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愛とエロはゆっくりはぐくみましょう
46:嫉妬は恋のスパイス…?
しおりを挟む勇くんが帰った後、
神父さんに何がどうなっているのかと
詰め寄られた。
でも、どこまで話をしていいか、わからない。
とりあえず私は、
適当に事実を混ぜたウソをつくことにした。
ほんと、ごめん。
「つまり…あの花は、
妖精が【愛】を感じた時に咲く花だと……?」
神父さんは目元を真っ赤にして聞いてきた。
神父さんは感激で泣きすぎて、鼻も真っ赤だ。
こんなに女神ちゃんのことを崇拝しているなんて
なんだか、いたたまれない。
あの女神ちゃんの姿は、絶対に見せれない、うん。
「私は…その、いろいろあって、
あの妖精とは仲良しだったんです。
でも、最近は、この世界は嫌な気配がするって言って、
なかなか姿を見せてくれなくて。
さっき、ようやく会いに来てくれたんです。
この【聖樹】の花は、妖精の世界ともつながっていて、
妖精が楽しかったり、愛を感じたら花がさ咲くみたいです」
「……そうですか。
つまり、今世界は、妖精たちが愛を感じられない状態だと言うのですね」
あ、しまった。
それは言ってはダメなことだった!
「いえ、そういうわけでは…」
「大丈夫、わかっています。
最近、<闇の魔素>の気配を多く感じておりました。
世界に何かが起こっているのではないかと案じていたのです。
けれども、いたずらに騒ぎ立てても、人々の不安をあおるだけだと
私の胸の中に、その不安はとどめておりました」
な、なんか神父さん、常識人でいい人だー。
「この妖精の話も、
私の胸の中にとどめておきましょう。
私も……命は惜しいものですしな」
ん?
物騒なことを言う、と思ったら、
ヴァレリアンたちが剣の柄に手を掛けている。
「え? ちょっと、ちょっと、何?」
「何って、知られたら口封じは当然だろ?」
ってヴァレリアンが当然のように言う。
「ダメ、ダメダメ!何言ってんのー!」
私は慌てて神父さんの前に立った。
私が勝手に押しかけて、勇くんが勝手に出てきて、
勝手に私たちが話を進めただけだ。
神父さんはただ、巻き込まれただけ。
「大丈夫だ、神父がどう出るか、試しただけだ」
ヴァレリアンは私の頭をポンポンと叩いた。
良かった。
心臓に悪い。
「では、今日見たことは内密にお願いしますね」
カーティスが優しい口調で神父さんに言ってるが、目が怖い。
けれども神父さんは「わかっております」と微笑を浮かべて頷いた。
すごい、さすが年の功だ!
私だったらこの二人にすごまれたら、
猫に追い詰められたネズミのように縮こまるだろう。
「では、間もなく日も暮れますので、こちらへ。
狭い教会ですが、皆さんが休む場所ぐらいは確保できますよ」
そう神父さんが言ってくれて、私はうなずく…前に、
ヴァレリアンが首を振った。
「いや、ありがたい申し出だが、
ひとつ前の村に、荷物や馬車も置いてきている。
今から戻れば夜までには村に着くだろう。
すぐに出立することにしよう」
え?
そんな急に。
と思ったのは私だけだったみたいで、
ヴァレリアンの言葉に全員、支度を始める。
え??
ま、まあ、あの花を見るっていう目的は達成したけど
そんなんでいいの?
わたわたしている私をヴァレリアンは片手で抱き合げ、
神父さんへの挨拶もそこそこに、私はヴァレリアンと一緒に
馬に乗せられた。
いつも、カーティスかスタンリーの馬だったのに。
ヴァレリアンが私と二人で乗ると、もしもの時に
指揮が取りにくいから、とか言ってたのに。
ヴァレリアンは無言で馬を走らせ、
その後ろをついてくる皆も無言だった。
なんだ?この空気は。
なんでこんなに息が苦しいんだ?
「よし、この辺りで今日は野営をする」
村から随分走った後、ヴァレリアンはそう言って馬を止めた。
私はヴァレリアンに抱えられたまま、馬を下りる。
この場所は小高い丘になっていて、
そばには清水が湧いていた。
水もあるし、見晴らしもいい。
敵……がいたら怖いけど、敵が来てもすぐにわかるだろう。
遮るものが無いので、身を隠すことはできないが、
相手を早く見つけることができれば、
この皆なら大丈夫だろう。
しかし、野営?
村に戻るんじゃなかったの?
