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愛とエロはゆっくりはぐくみましょう
63:女神の祝福と呪い<その2>
しおりを挟む私は、女神ちゃんの話をした。
もちろん、女神の資格試験とか、
そんな話はしていない。
そんなの知られたら、
この世界の人にしてみたら号泣ものだし。
だから、私は
この世界を救うため必要な条件。
つまり【私の器に愛を満たし、
その愛で世界を満たす】という話をした。
この【愛】というのが、
じつは…ものすごく不本意ではあるけれど
身体を重ねるという意味も含まれていること。
そして、そのために
女神が祝福をしてくれたこと。
祝福の主なものは、
①『私の倫理観、貞操感が緩まる祝福』
②『快感に弱く、流されやすくなる祝福』
③『どんなに激しい行為でも傷つかない体を得る祝福』
④『私が好意を持った相手と目が合うと
みだらな行為をしたくなる祝福』
⑤『私の体臭も体液も、近くにいる人間たちは
すべてが甘く感じ、媚薬へと変わる祝福』
あと一つ。
バーナードの命を救った祝福もあるけど
あれは割愛した。
本人の前では言えないし、
恥ずかしすぎる。
つまり、今回のことは、
女神の祝福のせいで、バーナードは
何も悪くはないと、私は言いたいのだ。
しかも、バーナードは
女神ちゃんの祝福に抗い、
私を抱くのを必死で抑えようとしてくれた。
驚くべき自制心だ。
バーナードは誇るべきであり、
決して傷つく必要などないのだ。
「悪いのは、女神ちゃんなんです。
だから…ごめんなさい!
あの時、私が酔ってバーナードに
キスしちゃったから…
呪いが、女神ちゃんの呪いが
発動してしまったの。
私、バーナードのこと
お兄ちゃんみたいで、頼りになって
大好きって思ってたから。
私が好きって思った相手は、
恋愛感情とか、信頼とか
【好意】の種類関係なく呪い…
じゃなくて、祝福が
発動してしまうんです」
バーナードは話の内容に
あまりついて来てない様子だった。
そりゃあ…そうだよね。
私だって、笑うしかないもん。
当事者だから、笑って済ませられないけど。
「でもね。
私と目が合うと、淫らな行為を
したくなるからと言って、
恋愛感情に発展するかは、別なの。
……たぶん。
女神ちゃんがそう言ってたし。
だから、バーナードは
婚約者さんを裏切ってないし、
私を恋愛として好きとか、そんなことを
思うようにはならないと思う。
だから、安心して!」
って力いっぱい言ったけど、
何を安心すればいいのか、
もちろん、私もわからない。
わからないけど、大丈夫、って
言ってたら大丈夫になる…気がする。
気がする…だけかも、だけど。
「えーっと…ユウは」
バーナードが絞り出すような声で
私を見た。
「それで…いいのか?」
ん?
何が?
「好きでもない相手…でもないか。
でも、恋愛感情が無い相手と
あんな風に…無理やり…されて。
あの時、俺は突然、
ユウを抱きたい、としか
考えられなくなった。
自分でも信じられないぐらい、
欲望に支配されていた。
あんな状態の男に…
ユウは…」
苦しそうな声に、
やっぱり、バーナードは
優しい人だと、思う。
だから、私のことで
こんなに傷ついてくれる。
「いいの。
そのために…私はこの世界に来たんだから」
最初は知らなかったんだけどね、と
私は笑って見せた。
でも、いいのだと。
「最初にね。
怖くて…何をしていいか
わからなくて。
言葉も通じないし、
私の行動一つでこの世界が
滅びてしまうと思って…
何もできずに泣いた私を
皆が助けてくれたの。
抱き上げてくれて、
あったかいお風呂に入れてくれて。
明らかに変だったと思うのに、
抱きしめてくれて、
一緒に眠ってくれた。
言葉なんて関係なくて、
頭を撫でてくれて、
お菓子を買ってきてくれた。
それが、嬉しくて。
私…そんなに大切に
してもらったことなかったから。
だからね。
この世界を救おうって思ったの。
頑張ろうって。
皆を守ろうって。
それに…皆のことは大好きだから
何されてもいいと思ってる。
絶対に…私は傷つかない。
バーナード、私は…
傷付かないよ?」
貴方に、何をされたとしても。
そう告げたら…
何故か、バーナードが
泣きそうな顔をした。
傷付いてないと、
そう言っているのに。
「バーナードは優しいから、
私にしたことを責めてるかもしれないけど
違うの。
悪いのは女神ちゃん。
そして…バーナードが大好きな私。
私は…今まで誰かに甘えたことが無くて、
甘やかされたことが無かったから…
皆と出会って甘やかされて
嬉しかったの。
でも、カーティスたちは
無限に私を甘やかすでしょ?
でも、バーナードは違う。
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ダメなことを教えてくれる。
お兄ちゃんみたいに、守ってくれる。
だからね…大好きになったの。
だから…だから」
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泣くことは、許されない。
唇を噛んで、うーっと唸る。
そしたら、バーナードが
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そして、私を引き寄せて。
頭を撫でて。
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私はそれだけで…もう、ダメで。
とうとう大声を挙げて泣いてしまった。
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