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72.精霊族のいる場所
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精霊族……?
「ひ、人じゃないなら……父さんは、生きてたりする?」
会ったこともない人の存在を確かめてどうするのだろう。そう思うのに、尋ねてみたかった。
「どうでしょうか? 彼らは生息域をあまり出ないので、マグノリア王国内にあるエルフの森の奥にいるかもしれません」
「マグノリア王国って、次の聖遺物のある所だよ。妖精の足飾りをエルフの森に探しに行くはず」
森のさらに奥……そんな時間なんてない。生きてるか、僕の存在を知っているのかも分からないのに。
レノアは、そのまま人型をとっている。魔族……って言った。 角は隠してるのかもしれない。ならクロもそうなんだと理解する。二人とも人外の美しさだから、分かっていても違って欲しかっただけ。
魔族と一緒に勇者の所にいる……。契約がなくなったのなら、お別れをするチャンスなのかも知れない。
それでも、この先クロを攻撃するなんて僕には出来ない。
『シェリル様? 』レノアに名前を呼ばれて、慌てて見つめ返した。
「精霊族の種族の外見的特長として琥珀色の瞳です。彼らは必要以上に人族と変わらないですね。交流する機会がない訳でもないのですが……それさえもエルフが仲介に入る。まぁ、人の世界で彼らに会ったとしても精霊族と思わないでしょう。瞳の色を隠しますから。人族も、万が一、琥珀色を見ても珍しいと思うだけでしょうね」
琥珀の瞳を隠していたのは、目立たないようにしてただけ……彼らは、人族に気づかれたくなくて隠している。
「テオ様は、僕を見て分かってたかも知れないですね」
テオ様はエルフだ。他人に興味がないから、僕に何も言わなかっただけ?
「もしかしたら、シェリル様の父親も人族と精霊族の混血かも知れませんね。混血は……種族に受け入れられ難い。人族の近くにいた可能性がありますが、生きているかどうかは分かりません」
そうか、精霊族に会っても……仕方ない事なんだ。探された事なんてないのだから。
突然、クロも人型に戻った。僕の後ろにきて、首筋あたりをクンッと匂い嗅ぐ。両手は抱きしめるように僕を包み込んだ。
「レノア……良い香りも、精霊族の特長なのか?」
「シェリル様は、ティマーですから……無意識で魅了してた可能性はありますね。ただクロフィス様が故意的な魅了に屈するとは思いません。それでもシェリル様から見て好意的な相手には……多分私よりクロフィス様は、強く香りを感じていると思いますよ」
「好意的な相手?」
クロは背中側にいるので、表情を確認出来ない。胸の中に収まっているのが恥ずかしくて少し俯く。
それに今の話から行くと……僕が、クロに好意を持っていて、香りでそれを伝えているってこと?
触れられるのは、嫌じゃないけど……僕の気持ちは?
「シェリル?」
「ひゃ……ひゃい」
声がうわずって、頬が熱い。
くるりと、向きを変えられた。
「熱でもあるのか?」
おでこを合わせられると、その距離に胸がバクバクとし始める。
「──な、熱は……ないです」
縦に抱きかかえられ、扉の方へ向かう。
「もう、クロフィス様……そういうのは、二人きりでやってください」
「煩い。人は体が弱いだろう? 休ませる」
レノアが、ため息を落とす。
「誰にも関心がなかったのに……甘々すぎてびっくりです。確認しても? 聖遺物探しをしていて良いのですか? 最後の一つをシェリル様に身に付けさせるのですか?」
魔族の王に会うために必要な力を得る為の聖遺物は必要不可欠なもの。討伐することになるのなら、尚更だ。
「──旅の目的だからな。シェリルの願いだ。契約は解消したが、願いは叶えて終わりたい」
契約解消。僕の願い……マグノリア王国で、終わる?胸が痛い。
そんなの───だ。
「ひ、人じゃないなら……父さんは、生きてたりする?」
会ったこともない人の存在を確かめてどうするのだろう。そう思うのに、尋ねてみたかった。
「どうでしょうか? 彼らは生息域をあまり出ないので、マグノリア王国内にあるエルフの森の奥にいるかもしれません」
「マグノリア王国って、次の聖遺物のある所だよ。妖精の足飾りをエルフの森に探しに行くはず」
森のさらに奥……そんな時間なんてない。生きてるか、僕の存在を知っているのかも分からないのに。
レノアは、そのまま人型をとっている。魔族……って言った。 角は隠してるのかもしれない。ならクロもそうなんだと理解する。二人とも人外の美しさだから、分かっていても違って欲しかっただけ。
魔族と一緒に勇者の所にいる……。契約がなくなったのなら、お別れをするチャンスなのかも知れない。
それでも、この先クロを攻撃するなんて僕には出来ない。
『シェリル様? 』レノアに名前を呼ばれて、慌てて見つめ返した。
「精霊族の種族の外見的特長として琥珀色の瞳です。彼らは必要以上に人族と変わらないですね。交流する機会がない訳でもないのですが……それさえもエルフが仲介に入る。まぁ、人の世界で彼らに会ったとしても精霊族と思わないでしょう。瞳の色を隠しますから。人族も、万が一、琥珀色を見ても珍しいと思うだけでしょうね」
琥珀の瞳を隠していたのは、目立たないようにしてただけ……彼らは、人族に気づかれたくなくて隠している。
「テオ様は、僕を見て分かってたかも知れないですね」
テオ様はエルフだ。他人に興味がないから、僕に何も言わなかっただけ?
「もしかしたら、シェリル様の父親も人族と精霊族の混血かも知れませんね。混血は……種族に受け入れられ難い。人族の近くにいた可能性がありますが、生きているかどうかは分かりません」
そうか、精霊族に会っても……仕方ない事なんだ。探された事なんてないのだから。
突然、クロも人型に戻った。僕の後ろにきて、首筋あたりをクンッと匂い嗅ぐ。両手は抱きしめるように僕を包み込んだ。
「レノア……良い香りも、精霊族の特長なのか?」
「シェリル様は、ティマーですから……無意識で魅了してた可能性はありますね。ただクロフィス様が故意的な魅了に屈するとは思いません。それでもシェリル様から見て好意的な相手には……多分私よりクロフィス様は、強く香りを感じていると思いますよ」
「好意的な相手?」
クロは背中側にいるので、表情を確認出来ない。胸の中に収まっているのが恥ずかしくて少し俯く。
それに今の話から行くと……僕が、クロに好意を持っていて、香りでそれを伝えているってこと?
触れられるのは、嫌じゃないけど……僕の気持ちは?
「シェリル?」
「ひゃ……ひゃい」
声がうわずって、頬が熱い。
くるりと、向きを変えられた。
「熱でもあるのか?」
おでこを合わせられると、その距離に胸がバクバクとし始める。
「──な、熱は……ないです」
縦に抱きかかえられ、扉の方へ向かう。
「もう、クロフィス様……そういうのは、二人きりでやってください」
「煩い。人は体が弱いだろう? 休ませる」
レノアが、ため息を落とす。
「誰にも関心がなかったのに……甘々すぎてびっくりです。確認しても? 聖遺物探しをしていて良いのですか? 最後の一つをシェリル様に身に付けさせるのですか?」
魔族の王に会うために必要な力を得る為の聖遺物は必要不可欠なもの。討伐することになるのなら、尚更だ。
「──旅の目的だからな。シェリルの願いだ。契約は解消したが、願いは叶えて終わりたい」
契約解消。僕の願い……マグノリア王国で、終わる?胸が痛い。
そんなの───だ。
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