【R18】完結・女なのにBL世界?!「いらない子」が溺愛に堕ちる!

たたら

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女ですけどBL世界に転生してもいいんですか?

14:女神ちゃん、そこに座れ!

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その日の夜、私はまた、あの白い場所に来ていた。


目の前で女神ちゃんが土下座をしている。


「えっと…?」


『放置してすみませんでしたー!』


何故急に、体育会系…??


『ん?
あの世界では、これでたいていのことは許してもらえるって
先輩が言ってたのに…違ったか?』


「……違わないけど、違います」


それを言わなかったら、違わなかったかも。
どうでもいいけど。


「とにかく、会えてよかったです」
私はその場を仕切りなおした。


「状況を説明してもらえます?
そのまえに、勇くんはどうしてますか?」


気になっていたことを先に聞いておこう。


『あの子は楽しそうにやっとるよ』


女神ちゃんは立ち上がると、
また空間から椅子を取り出して座った。


でも、一脚だけだ。


べつに私は座らなくてもいいけどね。


女神ちゃんは空間に大きな鏡のようなものを出す。

『ほれ』


と言われて鏡を見ると、私が…
いや、私の体の中にいる勇くんが楽しそうに
居酒屋でバイトをしていた。


店の片づけを手伝っているのだろう。
店長さんに賄い食の残りをもらって嬉しそうにお礼を言っている。


そうそう、店長さんっていい人なんだよね。


『そなたの体の記憶に魂が引きずられているのが良かったのじゃろう。
他人を怖がることもなく、今の状況を楽しんでおる』


そっか、良かった。


元の世界の私の生活が最善だったとは言わない。


別世界を知ってしまった今となっては、
もっと店長さんや、
工場のおばちゃんたちに
もっと心を開いておけばよかった、と思うこともある。


でも、ずっと他人の暴力に脅えていた勇くんには、
これぐらいの優しい距離感が心地よいのかもしれない。


「それで、私はあの世界で何をどうすればいいんですか?」


勇くんを映していた鏡が消え、私は女神を見た。


『じゃから、愛なんじゃよ』


女神ちゃんは、こめかみが痛いセリフをまた吐く。


「怒りますよ?」

そういうと、さすがに女神ちゃんは焦ったのだろう。
わかった、わかった、と一冊のDVD…いや、ゲームのソフトを取り出した。


『あの世界は、これを元に作ったんじゃ』


「は? 地球をパクったって言ってませんでした?」


『発展している世界をそのまま模倣したら、
先輩に怒られるじゃろう!

自分で考えて努力しなさい、と言われて
評価が下がるのが目に見えておるわ』


偉そうに言うけど、内容は全然、素晴らしくない。


『それでな。
そなたの世界で人気だったこの世界をマネして
世界を作ったのじゃ。

人間たちが喜んでた世界じゃから、
絶対にうまくいくと思ったのじゃが…』


そんなわけあるかー!


私は心の中で叫んだ。


というか、小説やゲームは、
自分と関係ない世界だから楽しいし、ハマるのだ。


誰が好き好んで
小説やゲームの世界の住人になって、
波乱万丈で困難な人生を歩みたいと思うのか。


しかもその世界に生きている人たちは
誰も自分たちが「作られた世界」に住んでいると思っていない。


どんなにハマる要素がその世界にあっても
どんなに魅力的な設定があったとしても、
そこに住む人たちには
関係ないことだ。


だって、彼らにとってはその世界こそが【現実】であり、
設定など知る由もないのだから。


「いたずらに、思い付きで世界を創られたら、
その世界に住む人にはいい迷惑です。

彼らはちゃんと生きてるんですよ?

女神ちゃんは失敗したら、
また作ればいいかもしれない。

でも、その世界に住む人たちは、
失敗したら終わり。

死んじゃうんです。

そういうの、わかってます?」

私は優しい騎士様たちのことを思い出した。
こんな行き当たりばったりの、猪突猛進女神に
世界を創られてしまったばかりに、
あの優しい人たちが苦しんでいる。


『そう…じゃな』


女神ちゃんは私の訴えに目を丸くして、
そして、言った。


『わしは、創った世界に生きるものたちのことを
あまり考えたことはなかったやもしれん』


なんてこった!


『だからこそ…悠子よ。
そなたの力を貸してほしい』


真剣な女神ちゃんの声に私はうなずいた。


もう見捨てる、なんて言えない。
なんとしても助けてあげたい。


それだけのことを、
私はあの世界の騎士様たちにもらっている。


『じゃあ、まず、これを読んでくれ』


渡されたのは、
先ほど見せてくれたソフトのファンブック。


ん?
ファンブック??


『良いじゃろ?
美形ばっかりじゃろ?

ハーレムでウハウハで、楽しいんじゃ。

なんたって、金髪があれで、銀髪があれで、それでな…』


……女神様?


なんか、ただのファンになってませんか?
しかも…その状態、もしかしてアレじゃないですか?


