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23.契約のキス
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クロが背中にしがみついたまま、僕は一番後ろを歩いていた。
ようやく、セーフティポイントに着いた。皆でしばらく休息をとる。
一人離れて、水のボトルを出して飲んだ。何かを四人だけで話しているのを、遠目に見ていた。
クロが膝の上に来たので、岩壁にもたれかかって殴られた頬に手を当てる。頬は腫れて熱を持っていた。でも、これをポーションで治すのは、許されないようなそんな気分でいっぱいになってしまった。
「──断われば良かったんだ」
役に立つ様にとか、思い違いをしたんだ。足でまといだった。
(本当に邪魔なだけだ)
涙が溢れて来た。泣き顔を見せるのは不味い。クロを抱いて、立ち上がる。岩陰の方へ向かい始めると、カイル様が追いかけてきた。
「シェリル。どこに行く。これ以上離れるな」
「用を済ませてきます。だからついて来ないで下さい」
「──分かった」
カイル様の顔を見る事も出来ない。他の人が来るべきだったのだ。そう思うと、もう駄目だった。足早に岩陰に行き防音の魔法をかけて、クロを抱いて泣いてしまう。
(何で生き残ったのだろう)
うああああああ───
「泣くな。俺に恩返しをさせてくれ」
突然声がした。
──恩返し?
「誰?」
目の前には、クロしかいない。
「助けて貰ったり、世話になったら、恩を返すのだとお前はいつも言っていた。なら、俺も返したい。シェリルにその気持ちを返したい」
「クロが? 僕に?」
「俺を信じてくれるか? 」
一人の不安と寂しさ。場違いな所についてきた後悔。アルト様達と残っていれば良かったのだ。それでもカイル様の盾になれたらと思ったんだ。でも勝手な行動を抑えきれなかった。
なんて、自分勝手なのだろう。
「僕は一人で……どうしたらいいのか、分からなくて」
クロの体温が温かくて、苦しかった気持ちに溶け込んでくる。クロの声も……心地良い。
「俺が、シェリルを一生守る。恩返しさせて、そばにいさせて欲しい」
こんな可愛い兎が、そばにずっと居てくれたら嬉しい。毎日癒されそうだ。
「うん」
思わず抱きしめた。短い手足のクロの手足の感触が変わる。
気が付けば、自分より大きな人に抱きしめられていた。
黒いつややかな髪の毛は、一括り結ばれて背中の中ほどまである。深紅の瞳は、クロの瞳の色と同じだった。
見惚れる程の、美形の人に抱きしめられている。
「クロ?」
「クロフィスだ。契約した方がいいか?シェリルの恋人になる。お前だけは俺が一生守る」
契約? 恋人? 幻影兎の見せる幻影?
「シェリルに誓いを立てるよ」
そう言って、顔が近付いて来た。唇が重なる。
胸に温かい何かが、入ってくる。シャツをめくられる。胸の上の所に何か印の文字が浮かび上がった。それを確認したクロは、嬉しそうに笑う。何て書かれたのか分からないまま一瞬で消えてしまったけど。
そして、もう一度唇が重なった。
殴られた頬を撫でられると痛みが消えていく。
「キースだったか、次にシェリルに手を上げたら生命は無い」
「え、あ……待って、殴られたのは、勝手に動いた僕が悪いだけだから。生命を消しそうな言い方は、良くないよ」
「あいつら、特に勇者は邪魔だな。ここで消してしまうか?」
幻影兎……の幻影って凄すぎない?でも、僕はそんな事を望んでいない。
「シェリル!! 体は大丈夫なのか? そっちに行ってもいいか?」
カイル様の声が聞こえ、今すぐにでもこちらに来そうだと思った。なんとなく、この美形を彼らに会わせてはいけないと焦ってしまう。
「兎に戻って、お願いクロ」
もう一度クロにキスされると、クロはちゃんと黒兎に戻ったのだ。
ようやく、セーフティポイントに着いた。皆でしばらく休息をとる。
一人離れて、水のボトルを出して飲んだ。何かを四人だけで話しているのを、遠目に見ていた。
クロが膝の上に来たので、岩壁にもたれかかって殴られた頬に手を当てる。頬は腫れて熱を持っていた。でも、これをポーションで治すのは、許されないようなそんな気分でいっぱいになってしまった。
「──断われば良かったんだ」
役に立つ様にとか、思い違いをしたんだ。足でまといだった。
(本当に邪魔なだけだ)
涙が溢れて来た。泣き顔を見せるのは不味い。クロを抱いて、立ち上がる。岩陰の方へ向かい始めると、カイル様が追いかけてきた。
「シェリル。どこに行く。これ以上離れるな」
「用を済ませてきます。だからついて来ないで下さい」
「──分かった」
カイル様の顔を見る事も出来ない。他の人が来るべきだったのだ。そう思うと、もう駄目だった。足早に岩陰に行き防音の魔法をかけて、クロを抱いて泣いてしまう。
(何で生き残ったのだろう)
うああああああ───
「泣くな。俺に恩返しをさせてくれ」
突然声がした。
──恩返し?
「誰?」
目の前には、クロしかいない。
「助けて貰ったり、世話になったら、恩を返すのだとお前はいつも言っていた。なら、俺も返したい。シェリルにその気持ちを返したい」
「クロが? 僕に?」
「俺を信じてくれるか? 」
一人の不安と寂しさ。場違いな所についてきた後悔。アルト様達と残っていれば良かったのだ。それでもカイル様の盾になれたらと思ったんだ。でも勝手な行動を抑えきれなかった。
なんて、自分勝手なのだろう。
「僕は一人で……どうしたらいいのか、分からなくて」
クロの体温が温かくて、苦しかった気持ちに溶け込んでくる。クロの声も……心地良い。
「俺が、シェリルを一生守る。恩返しさせて、そばにいさせて欲しい」
こんな可愛い兎が、そばにずっと居てくれたら嬉しい。毎日癒されそうだ。
「うん」
思わず抱きしめた。短い手足のクロの手足の感触が変わる。
気が付けば、自分より大きな人に抱きしめられていた。
黒いつややかな髪の毛は、一括り結ばれて背中の中ほどまである。深紅の瞳は、クロの瞳の色と同じだった。
見惚れる程の、美形の人に抱きしめられている。
「クロ?」
「クロフィスだ。契約した方がいいか?シェリルの恋人になる。お前だけは俺が一生守る」
契約? 恋人? 幻影兎の見せる幻影?
「シェリルに誓いを立てるよ」
そう言って、顔が近付いて来た。唇が重なる。
胸に温かい何かが、入ってくる。シャツをめくられる。胸の上の所に何か印の文字が浮かび上がった。それを確認したクロは、嬉しそうに笑う。何て書かれたのか分からないまま一瞬で消えてしまったけど。
そして、もう一度唇が重なった。
殴られた頬を撫でられると痛みが消えていく。
「キースだったか、次にシェリルに手を上げたら生命は無い」
「え、あ……待って、殴られたのは、勝手に動いた僕が悪いだけだから。生命を消しそうな言い方は、良くないよ」
「あいつら、特に勇者は邪魔だな。ここで消してしまうか?」
幻影兎……の幻影って凄すぎない?でも、僕はそんな事を望んでいない。
「シェリル!! 体は大丈夫なのか? そっちに行ってもいいか?」
カイル様の声が聞こえ、今すぐにでもこちらに来そうだと思った。なんとなく、この美形を彼らに会わせてはいけないと焦ってしまう。
「兎に戻って、お願いクロ」
もう一度クロにキスされると、クロはちゃんと黒兎に戻ったのだ。
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