【R18】完結・女なのにBL世界?!「いらない子」が溺愛に堕ちる!

たたら

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女ですけどBL世界に転生してもいいんですか?

15:女神ちゃん、そこに座れ!【2】

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とりあえず私は、ファンブックを読んだ。

もともと、読むのは早い方だったし、
何より絵が多くて、しかも赤面物の絵や説明が多く、
気恥ずかしくてじっくりは読めなかった。



とりあえず理解できたのは、
あの世界は男性しか存在しないこと。


そして、子供を産むためには、
神殿にある【聖樹の実】を食べなければならないこと。


そして、各町にある【聖樹】は
王都にある総本山的な大神殿にある【大聖樹】から
接ぎ木されたものであり、聖樹は光の魔素で育つらしい。


だから、神殿には光魔法を使えるものが集められ、
光の魔素を集め、
聖樹に与えることが主な仕事の1つになっているようだ。


魔素、というのも不思議な観念だ。


魔法は、土、水、火、風、聖、闇 の属性があり、
それらすべての要素を含んだ魔素が大気中に散らばっているらしい。


人間は呼吸をするように、自然に体内にそれらの魔素を取り込み、
それを使って生活している。


魔素を大きく取り込むことができ、自分の力とすることができれば
それは魔術になり、日常生活で使う魔法以上のことができるようになる。


ただし、聖なる魔素を溜めることができ、聖魔法を使えるのは
あの世界の王族かその傍系だけ。


そして、闇の魔素は、人間たちの負の感情から生まれ、
闇の魔素が集まって魔物や魔獣が生まれるらしい。


また、火の魔法を極めて自分の中にある魔力と練り込むことで
炎の魔法が使えるようになったり、
水の魔法を発展させて氷の魔法を使えるようになったり。

魔法は人間の素質と魔力、
そして<魔素>の相性と努力しだいで、
たいていのことなら、でなんでもできるらしい。


素晴らしいシステムだ。


また驚いたのが、結婚という定義だ。
一夫多妻や一妻多夫どころではない。

夫が何人いても妻が何人いても、夫婦全員が納得していれば
夫も妻も、何人いてもいいらし。


…さすが激エロの金字塔。


一応、設定としては税が家族ごとに割り当てられるので、
2世帯より1世帯の方が税は安く済む。


そういったことから、地方や貧しい街では
2世帯であっても多くの夫や妻という形で
1世帯として届けるケースもあるのだとか。


まぁ、世間体を気にしなくて良いのなら、それもあり…か?


ちなみに聖獣は、聖なる魔素が集まって生まれる。
…となっていたが、それは人間たちが勝手にそう考えているだけで
本当は女神ちゃんが必要な時に、その都度、生み出しているらしい。


たとえば、大型魔獣が大量発生したとか、
人間たちだけでは、どうにもできない魔物が生まれたとか。


そんな時は、聖獣を作って、なんとかその場を乗り切っていたらしい。


…だから、無計画で、いきあたりばったりで
世界を創るのはやめようよ。


泣きたくなる。


「あれ? じゃあ、あのうさちゃんぬいぐるみの聖獣ちゃんは?」


ブラウンはどう見ても戦い向きではない。


『あれは、そなたの記憶を読んでいた時、
ぬいぐるみを欲しがっていたのを見たのでな。

与えたら喜ぶと思って創ったのじゃ!』


ほめてほしかったのだろうか。
胸を張って、偉そうに女神ちゃんは言う。


だから、行き当たりばったりはダメなんだって。



「女神ちゃん」


私は女神ちゃんを見据えた。


『女神…ちゃん?』

「ちゃん」付け?と小さくつぶやいたが
そんなことはどうでもいい。


「女神ちゃん、そこから降りて、
ここに座って!」


『え?
いや、しかし…』


「いいから、座る!」


私の怒りはに達していた。


今までこんなに怒りを感じたことは無い。
いや、自分の中で抑えきれないような感情が
生まれるなど、思ってもみたかった。


私は女神ちゃんを叱りつけた。


施設で行き過ぎた悪戯をしてしまった弟妹達を怒るように。


たとえば、昔に施設で
夏のビニールプールで水遊びをしていたとき、
楽しすぎて、小さな子どもが、
隣にいた子の頭を押さえて水に押し込んだことがある。


悪気があったわけではない。
わかっている。


だが、一歩間違えば、
水に押し込められた子どもは死んでいた。


その時の感覚がよみがえる。


軽い気持ちで、楽しい気分でやったとしても。
それがすべて許されるということではないのだ。


ましてや【命】が係わる問題だ。



【命】を女神ちゃんは
創り慣れてしまっているのかもしれない。


でも、私たち生み出された者にとっては
それでも一つしかない、大切な【命】だ。


そしてその【命】が無くなれば、
親しくしていた者の運命も変える。


勇くんのように、
自ら命を絶つようなこともあるかもしれない。


【命】は簡単に創るものではないし、
創るのであれば、きちんと準備をし、
計画を立てて定期的に手直しをして、
育てていかなければならないのだ。


創って終わり。
あとは放置して、勝手に繁栄しろ、なんて暴挙すぎる。


私が本気で怒っていることが理解できたのだろう。


女神ちゃんは、私の前で、すまなかった。と頭を下げた。



『わしの考えが足りんかった。
【命】というものを、あまり深く考えてはおらんかった。

そなたの言う通りじゃ』


女神ちゃんは、うなだれた。


「わかってもらえたら良いです」


私は呼吸を整える。
つい、熱血キャラになってしまった。


「では、これからは建設的に、
計画的に、世界を最短で救っていきましょう」


世界の破滅のタイムリミットがわからない限り、
できるだけ早くなんとかしたい。

私の心は、
あの騎士様たちを助けたい気持ちでいっぱいだ。


私は女神ちゃんの手を掴んだ。


「一緒に頑張りましょう」


力強く言うと、女神ちゃんは大きくうなずいた。


『そなたみたいな人間は初めてじゃ。

いつもわしは、先輩女神たちからは未熟だと蔑まれ
女神研修生の同期からは、脳筋だの、
考えなしだのと馬鹿にされ…』


あ、それ、わかるかもしれない。


『一緒に頑張ろう、などと言われたのは
初めてなんじゃ。こんなに嬉しいものだったんじゃな』


女神は感激したように声を震わせ、
私に抱きついてきた。


『これからそなたは、わたしの友じゃ!
一緒に女神資格の、はく奪を防ごうぞ!』


いや、それは私にとってはどうでもいい案件です。


と思ったが、口には出さないでおいた。
可愛そうだしね。















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