲を押し付け、
奪うものではなかったはずだ。
なのに、体は理性を無くし、
ひたすらユウを犯してしまう。
ユウの中に、腹に、胸に。
俺は何度も精を吐き出し、
塗りたくり、舐めた。
ヒクヒクとユウの体が震え、
喉が引きつり…
幾度目かの精を吐き出した時、
俺はようやく、動作が緩慢になった。
激しい、突き上げるような欲が
生りを潜め、周囲を見る余裕がでてきた。
そこでようやく、俺は…
ユウを見た。
俺が組み敷き、何度もつながり、
情欲を注いだのに。
俺は今、初めてユウを
見たような気がした。
頭がぼーっとして、
そして…ユウの悲惨な姿に息を飲む。
「これ…は、俺が、やったのか?」
そうだろう。
状況から言って、そうとしか思えない。
だが、俺が…俺が、
こんなことをするとは…
自分で自分が信じられない。
俺は震える手で、ユウに近づいた。
ユウの体の手当てと、清めを…
指を伸ばし、
その肌に触れようとした瞬間、
ユウの肌が輝いた。
浄化と回復魔法が発動されたかのように、
光がユウの肌を清め、
傷を癒していく。
俺が付けた指の跡も、
ユウの秘所から溢れた
俺とユウの愛液も。
すべてが無かったかのように。
光…が。
ユウを癒す。
光が収まったとき、
ユウの肌は、赤みが帯び、
呼吸も穏やかになっている。
この時俺は、
ユウが【女神の愛とし子】だということを
不意に思い出した。
傷を負っても、
こうやって【女神の力】で
自然に傷を治せるのかもしれない。
だからと言って、
俺がしてしまったことを
消すことなどできないが。
俺は…なんとか、
汗を流し、服を着た。
うなだれて椅子に座ってしまう。
これ以上は動けない。
気力が、ない。
ふと空気が動き、
ユウが俺を見ていることに気が付いた。
俺は…すまない、と呻く。
何を…言えばいいのか、わからない。
赦してもらえるとも思わない。
ところが、逆に。
ユウは…俺に謝罪の言葉を紡ぐ。
俺を抱きしめ、
俺は悪くないと、優しく言う。
そして…
驚くような話をした。
女神の話だ。
俺は女神を信仰しているが、
信心深いわけではない。
助けてくれるのならありがたいが、
俺は…女神に祈っても
何も救われないことを知っていた。
助けて欲しいと願い、
祈っても。
女神は救いの手を
自ら差し伸べることはない。
それがわかってからは、
俺は、女神を妄信するのをやめた。
俺の人生は俺が作る。
世界は女神が創ったのかもしれないが、
俺は女神の思い通りには、生きない。
そう決めて、俺は騎士になった。
女神が守れない者を守るためだ。
そして聖騎士になった。
聖騎士になっても、
俺の女神に対する評価は変わらない。
神殿とかかわりが深くなろうが、
俺の可愛いヒヨコが教皇の孫だろうが。
俺には全く関係ないことだった。
俺がそんな状態だったからだろう。
ユウが話す女神の姿は…
ある意味、俺の思っていた通りの姿だった。
人間の都合など関係なく、
世界の均衡を守り、破壊しないよう
采配をしている…女神。
人間のことなど、
女神にとっては小さな…些事なのだろう。
そうでなければ、
こんな小さな子が、ユウが。
他の世界から連れてこられ、
世界を救うために、犯され続けるなど、
普通では…いや、人間では、考えられない。
人間など、歯牙にもかけない存在の
神だからこそ、そんなことができるのだ。
目を合わせただけで、
あんな状態になるのだ。
あの甘い香りも…
体液がすべて媚薬になるということは
涙も、唾液も、汗も、すべてが媚薬だ。
ヴァレリアンやカーティス、
スタンリーの3人が、ユウの存在に
夢中になる意味がようやくわかった。
ただ、行為を持ったからと言って、
必ず恋愛感情になるとは限らないらしい。
おそらくあの3人は、ユウに惚れ、
そのうえで、ユウの媚薬にやられたのだろう。
あの屋敷で…この前泊まった宿で、
廊下まで充満していた匂いは、
ユウの体臭…媚薬だったのだ。
ユウはどう見ても幼い。
成人しているらしいが、体だけでなく
性の知識も、まったくないように思えた。
無防備で、無自覚に煽り、
甘えてくる。
女神の祝福が発動していなくても
そんな状態なのに、これで女神の
祝福が発動したらどうなるか…。
どれほど恐ろしいことになるかは、
俺が身をもって体験済みだ。
ユウは女神の祝福のことを
女神の呪い、と言っていたが
確かに【呪い】レベルだと思う。
それに、敬うべき女神を
女神<ちゃん>と呼ぶ。
女神の愛し子、と言うぐらいだから
女神の子どものような存在かと思ったが。
どちらかと言えば、
ユウと女神の関係は対等か…
ユウの方が上ではないかと思わせる発言だ。
とはいえ、ユウも女神の力には
逆らえないのだろう。
だからこその【呪い】だ。
ユウの意志は関係ない。
ユウはただ、男に愛され、
犯され、それを糧に世界を救う。
なんと…悲しく、辛い存在なんだと
理不尽さに怒りが沸き起こる。