私のバイト先の居酒屋の常連さんで
かなり美人のOLさん。


本人曰く男が好きで美形が好きだけど
自分が男性と付き合うのは嫌だと
謎なことを言うあのOLさん。


彼女もたまに、
女神ちゃんのように明るく、はしゃいだ声で
金髪がどうとか、銀髪がどうとか、攻めがなんとかとか
一生懸命説明してくれていた。


しかもそのOLさんは、毎月1回、
居酒屋なら必ず暇になる日曜日の夜に
必ず友達とやってきては、
ものすごい金額を店に落としてくれていた。


一緒にやってくる女性たちは、
全員同じ趣味らしく、大声で話し、
がばがばとお酒を飲み、


そして顔を真っ赤にして
何やら話し込んでいたかと思うと、
追加のお酒を持って行った私を
捕まえては、萌えだの、
腐女子だのという話をしてくれたのだ。


しかも、とても口では言えないような…
なぜ、こんなにハイテンションで
こんなに恥ずかしい話ができるのかと
言うようなアダルトな単語とシチュエーションを語ってくれた。


正直、恥ずかしいし、
迷惑きわまりないようなお客様だったが、
そのOLさんは店長さんの学生時代の友達だったらしい。


本来、バイト先の居酒屋は
日曜の夜は閉めているのだが、
店長さんはこのOLさんが来る時だけは
貸し切りということでお店を開けていた。


友人というだけでなく、
大人数でやってきて、
かなりの金額を金を落としてくれるのだ。


店は貸し切りだったので、
他のお客さんもいないため、
OLさんたちの恥ずかしい会話も、
私たち以外に聞かれる心配もなかった。


しかもそのOLさんは、
毎月、いつこの飲み会をするのか
半年後ぐらいまでのスケジュールを決めていたようで
店長さんには「この日に来るからよろしくね」と
スケジュール表のようなものを渡していた。


店長さんが
「そんなんだから、いつまでたっても嫁にいけないんだよ」
と、からかうように言うと、

OLさんはいつも
「いいのよ、だって私にはこの金髪ちゃんがいるんだから」と
美形キャラクターが描いているアニメの絵を見せる。

それがいつものOLさんと店長のやりとりだった。



でも私は知っていた。
店長さんは、そのOLさんのことが好きだってことを。


私は女神ちゃんのはしゃぐ声を聞き
そんな店長さんやOLさんのことを思い出しながら
ファンブックに目を落とした。


「ん?」


美形キャラたちが表紙には勢ぞろいしている。
あのOLさんが嬉しそうに見せてくれたアニメキャラによく似ている。


そして
よく見ると。


ただのアニメ絵だと思っていたら、
なんとあの6人の騎士様たちが表紙に載っていた。

パクってないとか言ってたけど、
まるパクりじゃん!

と、ツッコんでしまった。


「んん?」


さらに私は表紙を見て…


「貴腐人たちのための激アツ!激甘!溺愛ルート満載!
イケメンたちの激愛バトル。
複数、総受けルートも解禁!
あたらなる激エロの金字塔を今、貴方に…」


……?


思わず、表紙に書いてあった煽り文句を読んでしまった。


まさか、と思って、中身を見る。


これ、これって…
成人向けの恋愛ゲーム……?

しかも、BLって、あのOLさんが熱く推していた
男性同士の恋愛の……


「め、女神ちゃん??」


『なんじゃ?』


必死で話している女神ちゃんに
私は手を振って意識をこちらにむけさせた。


「これ、男性同士の恋愛ゲームじゃない…?」


『それがどうしたんじゃ?』


女神ちゃんが不思議そうに言う。


「どうした、って。
男しかいない世界で、どうやって世界を発展させるのよ!
そもそも子供が生まれない時点でアウトじゃん。

まって!

そもそも、なんで勇くんが選ばれたのか…」


あの時、勇くんは言ってなかったか?


『愛されるのは嫌だ』とか。


それって愛情を受けるのが怖い、
という意味だと思ったが、


もしかして『(男に)愛されるのが怖い』という意味だったのでは…?



だって、愛情が怖いとか受け取るのが怖いとかだったら、
私の体で、店長さんと仲良くやっているハズがない。


お姉ちゃんごめんね。
と、ぽろぽろ泣いて、ひたすら謝ってくれていた
あの本当の理由は…


『まぁ、詳しくはそれを読めばわかる』


早く読め、と女神は鷹揚に言う。


『読んだらハマるぞ。
わしもな、そのゲームをやりだしたら
ついつい時間が経つのを忘れていつもやり込んでしまうのじゃ。


溺愛ルートを全員攻略したら、監禁ルートや
凌辱ルート、複数ルートにハーレムルートもできるようになってな。


もう、やればやるほど、いろんなルートができるようになって…』


ちょっと、ちょっと!
私を放置してたのって、
このゲームをしてたからとか言わないわよね?


しかも、かなり恥ずかしい、あやしい単語が出てますけど?
女神ちゃんは、神様じゃないの!?


非難の視線に気が付いたのか、
女神ちゃんは、こほん、と咳をして
とにかく、とファンブックを指さした。


『質問は読んでからじゃ』

こんなのが神様で……本当に良いのだろうか。
本当に…。


こめかみが痛くなってきた。




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