【本編完結】 美形魔王の弱点は、僕。

Shizukuru

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73.報告会

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 無事に神殿から帰って来たカイル様達と合流した。キース様の耳には聖騎士の耳飾りイヤーカフが付けられていて、きちんと認められたみたいでほっとする。

「大変だった……」
 キース様が、ゲッソリとしてソファに沈みこんだ。
 お茶のカップをそれぞれの前に置くと、カイル様が直ぐにそれを手に取る。
「シェリルが用意してくれるお茶は、最高だ。本当に疲れが飛ぶ」
 そう言って、香りを堪能してから口にしてくれた。
「──ああ、うまい。シェリル無理言ってすまない。でも、シェリルのいれたお茶が一番好きなんだ」
 最近のカイル様は、表情が柔らかくなっているので、人気がすごいのだ。
 だから、本当に……なんで僕なんだろう? と思ってしまう。優しい眼差しに照れてしまって、少し視線を逸らした。

「カイルは、本当にシェリルの事……ま、いいか。私も頂こうっと」
 僕の名前が出たけど、特に何も言われなかった。そんなマリア様の膝には、レノアが蹲っている。
「レノアたん。こぼしたら大変だからそのまま、じっとしててね~揺らしちゃだめだぞぅ」
 ニコニコのマリア様とは、反対でレノアは木彫りの兎人形みたいに固まっていた。
    マリア様が帰って来た後、抱きしめられて匂いを嗅がれて……カチンコチンになったままだ。
 あの時クロはマリア様の腕を、げしげしと蹴った後に僕の背にしがみついた。
「本当に、黒兎は……シェリル一筋なんだから。可愛げがない。レノアたんは、可愛い~」
『──面倒だ』
「何か……言った? この子?」
なんて、やり取りをしてて益々レノアを気に入ってしまったみたい。

 カイル様が手招きをしている。
「シェリルも座って、明日にはマグノリア王国へ移動するから。その打ち合わせもしたい」
「は、はい」
 慌てて返事をすると、ポンポンとカイル様から場所を示されたので隣に腰掛ける。
「上手くいったみたいだね」
 テオ様が、珍しく笑った。
「俺には相応しくないって、散々だった。あ~くそ疲れた。マリアの援護射撃……助かったよ」

 カップを置いたマリア様が、レノアを抱きしめて頬ずりをする。
「──ん? あの人達、に弱くて。ふふ。それに聖女の髪飾りバレッタが、味方について輝いてくれたから。耳飾りだって、他の人に全く反応しないし凄い拒絶してたからね。痛そうだったわよ。納得しない騎士が、試しに付けたら、大の大人が床を転げてた」
 そんなに、拒絶したのかと想像してしまう。でもキース様の願いだったから、本当に良かった。

「じゃあ、後は……妖精の足飾りアンクレットだね」
 テオ様もお茶を口に含んだ。

「テオは、どうして賢者の指輪リング なの? エルフだから、妖精に選ばれ易いよね?絶対こっちだと思ってたのに」

 何の音も立てない、綺麗な仕草でカップをテーブルに戻したテオ様が、首を傾げる。

「妖精の足飾りアンクレットがエルフの森にあるって言われているけど……私はその存在を感じなかった。その時点で適性はないと思う」

 その言葉に皆、納得しかけた時カイル様が質問した。
「もしかして、エルフの森に聖遺物レリックがないとか言わないよな?」
一斉に、テオ様をみる。

「長老に聞いても、としか。皆、人族の面倒事に関わりたくないのかも知れません。それにもともと私は、知恵や知識が欲しいから賢者の指輪リング  が希望でしたので」
 和やかなムードは、一転して微妙な物に変わる。
 最後の一つの場所が、違うかも知れないからだ。

「妖精の足飾りアンクレットは、エルフの森の近くにあるとは思います。それにシェリルがいる。シェリルは……きっと呼ばれる」

 エルフの感覚なのかな?  僕にそんな力があるとは思えないから。なんて答えていいか分からなくて、オロオロしていたら、カイル様が僕の手を握り締めた。でもその手は、すぐに離される。
 クロが背中から移動して腕にしがみつき、足でげしげしとカイル様を蹴ったのだ。
 カイル様はムッとしてる。たぶん痛くはないと思うけど……可愛すぎて思わず笑ってしまう。緊張を解してくれる優しいクロを抱きしめた。


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