確かに庶民の間では多夫多妻は
当たり前のように認知されているが、
貴族は、そうではない。
妻や夫が多いということは、
それだけ養う人数が増えるということだ。
また、子どもが多くなると、
財産分与や相続で揉めることにも繋がる。
もちろん、愛憎の種にもなるので、
揉める可能性があることを
わざわざする者はいない。
つまり、夫や妻を多く持つ者は、
それだけの財産や愛情を持っている者、
もしくは逆に、財産をもっていない者になる。
この国は、家族単位で税を納める。
つまり税を払うお金が無い者は
<別の家族>と婚姻を結び、
税を少なくすることができるのだ。
もっとも、養う人数が増えるので、
それが良いかどうかはわからない。
結局、税を払うのに困る庶民なら
多くの夫や多くの妻を得る者も多いが、
貴族は…少なくとも、高位貴族は
多夫多妻などはしない。
夫婦というのは対等であり、
財産などもすべて平等に分け与えなければならない。
つまり、関係を維持するのも、
万が一、清算するときも
面倒になりがちなのだ。
そう言った意味でも、
高位貴族になればなるほど、
妾や愛人どまりになるのが一般的だ。
恋人や妾などの間柄であれば、
同時に多くの者と関係することもあるが
結婚は別だ。
それが俺にとっての『あたり前』であり、
普通だと思っている。
ユウも、他の世界から来たとはいえ、
同じではないだろうか。
同時に多数の人間に愛されるのは
苦痛ではないのか。
しかも、その人間は。
ユウを求め、体を繋げようとする人間は、
ユウが本当に愛する者ではなく
ただ少し『好意』を持っただけの相手だ。
辛くないはずがない。
俺だったら…物凄く嫌だ。
愛が無い相手を抱くのは
身体的にはできるかもしれないが、
心が拒否してしまう。
俺は…
貴族とはいえ、もちろん、
多くの妻を養うほどの
資金などないし、
何より愛する人は、
生涯でただ一人だと思っている。
深く愛し、愛される相手と
身体を重ねられたら、それでいい。
本人たちが良いのであれば、
多くの夫、妻と愛し合ってもいい。
だが。
多少の好意を持った相手と、
目が合っただけで…
それだけで犯されるなど。
肌を重ねなければならないなど…
ユウは…俺に抱かれても、
傷ついていない、という。
金聖騎士団の皆も、
親切にしてくれたから、
何をされてもいい、みたいなことを言う。
けれども。
言葉が通じなくても優しくしてくれたとか、
あったかい風呂に入れてくれたとか。
そんなの、当たり前のことだ。
たったそんなことで、
感謝して、何をされてもいい、なんて
おかしいだろう?
ちょっと親切にされて、
優しいと、嬉しく思って。
少し好意を持っただけなのに、
いい人だと思った途端、
その相手に乱暴に…我を忘れたように
犯されるしかないのだ。
何度も…そう、俺もそうだ。
何度、吐精しても、終われなかった。
ユウに欲を注ぎ込むことしか、
考えられなくなった。
あんなことをされ、
傷付かないわけがない。
女神の加護だか祝福だか
知らないが、確かに行為の後、
ユウは自然に傷が癒え、
目が覚めた時には、
自分がどんな姿なのか知らずに済んでいる。
だから、傷の酷さも、
自覚していないのかもしれない。
けれども。
それと…何をされてもいい、は別だ。
「それで…いいのか?」
と俺は、聞いた。
大きなお世話かと思ったが、
望んでもないのにこの世界に連れてこられて、
対価も与えられず、ただ、この世界を
救うためだけに犯される。
気が狂うような…
辛いことではないのか。
だが、ユウは笑うのだ。
「いいの。
そのために…私はこの世界に来たんだから」
と。
俺は…必死で涙を堪えた。
そして言うのだ。
「私は傷つかないよ」と。
俺が何をしたとしても、
傷付かないから、
大丈夫だ、と。
俺のことがお兄ちゃんみたいで大好きだと。
泣きそうな顔で。
涙を堪えて、唇を噛んで。
俺に、触れたくない程、
嫌悪していないのなら、
頭を撫でて、大丈夫って、
笑って欲しい、と。
俺は…何も言えなくて。
ユウが傷付いていると感じて。
でも、傷ついてないと笑うユウを
否定することもできなくて。
たまらず、抱き寄せる。
頭を撫で、大丈夫、と言う。
俺が…守ってやる。
俺が…。
俺は王族でもないし、
貴族だけど、権力とは無縁だ。
王からも、神殿からも
ユウを守ることはできない。
だけど、
兄としてなら、ユウを守ってやれる。
ユウが望むのなら、
望む限り、俺はユウの兄になろう。
間違ったことをしたときは叱り、
甘えさせ、生きていくうえで
大切なことを教えよう。
俺が。
兄として、ユウを守るから。
だからーーー。
ユウは俺の腕の中で大粒の涙を落とす。
声を挙げ泣くユウを、
俺は抱きしめ、そして、涙が止まるまで
大丈夫、と頭を撫で続けた。
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