相変わらず、私はおろおろするばかり。
しかもヴァレリアンは、私を抱っこしたまま
おろしてくれない。
野営できるだけの最低限の荷物は持ってきていたらしく、
私たちは泉のそばで小さな焚火を作り、
そして、簡易の食事をした。
食事をしても…いや、している最中も、
私はヴァレリアンの膝の上だ。
何故だ。
まるで逃がさないように、
拘束されているみたいだ。
しかも、食事の時間でさえも皆はなんだか不機嫌で、
カーティスなんて、泣きそうな顔で私を見つめてくる。
参った。
理由がわからないので、うかつに謝罪もできない。
全員で焚火をぐるりと囲み、
日はすっかり暮れている。
それでも夜空の星や月が大地を照らし、
怖い、という感覚はない。
「ユウ、ここなら、俺たち以外誰もいない。
誰も俺たちの話を聞くこともできない。
話してほしい…お前のことを」
後ろからぎゅっと抱きしめられる。
まるで私をつなぎとめるかのように、
ヴァレリアンの力は、どんどん強くなる。
そっか。
みんな、私がいなくなるかも、って思ってくれたんだ。
不安になってくれるほど、私のことを大切に
思ってくれてるんだよね。
そう思うと、心の中があったかくなって。
私はヴァレリアンの手に自分の手を重ねた。
この人たちを信じるって決めたのだから。
話してみよう、私のこと、勇くんのこと。
「私は、みんなと会えて、仲間だって言ってくれて
嬉しかった。みんなとここで生きていきたいって思ってます」
最初に、それを伝える。
どこにも行かないし、行きたくない。
でも、それは私の気持ち。
皆がどう思うかはわからない。
でも秘密にしておくには、大きすぎることだから。
私は女神ちゃんのこと以外は、話をすることにした。
私が別の世界から来たこと。
勇くんと同じ施設で育ったこと。
私も勇くんも「いらない子」だったこと。
互いを必要とし、互いに生きるために必要な相手だったこと。
そして。
私と勇くんは、諸事情を省いたけれど、
中身(身体)と魂が入れ替わっており、今、私の身体の中には
勇くんの魂が入っていて、私の代わりに元の世界で生活をしていて、
そして今、私の魂は、勇くんの体の中の中にいて動いているってこと。
皆は呆然として、話を聞いていた。
信じられないとは思う。
ほんと、夢物語だ。
「勇くんは…さっきも言ってたけど、
私がそばにいなくなって、辛いことが重なって、
死を選んでしまったんです。
だから魂だけの存在になって、そこに女神ちゃ…様に
この世界を救うために働いてほしいって、女神さまにお願いされて」
「でも、あの妖精がそれを拒否して、ユウがここに来たってわけか?
あの妖精のかわりに?」
「まぁ、そうなる…かな?」
事実だけを聞くと、勇くんが物凄い悪者っぽい。
「で、でも無理やりとかじゃなくて、
私は勇くんは守らなくっちゃって思ってたし。
まさか、勇くんが私と会えない間に死んじゃってたなんて思わなくて、
焦ったというか、罪悪感みたいなのもあって」
あの時の私は『勇くんが自殺をした原因の1つである私』から
目をそらしたくて、罪悪感を消したくて、この世界に来ることを選んだ。
勇くんのためとか言って、全然違う。
「私は、自分が楽になりたかったから、
この世界に来て、この世界を救えたら、何かが変わるかもって
勝手に思って、期待して。
でも結局、私はこの世界に来たけど、何もできなくて、
皆の足手まといばかりで」
あの魔獣を思い出すと、泣けてくる。
「でも、怪我しても、みんなが守ってくれるから。
仲間だって言ってくれるから、嬉しくて。
私も、この世界で、みんなのそばで生きていきたいって思った。
私にはたいしたことはできないけど、
私は私なりにこの世界を…皆を守りたい…です。
だから、一緒に頑張ってください!」
勢いよく頭を下げる。
ぽん、とヴァレリアンが私の頭を叩いた。
「俺たちが、一緒に戦ってくださいってお願いする方なんだがな」
「ほんとに。でも、そんなところも可愛いよ」
カーティスが笑っていう。
「しかし…さすが女神だな。
他の世界から助っ人を連れてくるとは…」
スタンリーが難しい顔をする。
「それで、ユウは、あの妖精の体と魂が入れ替わってるんだろ?
副作用とか…問題はないのかい?」
安定のお兄ちゃんキャラで、バーナードが聞いてくれる。
「大丈夫です。
それに…もし世界を救えたら、ですけど」
私は勇くんに伝えたことを、もう一度皆に伝えた。
「私は、できたらこのまま皆と一緒に
この世界で生きていきたいって思ってます。
その…騎士にはなれないですけど、
何か仕事とか…探して。
勇くんも、私の身体を使って、ちゃんと生活してて、
好きな人ができたみたいだし。
私が帰る場所は、もう皆さんのところしかないかなって」
てへてへ、と笑ったら、エルヴィンが
立ち上がって私の手を掴んだ。
「じゃ、じゃあ、元の世界には戻らないってことか…?」
「え、う、うん。
女神…様が許可してくれたら、だけど」
良かったー、と、エルヴィンが脱力したようにしゃがみ込む。
「では、あの妖精と交代すると言ってたのは?」
ケインが、低い声で聞いてくる。
勇くんが最後に言ってた『元の世界に戻りたくなったら…』ってやつか。
「戻りたくならないから、交代なんかしないよ」
だって、帰る場所はもう、ここなんだもん。
そういうと、ケインの顔も嬉しそうになった。
「もう…俺たちに隠してること、無いか?」
ヴァレリアンが私の頭の上から聞いてくる。
「無い…ことはない、けど、まだ、言えない」
女神ちゃんのこととかね。
「そうか」
でもヴァレリアンは無理に聞こうとはしなかった。
「じゃあ、言えるようになったら、教えてくれ」
私は素直にうなずく。
女神ちゃんのあの性格は、知らない方が良いとは思うんだけどね。
こうして、私の暴露大会はヴァレリアンの腕の中で終わり、
私はそのまま、ヴァレリアンの腕の中で眠ってしまった。
そして私たちは、新しい<試練>に立ち向かうことになる。
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