美形魔王の弱点は、僕。

Shizukuru

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22.クロ?

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 キース様に声をかけた後は、馬の世話をして話し合いが終わるのを待っていた。栗毛の子が何度もじゃれて来るので、少しだけササクレだった心が落ちついて行く。
 動物は、大好きだ。
「ありがとう。今日もついて来て」

 皆がギルドから、こちらへと移動して来た。
「ちゃんと、世話をしてたのかしら?」
「はい」

「シェリル、こっちに来い」
 慌ててカイル様の方へ行くと、さらにマリア様の機嫌が悪くなる。

「カイル……私」
「テオ、マリアを後ろに乗せてくれ」

「さっさと行こうぜ。ダンジョンでひと暴れしないと、体力が余って困るんだ」
 キース様が、豪快に剣を振り回して見せてから背中に剣を戻す。

「なぁカイル。馬にも乗れない雑用係って必要か? まさか、秘密の恋人とか言わないよな?」
 そう言って豪快に笑った。
 カイル様になんて失礼な事を言うのだろう。僕が指揮棒ワンドを握り締めたと同時に、カイル様が動いた。

 キース様に一瞬で詰め寄り、首の急所ギリギリに切っ先を向けて止めた。

「パーティの替えのメンバーを選ぶ権利も俺にある。次のダンジョンで入れ替えしてもいいが、どうする?」

「ジョークだよ」

「ちょっと、冗談でも止めて欲しいわ」

「ああ、マリアの事忘れてたよ。でも最近は、男同士でもって……嘘だって。旅は長いんだから、笑わかせようと思ったんだ。悪い」

 何かとギクシャクしていて、いたたまれない。ダンジョンで連携など出来れば、関係が良くなるかも知れない。その補助に入れるように、気を配らないとカイル様が疲れてしまう。

「早く行こう」

  カイル様のその一言で、出発する。
   ダンジョンの入口近くの店に馬を預けた。神殿の地下付近にある遺跡への道を探りつつ、地下へと階層を進めて行く。

 個人技が目立つのは、キース様だ。そのまま、前衛として進む。マリア様は気にせずカイル様の横についている。テオ様と僕が二人の後ろにいる形で進んで行く。
 時々、テオ様が弓を引く。絶妙なタイミングなので、キース様は意外にもテオ様を認めているみたいだ。

(余計な事をするなって言わない)

 進むのが早い。十階層付近で、何かが揺らいだ。
 皆、緊張したように見えた。あれは……幻影兎ラビィア

「臆病者の幻影兎ラビィア?  いや違う!その前に巨大蚯蚓ワームがいる!!」
    巨大蚯蚓ワームは赤黒の皮膚を伸縮しながら、体表から粘液を垂らしている。巨大ミミズの化け物だ。

 キース様が、大剣を構えた。マリア様も細長杖ロッドに魔力を込める。カイル様は双剣を両手に持ち、テオ様は弓を構える。

(まさかクロ?)
 僕はタガーナイフを持つ。このままだと、クロまで巻き添えになってしまう。

「そのまま、黒兎は囮になってろ」
 キース様の声をひろう。
(嫌だ)
 テオ様なら、僕の動きに合わせてくれるはずだ。カイル様もきっと巨大蚯蚓ワームを仕留める。

 テオ様をチラリと見た後に、氷牙を巨大蚯蚓ワームに向けて連続で飛ばす。テオ様が続いて弓を引く。壁面にも氷牙を飛ばして踏みつける様にジャンプしてクロの前に出る。

「何やってんだ、クソガキ!」
 クロが背中に飛び乗った。テオ様の弓が連投して巨大蚯蚓ワームに突き刺さっていく。カイル様の双剣が奴の胴体を切断した。

 核が見える。そこから再生が始まりそうになった。

『カイルのは、無視していい』
──アルト様。

 核を狙いタガーナイフを突き立てようとした時、カイル様が目の前に移動して来た。思わず後ろへ避ける。そして一気に双剣を突き立てた。

 巨大蚯蚓ワームが消え、魔石が転がった。
    テオ様はもちろん、カイル様も何も言わない。

 マリア様が、走ってきてカイル様に怪我が無いか確認している。

 キース様が近づいてきて、僕は殴られ壁にぶつかった。一瞬何が起きたか分からなかった。
「黒兎を助けたくて、俺たちの邪魔をしたのか?ここはダンジョンだ。魔物を助けて、俺たちに何かがあったらどうする!」

 カイル様が、キース様の腕を掴んだ。
「キース。彼はテイマーだ。ティムしていた兎をほっとけなかったんだ。今回は許してやってくれ」

「たかがテイマーだろ?  こんな役に立たない兎を守って、邪魔をするならお前を見捨てる」

「はい」
 連携どころでは、なくなってしまった。それでも、クロだけは死なせたくなかったんだ。
そして皆黙ったまま、先へ進み始めた。

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